2013,05,30, Thursday
読了。
編集部ログでの担当さんの紹介記事で頭脳戦メインとは聞いてたけど 成程こういうタイプのシナリオ……。 超・大好物! です! 権威ある組織を相手取って悪に染まった組織のトップを狙うつくりは 2巻以来の方向性の面白さだった……! 派手にあちこち破壊しまくって展開も陰惨だった5巻に対し、 どんでん返しも鮮やかで爽快、ヒロイン担当キャラも明るい子、と まるっきり正反対の雰囲気に仕上がってますね。 読み合い駆使して駆け引きしまくって、一旦どん底まで落として 最後に全部派手にひっくり返す……た ま ら ん ね 。 まさに、試合に負けて勝負に勝つ。 影でやってた裏工作が一気に繋がる瞬間の爽快感ったら。 以下ネタバレしまくるので隔離。 眼鏡贔屓・才女贔屓としては、話の中核がシャーリーだった事には 特に盛大に喝采を叫びたいであります。 工作員としてのスキルをフルに発揮した一世一代の大勝負、 しかも“クラブ”の聖父相手に1対1の真っ向勝負なんて! シーンの端々で戦闘力があるのを見せてはくれていても、 今までは楼樹君のサポート役としての立ち回りが多かったから、 よもや楼樹君の闘いよりも前面に出てくるとは。 一応、楼樹君も“勤勉”担当の他2人を始末してるから 「楼樹君が聖父を倒した」という事実は外してないものの、 密度的にはシャーリーの退治した奴がメインですよね。 個人としての能力では超えられなかったという事だけども、 自分で作り上げた人脈を駆使して勝利を収めるのも 個人の技量の内ではないかと思う訳で、そういう意味でも 相手の裏を掻いたという意味でも、師匠を超えた事になると思うなり。 あの懇願から一転、登場した楼樹君と2人で長官を追い詰めた場面、 最高でした。 一方、シャテアを相手にした時に微妙にペース崩されてるのが 面白かったのも否定しません。 あれで食えない秘密工作員としての顔が崩れてたよね。 色んな意味で、今回のシャーリーは美味しかったです。はい。 CIA引退組の爺さん達もさりげに格好良かった。 誇りを理由にロートルが一致協力するって燃えないでか。 そんな訳で、今回の楼樹君は派手な戦闘は最後だけだったけれど。 作品自体がクライマックスに向かっていっている所為か、 娯楽提供者は見事に前菜的な扱いでしたなあ。 過去に登場した奴らの同タイプ劣化版しか出てこないし。 ぶっちゃけ、聖父が直に肉弾戦を挑んでくるのは意外でした。 アストライアと今回お目見えしたジャックが例外中の例外で、 基本は背後で暗躍だけする知略タイプなのだと。 しかも大企業のトップなんて、肉弾戦からは一番遠そうな立場。 肉体強化した相手というと、薫ルートの九鬼先生を思い出したけれど 今度は単純に力で凌駕してしまったですね。 どうでもいいけど、力を行使するのにカロリーが必要と言われると 瞬時に「村正」の劔冑を連想してしまった困った脳でございます。 などという話の重みが意味を持たなくなるレベルでの衝撃が、 やはりコレです。 まんま「限界進化<エヴォリミット>」って単語出ちゃったよ! 説明も描写もエヴォでのそれと変わらんですよ! 既読組の感想でエヴォエヴォ言われてた意味を理解しましたよ。 というか、ワードワーズ姓はファンサービス的お遊びだと思ってたのに、 もしかして本当にエヴォの世界と時系列的に地続きですか。 となると、あやかしからCBを経由してエヴォから「小夜音」まで、 何かしらのキーワードでリンクされている事になり、 東出作品はバベル除いて全作品が一繋がりの世界になるのでは、 と考えるとなんか楽しいなあ。 しかし、最初にAmazonであらすじとして見た長文、 まんま本編序文だったんですね。 6巻最後まで読んだら、指しているのは楼樹君だったとはっきり理解。 その変容を理由に、あやなと二度と会わないと断言されたのは ものすごく切ないです。 ただ、6巻では楼樹君の「進化」が悲観的に描かれているけれど、 エヴォのキャラ達をその進化の先の姿だと見てしまうと そこまで悲劇的でもないんでは……とも思ってしまったり。 あと、楼樹君の方は二度と会わないと宣言してしまってるのに あやなの方は逆に、そうなった時に傍にいたいって宣言してるのが 大きな希望。 というか、楼樹君から見てもグレタから見ても、 あやなが象徴しているのは「日常」だけれど、 楼樹君視点では「自分とは相容れないもの」なのに、 グレタ視点ではある種、楼樹君と同種のものとして見てる訳で。 アストライアもあやなにはグレタに近い印象を抱いてたようだし、 実は楼樹君とは、違う領域の存在のようでいて 一緒にいるのが必然の存在なのではないかとも考えたり。 自分がそう希望しているだけなのかもしれないけれども。 あやなの「楼樹に会いに行く」宣言が果たされない悲劇にならないよう 祈るばかり。 ……あやなに出会うのを匂わせるようなラストシーンも美しいかも。 楼樹君の進化やワードワーズ姓のシャーリーの楼樹君への態度で もしや楼樹君の遺伝子がワードワーズ家系に組み込まれるのでは、 なんて予想を見かけた事もあるけれど、 個人的には、やっぱり楼樹君とあやなでくっついて、 それを第三者として観察した結果がシャノンに繋がっていく展開を 希望します。 そんな人間を外れた道に踏み込みかけてる楼樹君の横で、 違う方向で人間から外れていっているイヌガミの方は、 楼樹君に対するあやなのような救いの要素がなく、 ただもう悲劇の展開しか残されていないのが辛い……。 でも、終盤、楼樹君と2人での語り合いで「友達」と言ってるのが とても嬉しかったのです。 ほんの数ページの短いシーンだけれど、 そんな友情がほんのりと温かく、しみじみと切ない情景でした。 しかもそんな短いシーンなのに、挿絵があるんですよ……! ここに挿絵を持ってくるのは間違いなく正解で、その選定が狡い。 編集部ログで江橋さんが語ってた「他と趣が違う挿絵」というのは ここのシーンのものではないかと推測。 “クラブ”攻略に重要な才能と説明されていただけで 公開されてる絵からはどんな力を持ってるのか不明だったシャテア、 まさかこの容貌でハッカーとは……南米貧困層恐るべし。 頭脳戦メインだから、ヒロイン担当キャラも頭脳労働担当なのね、 と納得したり。 しかしシャテアのキャラは強烈でした。 今までのヒロイン担当が割と控え目だったのに対して、この押せ押せ。 楼樹君との邂逅シーンは衝撃でした。 最 初 か ら 王 子 様 扱 い さ れ て る よ … …! シャーリーとの会話も楽しい。 私はこういう明るい積極的な子が大好きなので、 シャテアもめっちゃ気に入りました。 というか楼樹君、これまでのヒロイン達に対するよりも 女性的に意識してる描写が多くないですか。 今までずっと何されようがあやな一筋だと疑わなかったのに、 今回初めて「ヤバい」と思いましたよ。 もしやこういう積極的タイプが弱点なのか楼樹君。 衝撃といえば、懐かしのミスターの「再登場」もびっくりでした。 表紙絵については何度も何度も書いてますが、 カラー口絵も両面とも素晴らしかった……! 本編が頭脳戦だけに、カラー口絵も穏やか。 グレタとあやなのヒロイン揃い踏みは何だかほっとする絵。 あやなの笑顔はやっぱり安堵するし、グレタの美人度といったら。 逆側のシャーリーとカウフマンは、2人が天地反転してるので、 並んでるヒロイン2人の絵と構図的にも対をなしてて面白い。 そして! あのシャワーシーンは何ですかァァァ! 楼樹君のシャワーシーンの絵はあると聞いていたけれど、 まさか……まさかこんな普通のラブコメラノベみたいなシーンとは……! 楼樹君の傷だらけの上半身にもどきりとしたけれど、 この濡れ髪と表情は違う意味でドキドキでした。 その絵に限らず、シャテア絡みの挿絵は何だかとっても 普通のラノベっぽい。 というか女性陣が可愛い&格好良すぎですよ! ヤバい、ヤバいよ今回の挿絵……! あと、カウフマンの外見にデジャヴを覚えて気になってたんですが、 「マトリックス」のエージェント・スミスという指摘を見て合点が。 そういえばあれも同じ外見で何人もいた存在だったっけ。 映画好きな東出さんの事だから、 最初からそれをイメージしてデザインを決めたのかもなあ。 というか、正確に言うと設定的には逆だけど、 複数の人格で1人の人物を演じるという意味で 「PSYCHO-PASS」の公安局局長も何となく思い出したり。
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