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[友頼]囚われの身

譲葉のラクガキ祭りに便乗して小ネタを投下してた期間があったんだけど、この時は友雅の拘束一人絵だったもんで、前半部分を書いて「相手は誰だ」と問うたら、鷹通と頼久の名前が挙がったので〜という流れデス。(→鷹通バージョン)
お祭りは踊ってナンボというタイプ(笑)



 私は束縛されることを嫌っていたはずだと、記憶に確認を取る。
 どうしたことか。
 君に縛られて‥‥こんな鎖を用いるほどに狂ってしまった君に、この身を縛られて。
 どうやら私は悦んでいるようだ。

 私が欲しいのかい?

 構わないよ。
 君が望むだけ、君の中に痕を残してあげる。
 生かすも殺すも君次第。
 こんな鎖で縛らなくとも、私は既に君のモノだと納得できるまで。

 縛られていようか。


 貴方は危険だ。
 私だけではない、全ての人間にとって危険な存在なのだ。
 だからその身を拘束して‥‥。

 いっそ、そんな狂言を信じてしまえれば楽になる。

 苦いものを噛みしめて視線を上げた私を、残酷な優しさが容赦なく切り裂いた。
 そんな、私を赦すような目はおやめください。
「友雅殿‥‥私は、私は‥‥」
「知っているよ。皆まで言うこともない」
 楽しげな笑い声に顔を上げると、妖艶な微笑みに誘われて。
「頼久、おいで。‥‥ここまでしたのだから、もう逃げられはしないだろう?」
「逃げ‥‥る?」
 泣きそうな気持ちで傍に寄る。
 捕らえられたのは私の方なのだと、ぼんやり気付きながら。
「素直に言ってしまえばいい。‥‥私が、欲しいのだと」
「友雅殿‥‥?」

「素直に言えたら、ご褒美をあげるよ?」

[友鷹]学園パロ

【貴方を好きな私の事情】


「藤原くん」
 確かにそれは私の名前だったはずだ。
 ここで反応しなくてどうするんだと呆れるほど、間違えなく私の名前だったはずなのに。
「鷹通‥‥どうしたんだい?」
 耳元で囁かれて、ハッと振り返る。
 みるみるうちに耳まで赤く染まる自分を意識しながらも、言い訳一つ浮かんでこなかった。
 確かにそれは、私の名前で。
 ここは学校なのだからと、この方に何度も教えつけて、ようやく守ってもらえるまでになったばかりの、私を示す記号で。
「ふふ。やはりファーストネームで呼ぶべきではないかな」
 無理などしないで‥。
 楽しげな含み笑いを否定するだけの気力もなく、項垂れて「勘弁してください」と呟くしかなかった。
「構わないさ。君を苛めるのは本意ではないからね」
 嘘つきは泥棒の始まりです‥‥。
 心の中で無駄に反抗しながら、気持ちを切り替えて顔を上げた。

 ここは遙時学園。
 私にちょっかいを出してきた意地悪な大人は、保健室を任されている養護教諭、橘友雅先生。揺れる時代の煽りを受けて、この学園にもクラスに馴染めない子供が数名いるようだが、それでも登校拒否とまでいかず「保健室登校」と呼ばれるギリギリのラインで踏みとどまっているのは、ひとえにこの方の魔法に他ならない。
 故に、校内ではちょっとしたカリスマ。
 ‥‥‥‥恋人は、気が気でない。

「ちょっとしたタレコミがあってね。信頼できる君になら、情報をあげたいと思って来たのだが」
「信頼ですか。‥‥それが条件であるなら、情報の見返りは要求しませんよね?」
「まさか」
 カラカラと弾けた悪気のない笑顔が、どれだけの毒を含んでいるのか知るのは、この世に私だけだと主張したい。
「私は校内の噂など、どうでもいいのだよ。‥‥君を誘う口実に、君が欲しがるソレを掻き集めているだけだ。知らなかったのかい?」
「知りませんでしたね」
 呆れて溜息を吐く自分と、心の中で含み笑いを噛み殺す自分と。どちらも私なのだから、仕方がない。
「謹んでお受けいたしましょう。お聞かせ願えますか」
 にっこりと満足げに頷いた貴方と、視線で絡み合う。こんな公衆の面前で、不埒に愛し合う。

 見返りを期待せずに与え続けるのが本物の愛と言うが、ならば私のこれは愛ではないのでしょう。
 貴方ほどの方が私を想って動いてくださる。
 それが嬉しくて、絆されてしまう。
 こんな私は本物の愛などではないけれど。
「‥‥‥というわけだよ。役に立ったかい?」
「大変助かりました。‥‥早めに切り上げて伺いますね」
「極上の酒を用意してお待ちしよう」
 密かに笑い合う共犯者には、本物などではない私の愛が好評らしい。
 学園内のトラブルや相談事を一手に引き受けて解決へと導く『コーディネーター』という職種で働く新人教師には、心理学に基づく専門知識と、情報通な恋人の存在が不可欠だ。
 これが、貴方を好きな私の事情。

 それでもこれは、紛れもなく私の愛であり。
「そろそろ切り上げないかい?‥‥仕事ばかりしている真面目な教師は、生徒にも恋人にもウケが悪いよ?」
「ふふ、そうですね。橘先生は今からお帰りですか? それでは駅まで乗せて頂けると有り難いのですが」
「おやすい御用だよ。今日はデートなのだろう、愛しい方と」
「ええ、まあ、そんなところです」
 他人行儀な会話の中で告白を繰り返してはクスクス笑い合う、こんな生活を私達は気に入っているのですから。
 誰にも文句は言わせません。


「や‥‥‥こんな所で」
「何を言うかな。ここはもう、君が嫌う『公衆の面前』ではないのだよ」
「せめてベッドまで我慢できないのですか!!」
「できないねぇ」
 背中から強く抱かれた身体。
 乱されたシャツの裾からスルスルと指が入り込んで、私を掻き乱す。
「‥‥‥ハン‥ッ‥」
 鼻から抜けた甘い声に驚きながら、そっと身を凭れさせて貴方の首筋へ‥‥その柔らかな髪の中へ、顔を埋める。
「ァッ‥‥アー‥‥‥」
 私を求めて動く指先が、理性を掻き乱して。
 悪い夢を見せる。
「ベッドに運ぼうか」
「いえ‥‥。このまま、ここで‥‥貴方をください」
 誘うように身を捩って柔らかく笑う。
「そうかい?‥‥ふふ。それでは壁に手を付いて、君の中を私に見せて」
 いつの間にか弛められたスラックスを落としながら、言われるままに貴方を待つ。
「その姿勢のままでいるのだよ?」
 開くことはない玄関に、それでも無防備に自分を晒しているのは、どうにも恥ずかしいけれど。‥‥それすら快楽の元になる。
 貴方と出逢って、私はずいぶん変わってしまった気がします。
「寝室ではないからね、近い場所から潤滑油を調達してきたよ」
 手にしているのは‥‥調理用のオリーブオイル?
「これは、まあ。なんと素敵な眺めかな」
 クツクツと皮肉気な笑い声を降らせながら、ゴムの上にオイルをまぶして。
「良い子で待っていたご褒美だよ。さぁ、たんとお食べ」
 慣らしもせずに、そのまま入り込む。
「ふっ、ああぁ‥‥‥‥」
「ここは奥の寝室ではないのだよ。大きな声を出すと廊下に筒抜けではないかな」
 まあ、私は構わないがね?
 意地悪な貴方を、それでも、どうしても、憎むことができない。
「‥‥‥う‥はぅ‥‥」
 口を塞ぐ為に充てた指を、無意識にクチュクチュと弄ぶ。
「おやまあ、すっかり誘い上手になって」
 そのまま振り向いて満足げな貴方を煽ると、誘われ上手な恋人が熱い溜息を吐いた。
「イケナイ恋人だね。‥‥私をこんなにして」

 今夜は寝かさないよ?
 
 甘い声と、不埒な響き。
 私にとっては、その全てが愛しい貴方を示す愛の形なのです。

[イノ友]風邪台風☆

元ネタは台風バトン。
風邪で発熱してる友雅。お外は台風。そんな時に傍に駆けつけてくれるイノリ‥‥は、とーっても想像しやすかったです(笑)イノリは台風なんか怖くねーだろ(笑)



「友雅ーっ、大丈夫かよ、風邪引いたって聞いたぜ?」
 イノリ‥‥‥?
「何をしているんだい、外は凄い暴風雨で‥‥」
「ばぁか、だから来たんだろ。こんな日に一人だなんて、いくらお前でもムチャクチャだぜ」
 あっさりと言い切って笑ったイノリは、手早く脱いだ雨具を玄関先に干して、バタバタと上がり込んできた。
「髪が濡れているじゃないか」
「あー悪ぃ、タオル借りるぜー」
 いや‥‥そういうことではなくて。
 世話を焼く暇もなく、勝手知ったるとでも言いたげに家中を歩いて、いつの間にか私の傍らに座っていた。手にした盆に看病に必要なものが‥‥私が布団の中でボンヤリと欲しがっていたものが、あらかた乗っている。
「そんな不思議そうに見んなよ。これでも京にいた頃は、毎日姉ちゃんの看病してたんだぜ?」
 息を吐くように笑った顔は、妙に大人びていて。
「そうか‥‥ああ、そうだったね」
「なんだよ、また姉ちゃんに嫉妬とかいうのか?」
「いや、頼りになるものだな‥‥とね」
 高熱で言葉を発するのも辛い。
 からかう気にもなれず素直に褒めると、イノリはその髪の色に負けないほど一気に赤くなって脇を向きながら「そ、そそ、そうでもねーよっ」と小さく呟く。
 ふふ、可愛いものだ。
 ぼんやりと和んでいたところへ、ガタガタガタッと大きな物音が。
「ヒッ」
 不意を付かれて抱きついてきたイノリが可愛くて、だけどこの後、我に返って恥ずかしさに怒り出すのだろうと思うと可笑しくて。
「イノリ‥‥少し不安なのでね、このまま抱いていてくれないかい?」
 甘えるふりをして、身を預ける。
「お、おうっ、オレがついてるから大丈夫だぞ。お前は風邪のことだけ考えて、しっかり休めよな!」
 肩が笑わないようにと堪えるのも困難だよ。
 幼く未熟なイノリは、それでも私が弱く出る時は、どんなに大きな男にでもなってみせると必死になる。
 惜しいねぇ。
 これに本物の力がついてくれば、君はどこまでも魅力的な男になるだろうに。
「心配すんな。オレ、絶対にお前のことだけは、守るから」
 ‥‥‥否。自分の中の恐怖と戦うように、私を包みこむように囁くイノリは、もう十二分に魅力的なのだろう。
 小さな身体で私の頭を抱え込むように抱きしめていたイノリの膝で、短い夢を見た。目を開けた時に内容は飛んでしまったが、それは心地よく‥‥独りでは決して得ることのない深く温かい夢だった。
「お、もう熱が引いたな? じゃ、オレは帰るぜ」
 あっさりと言い切ったイノリを、やんわりと引き止める。
「せめて雨が止むまで、ここにいてはどうだい」
「こんなの、たいしたことねーよ。オレは平気だぜ?」
「私は‥‥平気では、ないのだが」
 この子を引き止めるのは、上から押さえつけるような強さではなくて。
「そりゃ‥‥役に立てるんなら、居てやっても、いいけどよ‥‥」
 少し狡猾な、弱さ。
「それはよかった。少し寒くてね」
「そりゃマズイじゃん。布団、出すか?」
 今にも駆け出しそうなイノリの手首をそっと掴んで、強く引き寄せる。
「一緒に眠ってくれないかと」
「は?・・・・・・なっ、何言ってんだーっ」
「具合が悪いと、心細いものなのだよ」
「こっ、子供じゃあるめーし!!」
「それは関係ないだろう?‥‥それとも、大人だからという理由で、虚勢を張らねばならないのかい」
「や、それは‥‥えと‥‥、‥‥‥わかった。一晩だけ、だぞ」
「ああ」
「へ、変なことすんなよ?」
「変なこととは?」
「なんでもねーよ、早く寝ろってのっっ」
 笑いを吐き出しながらも、その腕に甘えるように丸くなる。
「ったくもー‥‥」
 ブツブツと呟く呆れ声を子守歌に。
「‥‥‥ん?‥‥‥もう、眠っちまったのか?」
 ボンヤリと呼吸を繰り返していると、少し困った様子のイノリが、そっと髪を撫でてくる。
「イノリ‥‥‥好きだよ」
 寝言を装って零した言葉に、腕の中の体温が一気に上がって。
「て、テメェ、このやろっ。起きてんだろーっ!!」
 さすがの私も、笑いを堪えることが出来なかった。

[イノ友]桃の花

「イノリは桃の、実と花と、どちらが好き?」
 唐突に聞かれたから、あんまり考えないで答えちまった。
「そりゃ花だろ。桃の実は美味いけど、桃が咲かねーと春になった気がしないじゃん?」
「ほう‥‥風流なことを言うね」
「へへ。姉ちゃんが好きな花だからなっ」
「‥‥姉上、ね」
 ガッカリしたような声に、少しカチンとくる。
 そーいや天真にも「しすこん」だとかなんとか、からかわれたんだ。
「お前もオレのこと、ガキだって言いたいのか。姉ちゃんの大切なものを大切だと思っちゃ悪いのかよ。思い出だってなんだって全部一緒に持ってるのに、影響されたら子供だっていうのかよ。家族ってそういうものじゃないのかよっ」
 なんか無性に腹が立つ。
 ホントは解ってるんだ。
 姉ちゃんのことばっかで、オレには自分だけの「大切なもの」が無い。
 姉ちゃんを守らなきゃってそればっかで、そんなもの、作る暇なんかなかった。
 時間が足りない。
 早く、早く友雅より大人になりたいのに。
 狡いよ‥‥‥一人で、勝手に格好良くてさ。こんなんじゃ一生追いつけない。こんなんじゃ一生、コイツの恋人になんかなれない。
 口惜しくて切なくて、涙がボロボロ零れてきた。
 あーあ、何やってんだろオレ。これじゃ本当に、ただのガキだ。
「イノリ、‥‥すまないね」
 困り果てたような声で抱き寄せるから、なんか逆らえなくて、その腕の中にスッポリと包まれる。
 安心して。それがまた情けなくて。
 全身がブルブルと震えてる。
「馬鹿にした‥‥‥わけではなくてね。私は姉上に嫉妬をしたのだよ」
 嫉妬? 何言ってんだコイツ。
 わけがわからなくて顔を上げて真っ正面から見据えると、お手上げだと言わんばかりの苦笑いがある。
「嫉妬って、なんだよ」
 鼻声で言い募ると、ふてくされたように横を向く。
「皆まで言わせるのかい」
「言わなきゃワカンネーだろ」
 逃がすものかと必死で食らいつくと、降参したように両手を上げて、笑った。
 なんか、すげぇ優しい笑顔だ。
「イノリ‥‥一番好きな花は?」
「桃」
「それは姉上の好きな花だろう?」
 そうだけど‥‥他に、花なんて。
「私の好きな花を教えたかな」
「友雅の?‥‥‥‥‥‥あ‥‥」
「さあ、イノリ。君の好きな花は?」
 何を言いたいのか、ちょっと判った。
「桃。‥‥だけど、木蓮も好きだぜ」
 たぶんこれからもっと。
「可愛くないねぇ」
 傍にいれば、もっと。
「ったりまえだろ、男なんだから」
 木蓮とか、橘とか、秋の花も冬の花も。
「まぁ‥‥解ったようだし、今はそれでよしとしようか」
 もっと好きになるから。

「オレは花より、お前が好きだぜ」
 ちょっと照れて、だけど真っ直ぐぶつけた言葉に、友雅は不意を付かれたみたいな顔をして‥‥やっぱり、ちょっと照れて。
「ありがとう、イノリ」
 反則だろってくらい優しい顔で、笑った。

[頼永]秘密

「永泉様が‥‥?」
「うん、なんか変だったんですよ。こう、生気が抜けたように出て行っちゃって‥‥私の思い過ごしならいいんですけどね」
 嫌な予感がして、たまらない。
「天真、神子殿を頼む」
 突き動かされるように走って向かった先。
 月明かりを映す神泉苑の水のように、透き通った涙を流して。
 拭いもせずに佇む、想い人の姿。
 気配を殺して近づくと、この身に気づきもせずに小さな声が私を呼んでいた。
「頼久‥‥頼久‥‥」
 空耳なのだと自分の言い聞かせる。
 まさか永泉様が、なにゆえに私の名など‥‥。
「‥‥っ、よりひ‥さ‥ぁ‥‥‥」
 崩れ落ちんばかりに屈み込んだ身を、そっと支える。
 腕の中で飛び跳ねんばかりに大きく震えて身を固くした貴方を見て、やはりあれは空耳ではなかったのだと気付く。
「私が貴方を苦しめているのですか」
 ならば、この腹をかっ切ろうとさえ思う。
 なによりも大切な貴方を苦しめる存在など‥‥許しておけるものかと。
「違います。違うのです‥‥私が、浅ましくも貴方の秘密を知ろうなどと思ったから。‥‥そんな権利などありはしないのに。貴方の苦しみを理解したいなどと、だいそれた事を願ったから。許してください、頼久。私はただ、貴方に近づきたかっただけなのです」
 支離滅裂なばかりの言葉は、それでも永泉様の心をそのまま表していた。
 身分が違いすぎるのだと押し殺していた心が、狂気となって我が身を切り裂く。
「永泉様‥‥」
 そっと声をかけるだけで、涙を止めて真っ直ぐに見上げてくる、あどけなささえ感じる澄んだ瞳。
 いっそ壊してしまったとしても‥‥。
 そっと重ねた唇は拒まれることもなく、夢の中のような柔らかい匂いがした。

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