逢夢辻番外/頼朝×景時【籠の鳥】〜04:頼朝サイド
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恍惚とした表情で求めてきた顔は、すっかり元の凛々しさを欠いていた。
それが愛しくてならない己は、とうとう壊れたかと‥‥。
壊れた?
なにを今更。
この男がアレの呪縛を振り解いて帰り着いた時、既に私は何もかもを失っていたのだと、不意に気付く。
武士の世など、成せば成るだろう。
それは恨みと怨念に彩られた、眩い夢のような孤独。
復讐。
欲していたものを知らず、虚ろを埋めるだけの質量を求めた。
それだけのことだ。
「ぅあ‥‥っ、よりともさま‥‥ぁ」
獣の交尾のように、ひたすらに求め続けるコレだけが、救う。
どれほどの成功を手に入れようと止まらぬ震えを、虚しさを‥‥この心を、救う。
「あぁ‥‥‥‥もう‥‥、どこ‥‥‥‥‥‥‥」
「仕方のない奴だ」
すっかり満足して笑ったまま気をやった間抜け面を見下ろして、クツクツと笑いが込み上げた。馬鹿で間抜けでだらしのない顔。何を求めればこれで満足を覚えるのか。
捧げきった淫欲の塊など‥‥。
「‥‥‥クッ」
コレが起きていては、困る事情がある。
見せるわけにはいかない。そこまで心を許したわけではない。
無かったことにするしかない、涙など‥‥。
景時。
お前は傍に在ればいい。‥‥‥我が逝くまで、傍で見ておればいい。
天下に意味など無い。
一度見た夢にお前が惹かれて、それを共に望むというのならば、成す。
それだけのことだ。