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[江戸遙か 03] 闇を駆る者

 食べるという行為は、老若男女…善人悪人の別なく、全ての人間に共通している道楽なのかもしれない。ふとそんなことを考えたくなるほどに、譲くん達が切り盛りしている蕎麦屋は、奇妙な縁を取りもっている。

 

[江戸遙か]闇を駆る者

 

 この近辺で小さな仕事を重ねながら、闇の動きを探る日常。相棒となる男は腕の立つ薬師…名を『弁慶』という。けして隙を見せず跡を残さず…完璧な仕事をする者だ。
 そしてそんな俺たちを追う、ここいらの岡っ引きを一つに束ねているのが『九郎』という通し名を持つ若者だった。
 やり口は巧妙。勘も悪くない。なんといっても足が速い。…しかし捕り物の腕よりも警戒しなきゃならないのは、彼の持つ人望の厚さかと思う。
 今までも幾つかの町を相手に仕事を重ねてきたが、この一体の連帯感は奇妙な感覚さえある。何か異変があれば九郎へと情報が集まる…そんな仕組みを謀らずに作ってしまうのは、この男の持つ魅力の成せる業かもしれない。
「また来ていたのか、景時。お前も相当な蕎麦好きだな」
 カラカラと笑う笑顔には影が無く、本当に命をかけた修羅場をくぐり抜けてきた者かなのかと驚くほど。
「ふふふ。…九郎、本当にわからないんですか?景時さんが好きなのは蕎麦ではなくて」
「おおっと何を言いだすかな、弁慶先生~?」
 唐突な攻撃に、鼻から蕎麦を噴きそうになる。
 こんな話を譲くんに聞かれたら、二度とこの店に近づくことはできないというのに。
「照れていらっしゃるんですか? いいじゃないですか。兄弟愛というのは美しいものですよ」
「兄弟………あ、ああっ、そうだね。確かに朔のことは心配だよ~。悪い男に騙されちゃったら大変だしね~」
 冷や汗がドッと噴き出るのがわかる。確実に気付いて言っているのだろうと判ってはいるが、一々に反応してしまう自分の立場が悲しい。
「そうか。確かに朔殿ほど美しい妹子では、悪い虫がつきそうでおちおちしてはいられないな」
 生真面目に頷く九郎の言葉は、本当にそれ以上の含みを持たないことに気付いた。…ある意味、凄い。弁慶とは対局に在るのかもしれないと感心している視線の前で、痴話喧嘩のような軽口が飛び交う。
「悪い虫……貴方ではないと言い切れるのでしょうか」
「あたりまえだっ、むしろ美しい娘子とあらば誰彼構わず手を出す、お前のような奴に言われてはかなわん」
「心外だな…。僕はお付き合いする方は大切にしていますよ? 九郎のように固く考えていては、添い遂げる相手など一生見つからないでしょうね」
「うるさいっ。今はそれより大切なことがあるんだ」
「大切なこと?……あなた一人が頑張った所で、江戸から盗賊が一掃されるワケはないでしょう? ならば身を固めて血を残すことも、大切な役目かと思いますが」
「お前の頭の中は、それだけなのかっ」
「まーまーまーまー」
 止めないと、いつまででも続けていそうな雰囲気は、…仲が良いと言うべきなのか。
「ありがとうございます、景時さん。そろそろ俺が止めに入らなくちゃいけないかと聞いていたところなんですよ」
「譲くん………」
 賑やかで活気に溢れた店の空気が、一転する。
 視界の端で忍び笑いをする弁慶の姿に気付いても、取り繕うことすらできないほど、俺の目を奪う…君。
「どうかしましたか?」
 優しく瞳を覗き込んだ君は……毎夜、俺の夢に現れる。
 その柔らかな瞳を涙で濡らして、その美しい肢体をしならせて、その温かい声で悲痛な歌を奏でながら、俺の身の下に、いる。
 罪悪感に震えて……それでも俺は、君を求めて此処へと足を運ぶ。救いようのない奴だと自覚しながら、悪びれもせず君の瞳を見つめる。
「どうも、しないよ?」
 このくらいの嘘は簡単につける。
 どれほど自分が汚い人間なのかは、知っている、解っている……とっくに諦めてしまった。
「そうですか。それならいいんですけど」
 翳りのない笑顔。
 君が、この闇を知ることのないように……今はそれだけを願ってやまない。
 
 
 
 
 
 
 
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[江戸遙か 02] 君は日溜まり

「確か、この辺じゃなかったかな~♪」
 フラフラと歩いていると、まるでオヤクソクと言いたげに打ち水を浴びた。

 

[江戸遙か]君は日溜まり

 

 鼻歌なぞ口ずさみながら賑やかに歩いていた所へ…ちょっと酷いんじゃないの~?と声をかけようと顔を上げるのより一歩早く、悲鳴のような声があがる。
「うわっ、すみません!!!!」
 自分のような身分の低い『侍風情』には、町人の態度も悪い。
 こんな目に遭うことも稀ではないが、謝るどころか怒鳴り散らされることすらある。
「すみません、俺、ボーッとしちゃって。あの、お急ぎでなければあがってください。すぐに乾かしますからっ」
 …………驚いたな。
 有無を言わせず連れ込まれた先は、目的地である蕎麦屋。
 しかも景気が良いとはお世辞にもいえない中、驚くほどの客入りだ。
 昼時はとっくに過ぎて、打ち水をするほどの時間というのに。
「すごいね~。そんなに美味しいの?」
 店に入ったとたん元気の良い娘に掴まり、奥へと引っ込んだ後ろ姿を追いながら、近くに座った客に話しかける。
「蕎麦は10人並ってトコだな。まー不味くはないよ。なんせあんな別嬪さんが運んでくれる蕎麦なら、味なんざ何とでもならぁ」
 ゲスな笑い声を響かせる男共に囲まれて、その『別嬪さん』の一人に数えられているらしい身内が、奥から飛び出してきた。
「兄さん。まったく……また前も見ずに歩いていたんでしょう」
 なるほど、前掛けをしてパタパタと近寄る姿は、なかなかの別嬪さんかもしれない。
「朔ってば、手酷いな~」
「そうですよ、俺が悪いんです。仕事がたて込んでいたものですから、上の空で、つい力が入りすぎてしまって…」
 申し訳なさそうに俯く少年の姿を、改めてまじまじと見つめる。
 濡れた裾を手拭いで丁寧に叩きながらも、真っ直ぐと伸びた背筋。几帳面に引き結ばれた唇。
「もういいよ。朔の言うとおり、ボーッとしていた俺が悪いんだから。ここまでしてもらって申し訳ないくらいだよ」
 実際、この程度のことなら『歩いていれば乾く』と笑ってかわしていたところだ。
 ……なぜ、掴まった?
「そんなことありませんっ」
 膝をついたまま、まっすぐに見上げてきた瞳。

 これだ。

 金縛りにかかったように、動きを封じられる。
 どんな相手にも止まることなく滑り続ける軽口が、この瞳の前では止まってしまう。
 今までどんな会話をしていたのかすら、一瞬のうちに忘れて…。
 名前は、なんていうの?
 ここで働いているの?
 簡単な質問すら口に出せず、狼狽える。
 こんなことは初めてだ。これが敵なら俺はもう死んでいるかもしれない。
 ふわ…。
 声を失った俺を許すように、慈悲深い笑顔が花開く。
「朔さんのお兄さんだったんですね。…それじゃここが、貴方のもう一つの家になるかな」
 い、え……?
 不思議なことを言う唇を見つめていたら、吸い寄せられるような心地になって焦ってしまう。
 さっきから……何か、おかしい。
「どういうことかな?」
 何でもないことのように喋るのが、こんなにも苦しいなんて。
「ふふ。うちの姉が、しょっちゅう朔さんの所に入り浸っているんですよ。なかなか賑やかだから眠れないんじゃないかと思って。…そんな時は我慢せず、ここに逃げ込んできてくださいね」
 楽しそうに冗談めかしている笑顔につられて笑う。
「それは大変だ。娘さん達の華やかさは、とても男がついていけるものではないからね~」
「景時さんもそう思いますか」
 笑い声に紛れて普通に呼ばれた名前に焦る。
 朔が教えたのだろうと判っていたのに。
「名前、知ってたんだね」
 もっと呼んでほしいだなんて……ホント、焦る。
「うわ、すみません。朔さんから伺っていて…俺、年下なのに、つい気易く」
「あ、いーのいーの。肩凝る呼び方されると困っちゃうしさ。そのままで頼むよ~。…君のことは、なんて呼んだらいいかな」
 ただ名前を聞くだけのことにドギマギしている自分が滑稽だ。すぐに返ってこない言葉を待つ数瞬。頭に血が上っていくのが判る。
 不自然だったか。もう少し話をしてから聞くべきだったか。何かおかしな言い回しをしただろうか。
「…げ時さん、景時さん」
 肩にかかる手の重みに過剰反応する身体。
 気付けば視界いっぱいに広がる真っ直ぐな瞳に射抜かれて、息をすることすら忘れてしまう。
 大変なことに、今気付いた。

 俺は、この人が……好き。

 呆然とする。
 真正面から気遣わしげに見つめてくる、日溜まりのような視線。
 柔らかな陽光を想わせる笑顔。
 空へ向かい真っ直ぐ伸びる竹のような佇まい。
 俺の中にない、昼の陽差しを持つ君。
「突然ボーッとして……大丈夫ですか?俺のことは譲と、呼んでくださいね」
 譲くん。
 初めて知った名前に、これほど優しい響きを覚えるなんて。
「譲くん……」
「はい。なんですか、景時さん」
 譲くん。譲くん。……もっと何度も呼びたい。
 オカシイ。
 人の血を浴びながら生きる、この身が。
「あ、いや……よろしくね」
 オカシイ。
 幸せを求めること自体が。
「ええ。よろしくお願いしますね」
 オカシイ。
 人を好きになるなんて。

 その後、何を話したのか覚えていない。逃げ帰るように家に辿り着き、布団の中で震えていた。
 求めてはならない光に焦がれる罪に、心を引き裂かれながら。
 求めてはいけない人の姿が、目蓋に焼き付いて……いっそこの目を抉りだしてしまおうかと悶えながら。
 
 
 
 
 
 
 
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[江戸遙か 01] 臆病な侍

 闇を駆ける者。
 求めることを諦めて、業に従うばかりの悲しい男がいた。
 闇に溶け存在を消した姿で、罪のない者を殺める…それすら己の意志になく、ただ命じられるまま求められるままに人を金を…全てを奪い、闇に生きる者。
 その瞳に光はなく、ただ生きるのみ。
 そのはずだった。
 出逢いの妙が運命の軸を叩くまでは…。

 

[江戸遙か]臆病な侍

 

「この辺りでの仕事は初めてですか。それでは僕が案内を務められるといいんですけどね」
 人当たりの良い笑顔で憂いなく囁く顔を、驚いて見つめる。
 それはこの辺りで頼りにされている薬師の大先生…貧乏な者からは必要以上に金を取らず、しかし金を持て余す身分の者からも信頼され大金を積まれる腕の持ち主だ。
 まさか裏家業になど関わるはずもない。
 何かの間違えかと思いとぼけて見せると、気を悪くした風もなく邪気のない笑顔で否定された。
「疑う材料がありませんよ。頼朝公からは貴方の素性と今回の仕事内容が届いています。もしも僕が味方でないのなら、それこそゆゆしき事態と思いませんか」
 確かにその通りだ。
 しかし…裏の顔を持つ以上、表の顔というものは誰しも持つものといえ、ここまで陰のない見事な顔を持つ人間を知らなかった。
「いや~、吃驚しちゃったな。朔から噂を聞いてたお偉い先生が、まさか、ね」
「それを言うなら僕の方が驚きましたよ。朔さんには常日頃からお世話になっています。こちらの家業も因果な商売でして、患者の重なる日などは無償で手伝いに来てくれる娘さん達の手が、どれほど有り難いものか…。あの人は、陰のない優しい娘さんですね」
 腹違いではあるが大切な自慢の妹を、手放しで褒められて悪い気のするはずがない。しかも一つの土地で長く続けていられるということは、それだけ腕がたつということだ。
 久々に戻った故郷での仕事は、せめて相棒に恵まれたと確信して、胸を撫で下ろす。
 本当は、帰ってきたくなどなかったのだ。
 闇に身を落とした自分を知らず優しく迎えてくれた故郷で、また自分は罪を重ねねばならない。
 罪の息苦しさに身悶えながらも、腹が鳴る。
 人間とはどこまで身勝手な生き物なのだろうと呆れて笑いながら、朔が働いている蕎麦屋へと足を運んだ。

 どんなに苦しくとも、死を選ぶことすらできない。
 自分を庇って死んだ母の最後の言葉が、己を戒めていた。

『景時、生きなさい。死ぬほど辛いことなんざ、腐るほどある。……生きなさい。血反吐を撒いても生きなさい。命ある限りは、母の後を追うことを許しません』
 
 
 
 
 
 
 
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[景譲]二股な譲(パラレル

もらった二股バトンから派生したお遊び。
譲が望美と景時に挟まれてオロオロしてる学園モノです。
特殊なパロなので、以下設定。

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設定
・質問の特質上、年齢は無視。3人は同い年で同じ学校に通っています。望美ちゃんと景時さんは同じクラス。譲くんは隣のクラスです(※譲が望美を『先輩』と呼ぶのは、そのまま残します。これ変えちゃうと雰囲気が出ない)
・譲くんはずーっと幼なじみの望美ちゃんのことが好きで好きで好きで好きで壊れちゃいそうでしたが(笑)昨年度クラスメイトだった景時さんとの間に、いつの間にか友情以上の何かを感じるようになってしまいました。景時さんは譲くんのことが大好き、いやいっそ愛してます(笑)今までポヤ〜ンと「譲くんは傍にいてくれる」と思っていた望美ちゃんは、突然のライバル出現に内心アセアセです(笑)
・そんな折り、学校の中で流行りだしたチェーンメールのようなもの…。これは譲くんの本音を聞く絶好のチャンスである!!と意気込んだ二人は今、譲くんの机を囲んで(まるで三者面談のように)向かい合っています。
・依然フワフワと立場を決めかねている譲くん、大ピンチ!!!
・望美ちゃんがこっちを向いてくれた。それが嬉しくてたまらないのに……景時さんの視線を感じると、過去の恋情は全て「なかったこと」にしたくなる、この気持ちはなんなのか。
・景時さんに甘く囁かれると泣きそうになる。なのに応えようとするたび、望美ちゃんの笑顔が泣き顔が憂い顔が浮かび……心が千々に裂かれそうな気分になるのは、何故なのか。

さあ、答えていただきましょう。


「 譲 く ん、ど っ ち が 好 き な の ? 」

> ひとーつ。
> 辞書を忘れて来ちゃった!!
>『望美ちゃん』と『景時さん』、どっちに借りる?

 辞書を忘れて……?
 それじゃ、景時さんに相談をするでしょうね。
「どうして〜っ。即答ってあんまりだよ、私そんなに頼りにならない?」
 頼りにならないというより、頼りにしたくないんです。いつでも貴方に頼られる存在でありたいのに……いや、それ以前の問題だな。貴方に「忘れ物をしました」なんて言えませんよ、恥ずかしい。
「俺になら、言えるの?……それってちょっと期待して良いのかな?」
 そういえば……景時さんに弱味を見せるのは、何の抵抗もない。いつも気付くと寄りかかっているような気がする。なんでだろう…。
「ああっ、理由なんか考えなくていいからね。頼りにしてよ。なんでもしちゃうからさ?」


> ふたーつ。
> 宿題やってきてない!!
>『望美ちゃん』と『景時さん』、どっちに写させて貰う?

 この質問は、有り得ませんね。
「……そうだね、譲くんが宿題忘れたなんて」
 はい。写す暇があったら、自力で終わらせます。
「ハハハ……俺が写させてもらうなら、いつものことだけどね…」
「私も……」


> みっつー。
> 週末に『望美ちゃん』と『景時さん』からデートのお誘い。どっちに行く?

 先に約束をした方と……というのは、ダメなんですか?
「ん〜。この場合は、誘われただけで『どっちとも約束まではしてない』ってことじゃないかな。だから譲くんが選んでいいんだよ」
 それにしても…内容で選ぶとか…。
「ふぅん、それでいいの? それじゃ譲くんにとって、より魅力的な誘いをした方が勝つことになるのかい」
 いえ、けしてそんなわけじゃっ。
「だったら選ぼうよ。同じ内容で同じ日に俺と望美ちゃんが譲くんを誘ったら、譲くんはどっちに行きたいの?」
 えっと……それは…。
(………デートの誘い? 貴方から、デートの誘い…? 貴方から、二 人 き り で デートの誘い? ←※トラウマスイッチ作動中)

 すみません。……先輩と。


> よっつー。
> ギュッてしてもらうなら、『望美ちゃん』と『景時さん』、どっち?

 だ…っ、抱きしめてもらうってことですか?
「そうよ〜。なに狼狽えてるの?」
 いえ、だって、そんな…っ。
「過剰反応するってことは、その辺に弱いってことかな?」
 ち、違いますよっっ(←墓穴掘った)
 なんで二人とも躙り寄ってくるんですかっ、もう俺帰りますよっ。
「譲くん、逃げるの!?」
 ピクッ(基本的に逃げるのはイヤみたいです)
「そうだよ〜、ほら座って。…逃げる時は、一緒に逃げてあげるからさ?」
 …………え?
「なんでもないよ。……本当に抱きしめたくなるね、君は」
「そーいえば、譲くんに抱きしめられたことはあったけど、逆はなかったよね。なんかいつも避けられてた気がするぅ……ムゥ…」
 だって、それは…っ。
「望美ちゃん、それはちょっと酷だよ。譲くんにも男のプライドはあるわけだからさ?」
「んー。ってゆーか、スキンシップ全般を避けられてたような気がしてきたのよ。これって嫌われてるってことじゃないの?」
「さあ…どうかな。ふふ。俺としては、そういうことにしておきたいけどね?」
「どういう意味?」
「好きすぎて、止 ま れ な く な る ってことだって、あるじゃない」
 ………っ(////)
「譲くん、この質問は俺にしとかない? ソンナトコも含めて、抱きしめてあげるよ」

 ………………………………はい(//−//)


> いつつー。
> 耳元で愛を囁いてもらうなら、『望美ちゃん』と『景時さん』、どっち?

 どんな質問ですかっっ(←壊れてきた)
 もう嫌ですっ、俺帰ります。
 ガシィッ(←二人から両脇を固められた)
「そんなこと言うと、いっせーの!で両側から囁くわよ?」
「望美ちゃん、ナイス!俺もそれがいっかな〜って思ってたトコだよ♪」
「本当に譲くんのことになると意見が合いますねっ」
「そ〜だね〜♪」
 嫌です、聞きたくないっ。そういうのは二人きりの時にそっと交わすものですし、どちらかが希望してそれを叶えるという形はオカシイんです!!
「ふぅん……不意打ちなら、いいってことね?」
「二人きりの時だね、覚えておくよ」
 っっっっ!?(//□//)


> むっつ−。
>『望美ちゃん』と『景時さん』、どっちに本命チョコあげる?

 チョコ……ですか、作りますよ、いくつでも…。orz
「手作りしてくれるの?感激だな〜」
「でも、本命チョコって一つだよね。…毎年私が貰ってた気がするけど」
「そっか。じゃ、今年は俺が貰ってもいいかな〜?」
「ヤーですっ。今年のチョコは絶対欲しい!!」

「てゆーか、普通は、望美ちゃんがあげるんじゃないの?」

 ガガンッ。
「あ、そーですね……そーいえば…」
 かっ、景時さんっ、貰ってくれますよねっ(涙)
「もちろんだよ〜。嬉しいな、譲くん♪」(←確信犯)


> ななつー。
> 結婚するなら『望美ちゃん』? 『景時さん』?

「これは私だよね、男同士じゃ結婚なんかできないもんっ」
「法律で認められなくても、神様に誓って、一緒に住むくらいならできるよ」
「だって景時さんには、譲くんの子供、産めないでしょ?」
 コ ド モ !?
「あ、そっか〜。う〜ん、惜しいなぁ〜。俺も譲くんの子ダッコしたいしなぁ〜」
「ほらっ。だから私が結婚して生んであげますよ、譲くんの子」
 ウ ン デ ア ゲ マ ス !?
「あ、あれ…? 譲くんっ、譲くん、しっかり…っ」
「キャアッ、…ゴメン、刺激が強すぎた…?」
「アハハ。これじゃ子供はいつになるかな〜」
「気長にいくもん。…それまで、こうやって二人でからかっていられるでしょ?」
「そだね〜♪」


> やっつー。
> 結局どっちが好きなのさ?

「困ったね〜。答える人がこれじゃあ」
「……譲くんって、自分から向かってくる時はエネルギッシュなんですけど」
「そうそう。全身の毛穴から『好き』が溢れて飛び散るくらいの熱量だよね〜♪ だけど受身は苦手なのかな。もしかして『自分が愛される』って構図を覚悟してない…?」
「…………たぶん」
「アハハッ、それは望美ちゃんが悪いんじゃないかな。ちゃんと返してあげなくちゃ〜」
「だって、この強さで向かってくるんですよ? 私まで返したらどんなことになるかと思ったら、知らない振りを通すことくらいしかできなかったんですよ。一度受け止めたら絶対に裏切れないしっ、相当の覚悟がいるんだから!」
「そうかもね」
「そうですよ」
「今は、覚悟、してるの?」
「どうかな。……景時さんは?」
「どうだろうね〜。俺は裏切り者だから…ね。逃げる時は、追って来れない場所まで一気に逃げるし」
「逃げちゃうの?」
「ん〜。逃げなくていいようにしていかなくちゃとは、思うんだけどね…」
「でも本気になった譲くんから逃げ切れる人なんかいるのかな」
「さあ?……譲くんになら、追っかけられてみたいけど」
「こ わ い で す よ ?」
「恐くてもいいよ。本気で…殺されるくらい本気で、愛されちゃうんでしょ?……そんな恐怖なら味わってみたいもんじゃない」
「ん?……もしかして景時さん、愛に飢えてます?」
「さあ、どうかな。…そうかもしれないね」


 殺したいくらい本気で愛してもいいんですか。
 壊れるほど盲目に、ただアナタだけを求めてもいいんですか…?
 ……言えない。
 口にして、離れてしまうのは怖ろしすぎる。
 口にして、壊してしまうのは悲しすぎる。
 もう少し今のまま、このまま、いさせてください…。もう少しだけ…。

[景譲]酷い遊び

 はじめは、ちょっとした遊びだった。
 仲間に冗談で着せられてしまった女物の着物。なんとか趣味の悪い余興からは抜け出してきたものの、いざ脱ぐ時になって、よくある『アレ』をやってみたくなったというか…景時の反応を見てみたくなったというか。
 譲は、そんな自分に苦笑いしてしまう。
 それでも何故か、二人きりの時ならば、こんな倒錯した遊びも楽しいと思ってしまうのだ。同じ性別…不自然な交わりを続ける『情人』との関係に、疑問を感じないわけではないが。男である自分が女の役を持つことに、違和感を持たないわけではないが。
 相手が景時であれば、何もかもを許してしまいたくなる。
 困ったものだな。
 こんな自分の変化すら、今は楽しい。
 矛盾も不安も、景時の前に立つと掻き消えてしまう。…まるで自分が消えてしまうようで、怖くもあるけれど。
 いっそ、消えてしまえたら、いいのに…。
 どこかでそんな願望を感じながら。

「俺は男ですから、少しくらい乱暴にしても大丈夫です。変に謝られたりすると、こっちが恥ずかしいですから」
「御意~♪ 譲くん、ノリノリだね。じゃ、いくよ?『よいではないかよいではないか~』あっ、譲くん怪我しなかった?今、変な風に手ぇ付いたよね」
 オロオロオロ。
「……ですから、…大丈夫、だと…」
「ゴメン…。やっぱり心配だよ。帯で遊ぶのはやめよ?」
 そう言いながら景時の身体が後ろに回り込んで、袷の間から少し乱暴に胸を弄り始める。
「え…っ、景時さん、なんで…」
「ん~?だって譲くんは、少し乱暴な方が感じちゃうんでしょ?だったらほら、怪我しない方法で……奪うから」
 紐を解かないまま着物を分けて、強引に指が入り込んでくる。
「あ……ダメ、そんな……景時、さ…ぁんうっ」
 抵抗も虚しく腕を押さえ込まれて、床に押し付けながら、まだ慣れていない場所を貫かれた。
「景時さ、ん…っ、………あぁ…」
 痛みは相当なものだろうに、譲は恍惚とした表情でそれを受け入れる。
 そして抵抗できない自分をこそ恥じるように、顔を逸らす。
「むりやり奪われると、感じちゃう…?」
 少し意地悪な気分になって耳元に囁くと、熱を帯びて潤んだ瞳が見つめ返した。

「……………イジワル……」

「言ったでしょ、俺は優しくなんかないよ、譲くん。……そんなに気持ちよさそうな顔をすると、もっと酷いことしてみたくなるじゃない…。悪い子だね」
 そう言うと、挿し貫いたまま強引に足を掴み上げ、身体半分を宙に吊り上げた。
 譲の身体は後頭部と肩…肩胛骨の辺りまでしか地に着いていない。
「あ…ぐっ………ん…っ、っあああぁ」
 上から叩きつけるように腰を打ち下ろされる。
 繋がりの深さに眩暈を覚えて腰を逃がそうとしても、足首から吊り上げられている状態では避ける術もない。
 あんまり快感に我を失いそうになり、譲は初めて怯えることを覚えた。
 見上げれば、残忍なまでに整った顔が、悪びれもせずに笑っている。
「苦しくて痛いのが、そんなに好き?……今さら怯えた顔をして、譲くんは俺をどこまで壊せば気が済むのかな…」
 うっすらと灯る、憎しみの炎。
 忌々しげな舌打ちの後、乱れた髪をかき上げて、苦しげな唸り声が名を呼んだ。
「譲くん…。君を、壊してしまいたいよ」

 君ノ瞳ハ、狂気ヲ煽ル。

 無慈悲にも抉り込んだ質量に身を裂かれながら、いっそこんな…非現実な陵辱こそが、自分を救うような気がして。
 振り回されて情の熱を叩きつけられてる間は、悪夢も…過去の悲恋も、全てを忘れられるような気がして。
「あ、あっ、ア、んああっ。景時さん……景時さ、ああああっ」
 我を忘れて嬌声を上げながら、屍のように身を投げた。

 全て貴方の思うがままに。
 俺を支配して……この苦しみから逃れさせて…。

 撒き散らした白い雨が譲自身を汚していくのをボンヤリと認めながら、その身体に己の熱を全て打ち付け、注ぎ込み……ようやく身体を解放する。
 ……床に投げ出された、小さな影。
 常に何かを抱え、何かに怯え、何かに耐える……美しい人。
 壊したいのは、彼が人知れず抱える強大な影。
 自分が抱えるそれにも似た、しかし全く非なるもの。
 真っ直ぐな心に『死の影』にも似た不安を抱き、自虐的な程に肌を求める、悲しい恋人。
「まったく、参っちゃうね。…ほんの遊びのつもりだったのにさ」
 日常の他愛ない交わりの中に、時折こんな、残酷な影が差す。
 全てを手放ししっとりと横たわる恋人を、軽々と抱き上げ、寝所へと運ぶと、無惨に汚れた身体を…顔を、そっと清めた。
 浅い眠りの中で悪夢にうなされる人。
 せめて今だけは……ゆっくりと休めるように。
 心ばかりの結界を張り、包み込むように身体を添える。
 今だけは、俺の腕の中でだけは、君の寝顔が穏やかでありますよう。

 祈りにも似た口づけを落とし、罪深い恋人は意識を手放した。
 
 
 
 
 
 
 
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姫はじめ、景時バージョン(笑)
こちらはエロエロ設定になっております。ヘタレ攻めですが、さすが地白虎ってことで物凄いスタミナですね~。朝まで付き合える譲くんの体力と愛にも、かなり呆れますけど。わはは。

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