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[頼景]籠の鳥 04

逢夢辻番外/頼朝×景時【籠の鳥】〜04:頼朝サイド


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 恍惚とした表情で求めてきた顔は、すっかり元の凛々しさを欠いていた。
 それが愛しくてならない己は、とうとう壊れたかと‥‥。

 壊れた?

 なにを今更。
 この男がアレの呪縛を振り解いて帰り着いた時、既に私は何もかもを失っていたのだと、不意に気付く。

 武士の世など、成せば成るだろう。
 それは恨みと怨念に彩られた、眩い夢のような孤独。
 復讐。
 欲していたものを知らず、虚ろを埋めるだけの質量を求めた。
 それだけのことだ。
「ぅあ‥‥っ、よりともさま‥‥ぁ」
 獣の交尾のように、ひたすらに求め続けるコレだけが、救う。
 どれほどの成功を手に入れようと止まらぬ震えを、虚しさを‥‥この心を、救う。

「あぁ‥‥‥‥もう‥‥、どこ‥‥‥‥‥‥‥」

「仕方のない奴だ」
 すっかり満足して笑ったまま気をやった間抜け面を見下ろして、クツクツと笑いが込み上げた。馬鹿で間抜けでだらしのない顔。何を求めればこれで満足を覚えるのか。
 捧げきった淫欲の塊など‥‥。
「‥‥‥クッ」
 コレが起きていては、困る事情がある。
 見せるわけにはいかない。そこまで心を許したわけではない。
 無かったことにするしかない、涙など‥‥。

 景時。
 お前は傍に在ればいい。‥‥‥我が逝くまで、傍で見ておればいい。

 天下に意味など無い。

 一度見た夢にお前が惹かれて、それを共に望むというのならば、成す。
 それだけのことだ。

[頼景]籠の鳥 03

逢夢辻番外/頼朝×景時【籠の鳥】〜03:景時サイド


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 止まらない。
 困惑の中にいる頼朝様が、愛しくて、欲しくて。
 頭を抱えるように抱きしめながら、ひたすら貪り続ける。

 しばらくポーッと好きにさせてくれていたかと思えば、何かを諦めたように笑みを零す。
「景時」
 唐突に呼ばれた名が自分のものとは思えず、それでも掻きむしりたくなるほどの胸の痛みを覚えて、涙が止まらず。
 そんな俺を見つめた瞳は、見知った王者のソレに化けた。
「ぅあ‥‥っ」
 優しく執拗に、まるで恋人のような穏やかな愛撫に、怯えてしまう。
 まるで愛されているかのような、柔らかい快感が‥‥どうしよう、頼朝様、俺はっ。
「ああっ」
 握られて、さすられて、呆気なく果てる。
 それでも許さぬとばかりに追い立てる指に、舌に、痛みすらない純粋な快楽に、ここがどこだかも忘れて、ただ甲高い喘ぎ声ばかりが溢れ出た。
「‥‥景時」
 耳から雪崩れ込む低い声に追い込まれて、羞恥も遠慮も何もかもを脱がされてイカされた俺は、引き寄せられるように頼朝様の腰に顔を埋めた。
「‥‥‥っ」
 快楽に詰まる息が背中を犯しても止まらず、これまで何度も俺を翻弄した熱の塊にしゃぶりつく。
 頼朝様の気持ちは、まだ解らない。
 解ったと思ってはイケナイのだろうと、己を戒める。
 それが罰でも気紛れでも執着でも愛でも、俺は‥‥なにもかもを受け入れることができる。

 どうして愛してしまったのだろう。
 それこそが苦しみだというのに‥‥愛情は、何も産みはしないのに。
 これまでのように、役に立つ道具で在りたかった。使い捨てのきく便利な道具でいたかった。貴方に執着されるなんて、考えたこともなかったのに。
「景時‥‥‥?」
 感じてほしくて、ひたすらにしゃぶり続けていた俺の髪を、戸惑うような声と優しい指が滑り抜けていく。
 キモチイイ‥‥‥。
 ただ、頭を撫でられただけなのに、何かが駆け抜けて。
 恥ずかしい。俺‥‥なんで、イッてるの。
「あああ‥‥」
 あまりの刺激に堪えられなくなって口を放すと、痙攣する身体を愛おしむように抱えた腕がゆっくりと身体中を撫で回していく。
 ダメ、そんな、また‥‥っ。
「うっ、うくぅ‥‥っ」
 どうして。
 おかしい。
 身体が‥‥‥燃える‥‥っ。


 頼朝様
 景時


 耳鳴りの向こうで声がブレて‥‥足を抱えて顔を覗き込むように沈みこんだ身体から、目を逸らすことすらできなくて‥‥。
 不可抗力だ。
 伸ばす腕を止める理性なんか、粉々に砕けて塵になって風に乗って。
 もう今は、それが不自然なことかどうかも解らない。
 どうしよう。
「奥‥‥‥もっと奥に、ください」
「こうか」
「ああっ、ああ‥‥あああ‥‥っ」
 気持ち良い。
 頼朝様に、もっと触れられたい。
「もっと激しく‥‥求めて‥‥壊して‥‥」

 吐きだした吐息は、炎のように赤く燃えていた‥‥‥‥。

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[頼景]籠の鳥 02

逢夢辻番外/頼朝×景時【籠の鳥】〜02:景時サイド


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 いったい何!?
 何がどーなって、どーしたらこーなるの!?

 鳩が豆鉄砲なんて可愛いもんじゃない。
 痛いし苦しいし意味ワカンナイし、こんな、ちょっ、無理で‥‥す、と、振り払うことはできなかった。
 異物が中に入りこんで、皮膚が裂けて、息ができなくて。
 それでも。
 それが頼朝様の暴力である限り、どこか快楽をすら覚える。

 それはおかしな錯覚。

 初めは、頼朝様を裏切って茶吉尼天を滅したことへの怒りか罰かと考えた。
 でもなんか違う。
 そんなに怒ってたら、いっそイチモツを切り捨てるくらいしそうな残虐性を、嫌ってほど見せつけられてきたわけだから。
 まさか。
 頼朝様が自らの手を‥‥身体を、汚してまで、いったい何をしているのかと‥‥それは理解の範疇を越えていた。
 憎まれているなら。疎まれているなら。この腕の熱は‥‥まるで縋りつくように強く抱きながら刺し貫く、この腕の熱さが解らない。
 吸っても吐いても息苦しさの抜けない、その呼吸の意味が解らない。
 ‥‥‥いや、答えなど無いのだろう。
 むしろ答えを出すために行為に及んだのかもしれない等と推測をしてみる。
 打ち捨てられた部屋の中、込み上げる涙は、ただ状況に混乱しているだけなのだと自分に言い聞かせて、飛沫に汚れた部屋を調える。
 まるで何もなかったかのように。

 そんなはずはないのに。

 その日を境に、何かが壊れてしまった。
 人払いの済んだ部屋に呼ばれては、その行為は続く。意識を失うこともできず、ひたすらに注がれて‥‥気付けばもう、触らずとも奥を突かれただけで達してしまうほど、身体は慣らされていた。
 射精感を覚えることもないまま、女のように啼かされ続けて‥‥声が嗄れる。
 思考は焼け焦げて、自我は砕かれて、言われるまでもなく服を落とすようにすらなってしまった身体は、貴方を、求めて。
「よりともさま‥‥」
 いいから。
 もう、どんな理由で俺を抱こうが、それが貴方の望みならば否定はしないから。
 せめて声を。俺の名を忘れたのではないのならば、せめて今までのように‥‥名を呼んではもらえないものかと。
 正直、もう限界だった。
 日に日に窶れていく身体よりも、心が悲鳴を上げていた。

 愛しさを、自覚してしまった時から。

 何かを期待してしまう自分が、それでも名を呼ばれることすらない空気が、身体が熱くなればなるだけ‥‥孤独を煽って。
「頼朝様‥‥っ」
 無理だ。壊れてしまう。
 いやもう既に壊れているから、こんな‥‥っ。


 注がれ続けて膨れあがった不安も期待も執着も愛情も何もかもが溢れ出して、それに向かう。
 どうなってもいい。
 ただ溢れ出す思いのまま、息を止めて、全てを喰らうように獰猛な口づけを残した。

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[頼景]籠の鳥 01

逢夢辻番外/頼朝×景時【籠の鳥】〜01:頼朝サイド


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 どうして戻って来るなどと思えたのか。
 籠の鳥を空へと放つようなことをしておいて、何の餌も与えていない主の元に、望めば望んだだけの自由を手に入れることのできるアレが、なぜ戻ってくると思えたのか、理解し難い。
 だが、あの時あの男を前にして、迷いはなかった。
 戻るのだろうと。
 どれほどの不条理をも、ものともせず、この場所へと戻るのだろうと‥‥血にまみれた薄汚い手の中に、戻るのだろうと。

 いっそ裏切ればよいとも思った。
 過去の全てがそうであったように、裏切り踏みにじって、何処へなりとも進めばよいと。
 それを糧に心は凍る。
 それでよい。それこそが己の強さなのだと。


 なぜ戻る。


「九郎義経ならびに白龍の神子の、現世界での消滅を見届けて参りました。今後、この時空に現れることは‥‥‥‥‥頼朝、様‥‥?」
 なぜ解らぬ。
 聞きたいのは、そのように判りきった報告ではないのだと。
「よりとも、さま‥‥っ?」
 なぜ解らぬ。
「黙れ。舌を噛むぞ」
 抵抗らしい抵抗もないまま容易く露わになる肌を噛みつくように味わいながら、無理矢理に組み敷いていく。
 戸惑いと恐怖の中にある身体を労ることもせず、思うがままに穿ち、暴き、陵辱していくも、そこに憎しみの宿る気配すら無く。
 ただ‥‥理解に苦しむように、頬が歪んでいた。

 説明する言葉を持たない。
 どうしてそんなことになったと、それは我の問いでもある。

 なぜ戻った。
 後悔すらも感じさせぬ凛とした瞳で‥‥まるで恐怖に追われることなく前に在ることを、誇らしくすら感じているかのように、毅然と。

 いっそ、抱くことで、この男の絶望を煽りたかったのではないかと思い至る。
 この手の中に戻ったことを悔いるがよいと‥‥。


『景時』


 幾度となく呼んだ名が口を出ることはなかった。
 乱したままの着物ごと、汚物のようにその身体を捨て置き、部屋を出る。

 消えてしまえばいい。

 酷い孤独と空虚によろめいた身体に、腹の底から笑いが込み上げた。

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[将九]ペットバトン

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【君はペットバトン】
{将臣×九郎}
 ※飼い主が下なのはオヤクソク(?)ってゆーか別に逆でも良いですが(笑)
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[家に帰ってきたら玄関前に怪我をした「将臣」がいました。どうしますか?]

 ま‥‥将臣‥‥?
 あまりの状況に頭がついていかないが、名を呼んでも虚ろな返答のみ。さすがにそのまま置いてゆくわけにもいかず、こっそりと屋敷内に運び込んだ。

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[手当てをして食事を与えると眠ってしまいました。何処に寝かせる?]

「ほら、食べろ」
 と、目の前に皿を並べても反応が薄く、その乾いた唇から水分が不足していることが見て取れる。このままにしておけば死んでしまうかもしれない。
 ‥‥‥‥死ん、で‥。
 それは、困る。理由など定める必要はない。ただ、困る。‥‥そう思うのだから仕方がない。

 皿の上で食べやすく加工したものを口に運ぶと、のろのろと飲み込んだ。
「悪ぃ‥‥な‥」
「構わん。早く体力を戻せ」
 短い会話の後でクスッと薄く笑った顔が、これまでの緊張を忘れさせる。

 眠ってしまった将臣に、朱に染まった顔を見られずに済んだことを安堵しながら、静かに溜息を吐いた。

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[朝起きると「しばらくおいて」と言ってきました。どうしますか?]

 構わないが‥‥‥。
「何か、あったのか?」
 困ったような笑顔が、聞くなと言っている。
 ならば聞くまい。
 お前には幾つかの借りがある。
 ただそれを返すだけだ。

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[話し合いの結果ペットとして飼うことになりました。好きな名前をつけて良いとの事、なんてつけますか?そして、あなたをなんて呼ばせますか?]

「どこでもいいぜ。なんなら外の犬小屋でも」
「バカか」
 人間だと思わなくていいだなどと言い出す将臣に困惑しながら、少し考える。‥‥今の将臣は、何か変だ。
「俺の部屋でも平気か?」
「いいのか?」
「ああ」
 良いのかと問われれば、あまり良くはない。だがお前の不審な言動を見守るには最適の場所だろうと言わざるを得ない。
「‥‥‥ったく、俺を試してんのか」
 ん?
「何だ?」
「い〜や、何でもねーよ。‥‥迷惑かけたら、ゴメンな」
 それは構わないが。

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[お風呂に入る様に言いつけると「怪我をしているから頭洗って」と言ってきます。洗ってあげる?]

 うっ(////)
 風呂から呼ばれて何の用だと覗き込めば、慣れない片手で石鹸の泡を顔に飛ばした将臣が、困った顔で目を閉じている。
 当然だが、何も着けていない。
 目を閉じているせいで、自分がどんな格好をしているのかも解らないまま、大きく股を開いて、ふらつく身体を支えていた。
「悪ぃ!!湯釜の位置が解らなくなった」
 ‥‥‥‥‥‥油断、しすぎだぞ‥‥。
「そのまま大人しくしていろ。背中くらい流してやる」
「おっ、サンキュ♪ ついでにお前も入っちまえば?」
 たしかに、着物を着けたままでは不自然だが。
「‥‥‥‥‥困る」
「ん?」
「い、いや、用があるから後でゆっくり浸かるつもりだ。お前も湯冷めする前に上がれ」
 男というのは厄介な生き物だと自覚した。

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[「将臣」がお散歩(お出かけ)したいと言っています。何処に連れていき、何をしますか?]

 腕の傷はすっかり癒えたらしい。だが事情が判らない以上、外に出すわけにもいかん。だから庭で剣の稽古に付き合わせた。
 将臣の太刀筋は太く強い。小手先の技術では弾かれて簡単にねじ伏せられてしまいそうなほど、まっすぐに向かってくる。
 見惚れて、ほんの一瞬、対応が遅れた。
「九郎っ!!」
 支えられて気付くと、袖が僅かに赤く染まっていた。
「お前っ、バカッ!!」
 泣きそうな顔で怒りながら、袖を引き裂いて皮膚に下を這わせる将臣に、ますます身動きが取れなくなる。
 どうすれば、いい?
「傷はたいしたことねぇ。でも‥‥ゴメン、な」
「お前が謝ることではないだろう」
 将臣。
 胸が‥‥こんなに、苦しいのは。
「運ぶぞ」
 問答無用で抱き上げられた腕の中、やりきれぬ心を隠すように、胸の音を聞いていた。

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[「将臣」が寝たいそうです。何と言ってくるでしょうか?一緒に寝ますか?]

「昼間、何考えてたんだ?」
 優しい声色に、つい本音が零れそうになる。お前のことだなどと、云えるわけもないのに。
 ああ。
 気付いた時には、手遅れだった。
「九郎‥‥」
 寄せられた唇が教える。
 何も伝える気がないのならば、見つめるべきではなかったのだと。
 目は口ほどに物を言うのだ。
 たぶん、言葉で伝えられない想いほど、雄弁に。
「お前と、寝たい」
 ・・・・・・。
 なんと応えるべきなのか、その言葉は持たないが。

 ほどけた帯の間から、そっと抜け出して。
 お前を引き寄せた。

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□他にペットとどんな事をしたいですか?
□バトンを回す人「」を指定して6人に回して下さい。

以下、自主規制(笑)

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