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[頼景]籠の鳥 03

逢夢辻番外/頼朝×景時【籠の鳥】〜03:景時サイド


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 止まらない。
 困惑の中にいる頼朝様が、愛しくて、欲しくて。
 頭を抱えるように抱きしめながら、ひたすら貪り続ける。

 しばらくポーッと好きにさせてくれていたかと思えば、何かを諦めたように笑みを零す。
「景時」
 唐突に呼ばれた名が自分のものとは思えず、それでも掻きむしりたくなるほどの胸の痛みを覚えて、涙が止まらず。
 そんな俺を見つめた瞳は、見知った王者のソレに化けた。
「ぅあ‥‥っ」
 優しく執拗に、まるで恋人のような穏やかな愛撫に、怯えてしまう。
 まるで愛されているかのような、柔らかい快感が‥‥どうしよう、頼朝様、俺はっ。
「ああっ」
 握られて、さすられて、呆気なく果てる。
 それでも許さぬとばかりに追い立てる指に、舌に、痛みすらない純粋な快楽に、ここがどこだかも忘れて、ただ甲高い喘ぎ声ばかりが溢れ出た。
「‥‥景時」
 耳から雪崩れ込む低い声に追い込まれて、羞恥も遠慮も何もかもを脱がされてイカされた俺は、引き寄せられるように頼朝様の腰に顔を埋めた。
「‥‥‥っ」
 快楽に詰まる息が背中を犯しても止まらず、これまで何度も俺を翻弄した熱の塊にしゃぶりつく。
 頼朝様の気持ちは、まだ解らない。
 解ったと思ってはイケナイのだろうと、己を戒める。
 それが罰でも気紛れでも執着でも愛でも、俺は‥‥なにもかもを受け入れることができる。

 どうして愛してしまったのだろう。
 それこそが苦しみだというのに‥‥愛情は、何も産みはしないのに。
 これまでのように、役に立つ道具で在りたかった。使い捨てのきく便利な道具でいたかった。貴方に執着されるなんて、考えたこともなかったのに。
「景時‥‥‥?」
 感じてほしくて、ひたすらにしゃぶり続けていた俺の髪を、戸惑うような声と優しい指が滑り抜けていく。
 キモチイイ‥‥‥。
 ただ、頭を撫でられただけなのに、何かが駆け抜けて。
 恥ずかしい。俺‥‥なんで、イッてるの。
「あああ‥‥」
 あまりの刺激に堪えられなくなって口を放すと、痙攣する身体を愛おしむように抱えた腕がゆっくりと身体中を撫で回していく。
 ダメ、そんな、また‥‥っ。
「うっ、うくぅ‥‥っ」
 どうして。
 おかしい。
 身体が‥‥‥燃える‥‥っ。


 頼朝様
 景時


 耳鳴りの向こうで声がブレて‥‥足を抱えて顔を覗き込むように沈みこんだ身体から、目を逸らすことすらできなくて‥‥。
 不可抗力だ。
 伸ばす腕を止める理性なんか、粉々に砕けて塵になって風に乗って。
 もう今は、それが不自然なことかどうかも解らない。
 どうしよう。
「奥‥‥‥もっと奥に、ください」
「こうか」
「ああっ、ああ‥‥あああ‥‥っ」
 気持ち良い。
 頼朝様に、もっと触れられたい。
「もっと激しく‥‥求めて‥‥壊して‥‥」

 吐きだした吐息は、炎のように赤く燃えていた‥‥‥‥。

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