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[将九]ペットバトン

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【君はペットバトン】
{将臣×九郎}
 ※飼い主が下なのはオヤクソク(?)ってゆーか別に逆でも良いですが(笑)
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[家に帰ってきたら玄関前に怪我をした「将臣」がいました。どうしますか?]

 ま‥‥将臣‥‥?
 あまりの状況に頭がついていかないが、名を呼んでも虚ろな返答のみ。さすがにそのまま置いてゆくわけにもいかず、こっそりと屋敷内に運び込んだ。

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[手当てをして食事を与えると眠ってしまいました。何処に寝かせる?]

「ほら、食べろ」
 と、目の前に皿を並べても反応が薄く、その乾いた唇から水分が不足していることが見て取れる。このままにしておけば死んでしまうかもしれない。
 ‥‥‥‥死ん、で‥。
 それは、困る。理由など定める必要はない。ただ、困る。‥‥そう思うのだから仕方がない。

 皿の上で食べやすく加工したものを口に運ぶと、のろのろと飲み込んだ。
「悪ぃ‥‥な‥」
「構わん。早く体力を戻せ」
 短い会話の後でクスッと薄く笑った顔が、これまでの緊張を忘れさせる。

 眠ってしまった将臣に、朱に染まった顔を見られずに済んだことを安堵しながら、静かに溜息を吐いた。

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[朝起きると「しばらくおいて」と言ってきました。どうしますか?]

 構わないが‥‥‥。
「何か、あったのか?」
 困ったような笑顔が、聞くなと言っている。
 ならば聞くまい。
 お前には幾つかの借りがある。
 ただそれを返すだけだ。

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[話し合いの結果ペットとして飼うことになりました。好きな名前をつけて良いとの事、なんてつけますか?そして、あなたをなんて呼ばせますか?]

「どこでもいいぜ。なんなら外の犬小屋でも」
「バカか」
 人間だと思わなくていいだなどと言い出す将臣に困惑しながら、少し考える。‥‥今の将臣は、何か変だ。
「俺の部屋でも平気か?」
「いいのか?」
「ああ」
 良いのかと問われれば、あまり良くはない。だがお前の不審な言動を見守るには最適の場所だろうと言わざるを得ない。
「‥‥‥ったく、俺を試してんのか」
 ん?
「何だ?」
「い〜や、何でもねーよ。‥‥迷惑かけたら、ゴメンな」
 それは構わないが。

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[お風呂に入る様に言いつけると「怪我をしているから頭洗って」と言ってきます。洗ってあげる?]

 うっ(////)
 風呂から呼ばれて何の用だと覗き込めば、慣れない片手で石鹸の泡を顔に飛ばした将臣が、困った顔で目を閉じている。
 当然だが、何も着けていない。
 目を閉じているせいで、自分がどんな格好をしているのかも解らないまま、大きく股を開いて、ふらつく身体を支えていた。
「悪ぃ!!湯釜の位置が解らなくなった」
 ‥‥‥‥‥‥油断、しすぎだぞ‥‥。
「そのまま大人しくしていろ。背中くらい流してやる」
「おっ、サンキュ♪ ついでにお前も入っちまえば?」
 たしかに、着物を着けたままでは不自然だが。
「‥‥‥‥‥困る」
「ん?」
「い、いや、用があるから後でゆっくり浸かるつもりだ。お前も湯冷めする前に上がれ」
 男というのは厄介な生き物だと自覚した。

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[「将臣」がお散歩(お出かけ)したいと言っています。何処に連れていき、何をしますか?]

 腕の傷はすっかり癒えたらしい。だが事情が判らない以上、外に出すわけにもいかん。だから庭で剣の稽古に付き合わせた。
 将臣の太刀筋は太く強い。小手先の技術では弾かれて簡単にねじ伏せられてしまいそうなほど、まっすぐに向かってくる。
 見惚れて、ほんの一瞬、対応が遅れた。
「九郎っ!!」
 支えられて気付くと、袖が僅かに赤く染まっていた。
「お前っ、バカッ!!」
 泣きそうな顔で怒りながら、袖を引き裂いて皮膚に下を這わせる将臣に、ますます身動きが取れなくなる。
 どうすれば、いい?
「傷はたいしたことねぇ。でも‥‥ゴメン、な」
「お前が謝ることではないだろう」
 将臣。
 胸が‥‥こんなに、苦しいのは。
「運ぶぞ」
 問答無用で抱き上げられた腕の中、やりきれぬ心を隠すように、胸の音を聞いていた。

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[「将臣」が寝たいそうです。何と言ってくるでしょうか?一緒に寝ますか?]

「昼間、何考えてたんだ?」
 優しい声色に、つい本音が零れそうになる。お前のことだなどと、云えるわけもないのに。
 ああ。
 気付いた時には、手遅れだった。
「九郎‥‥」
 寄せられた唇が教える。
 何も伝える気がないのならば、見つめるべきではなかったのだと。
 目は口ほどに物を言うのだ。
 たぶん、言葉で伝えられない想いほど、雄弁に。
「お前と、寝たい」
 ・・・・・・。
 なんと応えるべきなのか、その言葉は持たないが。

 ほどけた帯の間から、そっと抜け出して。
 お前を引き寄せた。

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□他にペットとどんな事をしたいですか?
□バトンを回す人「」を指定して6人に回して下さい。

以下、自主規制(笑)

[分岐ネタ]景時ルート

[分岐ネタ]譲くん、究極の選択!
から続いています。こちらは景時ルート。
元ネタを読んでいない人は、上のタイトルから入ってください。



 その優しい引力にフラフラと吸い寄せられた俺を、強い腕が引き寄せる。
「‥‥‥行くな、譲」
 絞り出すような気弱な声に、胸の奥が締め付けられる。

 俺の迷いを悟った人が、何かを手放すような空虚な風を纏った。
「嫌だ。‥‥離さないでください。そんな簡単に、捨てたりしないで‥‥っ」
 狡いかもしれない。
 即決できなかったのは、俺なのに。
 名前のない情という情に雁字搦めにされて、身動きすら取れなかった自分が恥ずかしい。景時さんは‥‥その存在の全部で、俺を守っていてくれたのに。
「景時さんが、好きなんです‥‥っ」
 失うことを悟った途端、俺の全てが凍りそうな心地になった。
 身も心も、過去も‥‥未来も。

 貴方が居ない未来なんて、考えられない。

「あんまり甘やかすと調子に乗っちゃうよ?」
 頬に上がった朱色の血を、こそばゆそうに撫でる指に‥‥触れたい、なんて。
 どうかしてる、かな。
 素直に伸びた手を不思議に思いながら、その指に絡みつける。
「譲くん‥‥」
 強く絡んだ指先から、僅かな気恥ずかしさと、大きな安心感が流れてきた。
 貴方にならワガママを言いたい。
 俺が俺に戻れる場所があるとするなら、それはこの人の腕の中。
 今は本気で、そう信じられる。
「返事を聞かせてください。俺は貴方が好きです。貴方と生きたい」
 顔が熱い。
 こんなことを口走るなんて、どうしたんだろ、俺。
 もしも景時さんが否定したら。
 そう考えれば、言葉はとても怖ろしい意味を持つのに。
 不思議、ですね。
 貴方に言葉を投げるのは、ちっとも怖ろしいコトじゃない。
「譲くんっ」
 答えの代わりとばかりに俺を抱きしめる腕の強さは、その確信をまた強固なものにする。
 貴方は、俺の帰る場所。
 可笑しいですよね。出逢うはずのなかった存在なのに‥‥貴方の引力は、俺にだけ、強烈な意味を持つ。

「ホントに、いいのか?」
 苦笑いする兄さんが、俺を現実に引き戻した。
 だけど‥‥この腕から逃れる気分にはなれなくて。少し弛んだ腕を、引き戻すように抱きしめる。
「ゴメン。俺は、この人の傍にいたいんだ」
「‥‥そっか。ま、いんじゃねーの?お前が本気で選ぶものに、口は出さねぇよ」
 遠ざかる後ろ姿を見送りながら、ホントにいいの?なんて、苦しそうに呟く景時さんは、たぶん俺を信じていないワケじゃない。
 それを素直に信じられるほど、幸の多い生き方をしてこなかった。
 そういうこと、ですよね。
 確認するまでもない。だけど‥‥だからこそ、いつか。
「行きましょう?」
 貴方が心から笑ってくれるように。

 そのために俺は生まれてきたんだと、信じてもいいですか?
 いつかきっと、貴方が無条件に信じられる『幸せの形』になりますから。ね、景時さん‥‥。

[分岐ネタ]譲くん、究極の選択!

SNSのキリリクネタです。

>【将臣→譲←景時】
> 譲がどっちに転ぶかはお任せします!

‥‥と言われてました。
で。
書きました!!

決まりません!!(イイ笑顔)

究極の選択一歩手前。
さて皆様、今の気分は、どっち!?



 全てが終わって、元の時空に戻れる日がやってきた。
「譲くんは、どうするの?」
 景時さんが静かに問う。
 そんな瞳で見つめないでください‥‥わかっている癖に。
 俺は、貴方の傍を離れる気は。

「聞くまでもねぇだろ。ほら、帰るぞ、譲」

 一瞬、思考が停止した。
 先輩から何かを言われることは予想してたけど、まさか兄さんが‥‥?
 アリエナイ。
 俺のことを『世界一』気にかけていない存在。
 なんで、今ごろ。
 なんで、今さら。
 一瞬で干からびて俺の言葉を奪った喉が、不条理な現実を叩きつけてくる。

 本当ハ、止メテホシカッタ。
 アナタニ、止メテホシカッタ。

 これが望み通りの展開だなんて、死んでも認めたくないけど。
 俺を止めるのは兄さんじゃなきゃダメだって、心の何処かで決めていた。
 先輩に引き止められたら、また大人びた顔をして嘘を付かなきゃならない。俺自身の望みじゃなくて、なにか別のイイワケを探して‥‥大切な人を傷つけなきゃならない。
「俺は俺の都合で、ここに残ると決めたから」
 はっきりと言葉を落とす。
 兄さん相手なら、本音が言えるって‥‥これは、信頼なんだろうか。
 違う。違う。傷つけるのが怖くない相手だからだっ。そんな特別な情なんか抱いてたまるか、ふざけんな。
 苦しい。
 苦しい。
 まだ音に乗せることもない本音に、身を裂かれるような幻覚を見る。
「そんじゃ質問を替えるぜ。‥‥お前、どっちを取るんだ?」
 どっちを?
「そうだね、その方が判りやすいよ。このさい時空なんか関係ない。君が帰りたいなら、俺が着いていくしね?‥‥君が俺を望んでくれるなら」
 なんだか変な雲行きになってきた。
「そうだな。俺もどっちでもいいぜ?‥‥京が気に入ったなら、無理して戻ることもねぇ。ま、あっちに戻ると色々と面倒だしな。お前と居るには」
 いつの間にか追い詰められて、言い訳の一つも許されない展開になる。
「なんで‥‥‥そんな‥‥」
 二人が自分の世界を捨てるなんて、おかしすぎる。
 俺の為に?
 どうして。俺は何も持ってないのに。
「聞くな、バカ。‥‥言わせたいのか?」
「ちょっとちょっと〜、それはないんじゃない? 元はと言えば、信じられないような薄情なオニイチャンを続けてきた君の責任なんだから」
 景時さん‥‥。
「お前に何か判るのか?」
「ワカンナイよ〜。だけどね、俺の大事な人をバカ呼ばわりするなんて、ちょっと許せないかな。‥‥‥おいで、譲くん」
 差し伸べられた腕は、俺を甘やかすことにばかり達者だ。
 いつだって、苦しい時は‥‥俺自身さえ気付かないような心まで、大切に拾い上げて撫でてくれる。

 怖いよね。それが正常なんだよ。
 麻痺してない。それが譲くんの強さだから、そのままでいい。‥‥そのままでいて?

 悪夢に魘されて飛び起きた夜も、子守歌のような低い囁きが眠りを運んでくれた。生まれて初めて、誰かに守られてる気がした。
 今思えば、俺の寝返りで起きてしまうほど、景時さんの眠りは浅かったんだって‥‥それほど追い詰められて生きていたんだって、解るのに。
 だから。今度こそ。
 俺が貴方を守りたいのに。

 その優しい引力にフラフラと吸い寄せられた俺を、強い腕が引き寄せる。
「‥‥‥行くな、譲」
 絞り出すような気弱な声に、胸の奥が締め付けられる。


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さて、譲はどちらに傾くでしょうか。


→景時ルート
→将臣ルート

[景譲]現代◇DIY編

いきなり、黒神子ウォッチング!!
物陰からこっそり様子を伺いつつ、解説致しますよ!!(私の脳内ですが)今回は小説じゃなくて、こんな形にしてみます。スミマセン(なぜ謝る)

現代で過ごすことになった景時さんが、こっちの世界の寝具「ベッド」に憧れて家具屋を捜索中。
だけど背が高いから、ちょっと頭がキツイのね。
輸入家具のお店にでも行けばいいんだけど、譲くんは景時さんの隣で歩くのに「浮・か・れ・気・味」で(←ポイント)頭が回ってません。そんなバカップルだと楽しい(馬鹿なのは私の頭の中)


「ん〜、なかなか俺のサイズのベッドって売ってないねぇ」
「そうですね。‥‥だけど景時さんなら、このくらい作れそうな気もしますけど」
「あ、そっか!!作っちゃえばいいんだっ。それじゃ譲くん、木材のコーナーに行こうよっ」
「そうしましょうか、お手伝いしますよ」

大型ホームセンターに移動して、木材とか金具とか工具とかワクワクしながら見てる二人。男の子ですからっ!!!

「うわーっ、電動の工具って面白いねーっ!!」
「ふふ。景時さん、今『その工具を作りたい』なんて思ってませんでした?」
「ええっ、なんでバレちゃうかなぁ。‥‥全部お見通し?」
「すみません、でも解りますよ。だって俺、貴方のことばかり見てますから」
「‥‥‥そんな、期待させるようなこと言っちゃダメだよ‥」
「景時、さん‥‥‥?」

ああ、もう、見てらんない!!恥ずかしいっ(自分の頭が!)
そして当然この後は『愛の共同作業』ですよっ(ヤケクソか、自分)

「譲くん、そっち持ってくれる?」
「はい。‥‥‥あれ、でもコレって縦の木材じゃないんですか?」
「ううん、これは横」
「ずいぶん長いんですね‥‥」
「もちろんだよ、せっかく作るからね。君が落ちないように計算して作らないと♪」
「か、景時さんっっ」
「あははー、冗談だよ、冗談♪」
「冗談、ですか‥‥‥ですよ、ね」
「‥‥‥譲くん?」


さて、この後はいつものコースで!!(黙れ変態)
組み立て中のベッドに盗聴器が付けたい@木ノ葉でしたー!!

[景譲]8ヶ月

「だ‥‥ダメですよ。こんなの、バレたら‥‥ここに住めなくなりますから」
 楽しそうに洗濯籠を持つ景時さんを振り返る。
「バレないように、黙っててね?」
 悪びれる様子もなくニッコリと返されて、泣きたい気分になる。
 風に煽られて捲り上がったエプロンに落とされる視線。
「見‥‥ないで、ください」
「可愛い。もしかして、俺を煽ってるのかな」
 そうなのかもしれない。
 無駄な懇願と知りながら「ダメ」だとか「やめて」だとか‥‥それは、景時さんを煽る結果にしかならないと、俺は知っているのだから。

 二人で暮らしはじめて、8ヶ月が過ぎた。
 俺に付き合ってこっちの世界に来てくれた景時さんは、今じゃちょっと名の知れた手品師で、舞台やTVに引っ張りだこ。それでも休日は洗濯物と格闘したいらしく、ベランダに洗濯板なんか出して鼻歌を歌ってる。
 いつの間にか東京の高層マンションの一室を買って、高校を卒業した俺を攫うように連れ込んだ‥‥というのが、先輩達の評価だけど。
「うん? 俺の顔に何かついてる?」
「いえ‥‥まだなんか、夢みたいで‥」
 誰にも言えない秘密がある。

『譲くんと、一生を添い遂げたい‥‥なんて言ったら、笑う?』

 卒業間近の春の日。まだ桜には早い季節。
 突然『花見に行こう』なんて誘われて驚いた俺に、『俺達の世界では、花見と言えば梅を愛でることだったんだよ。‥‥‥ね、お願い。せめて好きな香りに包まれて落ち着かないと、自分の言葉に負けそうなんだ』内容より軽い声の上で、驚くほど真剣な瞳が揺れていた。

 あれは‥‥プロポーズっていうんだよな?
 今の状況を忘れてボンヤリと考え込んだ俺を笑うように、指が滑りこむ。
「ァアッ」
「手袋越しなのは勘弁してね。ほら、洗濯物は汚せないしね?」
 それなら干し終わってから室内でゆっくりすればいいことなのにっ。
「でもこの手袋、気持ちいいでしょ」
 ゾリ、ゾリ、といつもと違う感覚が急所を煽る。
 上は半袖のTシャツのまま、そこに飾り気のないエプロンをして‥‥下は、何も履いていない。ズボンどころか下着すら着けることを許されずに、ベランダへと連れ出されたのは‥‥‥‥クダラナイ賭けに負けた、罰ゲームだ。
 確かにこのベランダは、周囲から見える構造じゃない。
 柵に縋ったまま身を落とせば、道行く人には俺の姿すら見えない‥‥けど。
「ア、ア‥‥ア‥ッッ」
「ほら、そんな声出すと、ここの住人に気付かれちゃうよ。ちょうど今は洗濯物を出すのに良い時間なんだから♪」
 そうなんだ。
 道からは見えないけど。
「隣からヒョイッと覗かれたら、恥ずかしいんじゃないかな〜」
 っっっっ。
「おね、がい‥‥‥もう、許して‥っ、くだ、さ‥‥んああっ」
「ダメだよ。洗濯物を干し終わるまでってルールだったでしょ?」
「ちっとも干してないじゃないですか!!」
「ふふ‥‥じゃ、すぐ終わらせちゃうから、協力してもらえるかな」
 手を休める気配もなく俺を攻め続けていた指が、不意に止まる。
「どうすれば‥‥?」
 のろのろと振り向こうとした俺の視界で、いきり立った熱源が揺れた。
「君が、入れて?」
 洗濯竿を拭きながらにこやかに‥‥物凄く、卑猥なことを要求された気がする。気のせいじゃなかったら、どうしよう。
「両手を空けて仕事に専念するからさ?」
 ニコニコニコ。
 悪びれる様子もない笑顔に、抵抗を諦めた。
 どうやら今の景時さんは『変なスイッチ』が入ってしまっているようだ。断れば更に酷い要求をされる可能性もある。
 ‥‥‥‥それを僅かに期待してる自分も、いるんだけど。

 嫌々という風情を臭わせながら、腰を突き出して誘い込む。柵に両手を固定して固く地盤を作れば、景時さんの質量が俺の中へと入り込んだ。
「‥‥‥‥ンッ、‥‥クゥ‥ッ」
 ここに出てくる前に、中を潤すゼリーを仕込まれたり。
 卑猥な言葉で嬲られたり。
 なんだか‥‥俺、後戻りできない場所に追い込まれてる気がするんですけど‥‥。
 景時さんの言動に困っているワケじゃない。
 何をされても嬉しいなんて、馬鹿な悦楽を感じてる自分自身に困惑しているんだ。
「‥‥ア‥‥‥」
 込み上げる快楽に身悶えながら、貴方の言いなりになっている自分自身に酔いしれる。
 たぶん家の中に入ったら何事もなかったように優しい貴方に戻って、珈琲なんか煎れてくれるんだろう。ソファに座る貴方の足元に寄り添うだけで、少し顔を赤らめて、嬉しそうに、困ったように笑う‥‥そんな貴方も大好きなんだけど。
「〜〜♪〜♪〜〜〜♪」
 いつものように鼻歌なんか歌いながら、凍り付くような笑顔で俺を抱いてる、こんな酷い貴方も。
 俺は、好きなんです。

『添い遂げたいなんて可笑しいか。‥‥‥あのね、譲くん。これまで散々付き合ってきて、俺がどれだけヤバイ人だか、もう知ってるよね?』
『ヤバイなんて思ってませんよ。色んな顔を持ってることくらいは解りますけどね』
『うん。‥‥‥ふふ、なんだろうねぇ。これまでの人生で自分を殺しすぎた反動なのかな。譲くんの前にいると、いろんな感情が込み上げてきて‥‥自分でも驚くくらいなんだけど』
『はい』
『どれもこれも‥‥ちょっと無茶かなぁと思うようなのまで、君はぜーんぶ受け止めてくれるでしょう?』
 クスクス。
 だって、全部が愛しいから。
『だから‥‥もう、全部解禁にしちゃおうかと思って』
『解禁、ですか』
『君の前限定でね。酷い俺も甘い俺も、全部‥‥押し殺すことなく、全部、ね』

「アッ‥‥もう、俺‥‥っ、かげと‥きさんっ」
「うん。あと一枚で干し終わるからね。が・ま・ん・し・て?」
「そんな、‥‥んぁあんっ」
「はい、おーわーり♪‥‥‥中に出してもいい?」
 いきなり耳元に吹き込まれた言葉に赤面しながら、コクコクと頷くと。
「じゃ、君もイッていいよ。俺が受け止めてあげるから」
 開放感より、背中に抱きついた体温が気持ちいい。
「あれ、震えてる‥‥?」
「この格好、けっこう寒いんですよ、‥え、ひゃあっ」
 前触れもなく身体が宙に浮く。
 どうやら恥ずかしい格好のまま、抱き上げられたらしい。
「それじゃ、早く温めてあげなくちゃ。‥‥続けてしたら、身体が辛いかな」
 スルリと服を脱ぐように、一瞬ですっかり心配性の景時さんになった。
「平気ですよ。だから‥‥温めてください」
 絡みついた首筋に甘えて、何度も口づける。
「御意〜♪」

 8ヶ月。
 素直な貴方が感染するのには、十分すぎる時間なのかもしれない。

「譲くん。‥‥‥愛してるよ」
 ええ。解ってます。
「俺もですよ、景時さん」
 射るような視線から、触れる肌の温度から、貴方の吐き出す空気からさえ‥‥感じてしまう、執着。それがどれほど俺を安心させるのかなんて、絶対に教えてあげないつもりだけど。
 願わくば、擦れ違うことなく俺の心が貴方に届いていますように。
 こんなに甘い毎日が、これからもずっと続きますように。

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