2012,01,19, Thursday
4巻発売直後ですが3巻の感想です。
かなり前に読了していて、感想書こう書こうと思いつつ そのまま来てしまったので、4巻の感想の前に書くべきだろうという事で、 ぶっちゃけ慌てて書いてます。 本編以外の感想はがっちり書いてたのにね。 っていうか2巻の感想もまともなの書いてないしね! ……や、あれはあれで感情を素直に表現したものだと思ってますが。 ともあれ、3巻の話です。ネタバレゆえ隔離。 読んだ時期は発売から結構時間が経っていたので 評価が人によって分かれているというのは知っていたけれど、 それも理解できる内容ではあったかなあと思う。 「ケモノガリ」の魅力といえば、楼樹君の圧倒的な快進撃と 対峙する事になる敵、主に「娯楽提供者」のキャラの面白さ、 それに楼樹君の関わる人達の織り成す人間ドラマではないかと。 それがこの3巻は、楼樹君が守っていくキャラは全員モブも同然、 描写される比重が大きいのは敵方の事情。 楼樹君と戦うのは改造された動物、 娯楽提供者は自分から戦闘に出てくる性質ではなく、 唯一直接対決する人間の敵・アストライアとはひたすら互角な戦いで 最終的には決着もつかないという状態。 話の中心は城各所のパズル的謎解きとメッセージの送り主探しで、 戦闘よりも頭脳戦だった感じ。 ……うん、並べてみたら本当に2巻までとは全然ノリが違う。 私的にも、戦闘・人間ドラマ・構成他あらゆる部分で 2巻を最高傑作だと感じた事もあったので、 そういう意味では、やや肩透かしだったのも本音。 とはいえ、1巻と2巻でもかなり変えてきたと個人的には感じていたので、 3巻だけ大きく違うという感覚はなかったり。 東出さんは作品を出す度に、絶対に前作と同じ物を出してこないからね! あと、2巻までと大きく違ったのは、楼樹君の隣で共に戦う「仲間」の出現、 でしょうか。 シャーリーも共同戦線は張っているけれど、目的が掴めないので 「仲間」というのはちょっと違う気がする。 だから本質的には孤独だった楼樹君と同じ方向を向く仲間は 今回のイヌガミが初めて、という事になる訳で。 むしろその味方を得る為の話に1冊かけた、というのが正しいかも。 という訳で、私の総括的な感想としては、 「3巻は、次に跳躍するための踏み込みの段階。 1・2巻とはかなりノリが違うけど、これはこれでアリ」 に尽きます。 戦闘への燃えこそ局所的だったけど、RPGやミステリ好きでもあるので こういうパズルで頭を悩ませるのも楽しい訳ですよ。 戦闘が多い巻よりも読み進めるのに時間がかかった気もするけど。 でも正解に辿りつけなかったから力技で進んじゃえ! な辺りは、楼樹君らしい強引さで笑った。 成程、今回の快進撃の対象は、頭脳戦で苦しめようとする城そのものか! そう考えると、確かに今回も娯楽提供者との対決が中心だったのは これまでの巻と共通ですやね。 超長距離射程の布石型娯楽提供者、と。 城進行の為のパズルとヘルプメッセージの送り主の謎が 平行に出題されている構成だけど、 実際は城の仕掛けの謎解きは単なる下地で、 本当の謎解きはメッセージの送り主探しだろうな。 こういう階層構造を持った構成は好みです。 更にそれと平行して描かれる、何度も対峙し、死闘を重ねる一方で 密かに手助けするメッセージを送り続け、救いを求めるイヌガミの行動。 正体が分かっていた所為で、その相反する行動が交互に描写されるのが とても面白かった。 相反するといえば、「ケモノ」を狩る楼樹君の同志が 「四つ足のケモノ」という辺りも洒落が効いている。 でありながら、人間性を失う事を恐れる楼樹と同じ、イヌガミもまた 体に刻まれた動物としての本能に侵食されて 人間としての理性を削られていく事に抵抗している訳で。 そう考えていくと、イヌガミのキャラクターは、仲間として 相反する部分・共通する部分の設定が絶妙なんだなあと思ったり。 謎解きの比重が大きいし、敵方の中心となっているのも脳なので、 今回は「脳」というテーマで一貫してる、と言えば良いのか。 ……ああ、逆に「脳」がテーマだから頭脳戦メインだったのかも。 脳移植された後のゲルトに対する問い、 「脳を移植された人間の精神は、身体の側、脳の側、どちらのものか」や 幼いハインツの持った、年齢に見合わない人生観など、 何だか妙に深く考えさせられる部分が多かった巻でもあった。 しかしゲルトに関しては本当、予想の上の方行かれたよ! 読む前は残虐な性格なのだろうと思っていたら実は犠牲者、 かと思ったら内面はやっぱり残虐そのものと、 結局は1周周って事前のイメージ通りではあった訳だけど、 遠回りしたお陰で全然違う景色を見せられた感。 ハインツが必死に守ろうとしている姉の内面がこんななんて、 皮肉な話ではある。 が、性質がどうであれ、弟に見せる顔は優しい姉でしかないので、 必死に守ろうとしたのは変わらないのかもしれない。 イヌガミも、仲間になるのは事前に知ってはいたけれど、 頭いい犬だと思ってたら中身人間でびっくりだよ! っていうかよく考えなくとも怖いじゃないですか脳移植なんて……。 脳以外も、動物の体に武器を無茶苦茶に仕込みまくるとか、 東出さんの趣味の悪さが全開になった設定だなあ! (※褒め言葉にしておいてください) が、描写されてる行為の割に、不思議と気持ち悪さを感じなかったんよね。 人体改造ネタは子供の時からめっさ苦手なのに。 それも東出さんの文章の性質のお陰だろうか。 そんな訳で、今回は前巻までとまた違った方向に楽しんだけど、 あえて不満を挙げるとすれば、やっぱり楼樹君サイドのキャラ描写か。 イヌガミにまつわるドラマを中心にした所為もあるのだろうけど、 シャーリーが完全断絶していたのは残念。 何というか、スケジュールが合わなくて同じ場所にいるシーンが撮れず、 話に全く絡んでこないゲスト俳優みたいな? でもシャーリー個人の見せ場は楽しかったです。 まさにシャーリー無双。 ……あれ、そうすると今回無双してたのはシャーリー……。 まあシャーリーは東出作品に珍しい眼鏡お姉さんのメインキャラなので、 これからどんどん活躍して欲しいですよね! でも敵対するのは勘弁な! 最後に、3巻のネタバレ1行あらすじ。 「犬の手にキーボードは酷」
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