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[頼景]籠の鳥 01

逢夢辻番外/頼朝×景時【籠の鳥】〜01:頼朝サイド


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 どうして戻って来るなどと思えたのか。
 籠の鳥を空へと放つようなことをしておいて、何の餌も与えていない主の元に、望めば望んだだけの自由を手に入れることのできるアレが、なぜ戻ってくると思えたのか、理解し難い。
 だが、あの時あの男を前にして、迷いはなかった。
 戻るのだろうと。
 どれほどの不条理をも、ものともせず、この場所へと戻るのだろうと‥‥血にまみれた薄汚い手の中に、戻るのだろうと。

 いっそ裏切ればよいとも思った。
 過去の全てがそうであったように、裏切り踏みにじって、何処へなりとも進めばよいと。
 それを糧に心は凍る。
 それでよい。それこそが己の強さなのだと。


 なぜ戻る。


「九郎義経ならびに白龍の神子の、現世界での消滅を見届けて参りました。今後、この時空に現れることは‥‥‥‥‥頼朝、様‥‥?」
 なぜ解らぬ。
 聞きたいのは、そのように判りきった報告ではないのだと。
「よりとも、さま‥‥っ?」
 なぜ解らぬ。
「黙れ。舌を噛むぞ」
 抵抗らしい抵抗もないまま容易く露わになる肌を噛みつくように味わいながら、無理矢理に組み敷いていく。
 戸惑いと恐怖の中にある身体を労ることもせず、思うがままに穿ち、暴き、陵辱していくも、そこに憎しみの宿る気配すら無く。
 ただ‥‥理解に苦しむように、頬が歪んでいた。

 説明する言葉を持たない。
 どうしてそんなことになったと、それは我の問いでもある。

 なぜ戻った。
 後悔すらも感じさせぬ凛とした瞳で‥‥まるで恐怖に追われることなく前に在ることを、誇らしくすら感じているかのように、毅然と。

 いっそ、抱くことで、この男の絶望を煽りたかったのではないかと思い至る。
 この手の中に戻ったことを悔いるがよいと‥‥。


『景時』


 幾度となく呼んだ名が口を出ることはなかった。
 乱したままの着物ごと、汚物のようにその身体を捨て置き、部屋を出る。

 消えてしまえばいい。

 酷い孤独と空虚によろめいた身体に、腹の底から笑いが込み上げた。

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