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[天頼]吹雪の熱 2

 このまま全て喰らいつくされて‥‥ああ、それでもいいかもな。いっそお前のモノになっちまえば、こんなに悩むこともないのに。

 ジリジリと、もどかしい熱が広がる。
 早く。
 そこじゃない‥‥早く、熱に触れてくれよ。
 転がされて背を上にしたまま固まった俺を焦らすつもりか、味わうように背中を這いまわる舌が、妙に熱くて、くすぐったくて‥‥も、心臓が保たねぇよ。
「ァ‥‥ハッ」
 助、けて。
 跳ねるように起きあがって腕に縋ると、今度は頬にキスが降る。
 気持ち良いような、居心地が悪いような、なんとも切ない感覚に攫われて、視界にあった耳朶に噛みつく。
「‥‥っ」
 息を詰めて焦ってるのは、悪くないからだろ?
 調子に乗って舌を差し入れると、詰まる息の中に高い声が混じった。
 俺を欲しがる頼久の気持ちが、ちょっと理解できて困る。
 こんな姿を見られるなら、それがどんなにヤバイ橋でも渡ってみたくなるもんじゃないか?
「天真。‥‥だめ、だっ」
 イヤよイヤよも好きのうち、とか言うよな。
「そ?」
 あっさり解放すれば、取り繕う素振りすら忘れて、とびきり素直に悲しそうな顔をする。
 お前、今どんな顔してんのか解ってる?
 鏡見せてやりたい。
 いや、見せたら素直じゃなくなるかな。やっぱり俺が勝手に見てる方が美味しいか。
 それにしても、まあ‥‥‥。

 イライラするぜ。

 俺のことが好きなんだろう。もうそれは疑わない。
 これだけ示されたら、疑う余地もないけどさ‥‥でも。
 小慣れてるよな?
 身体、合わせるの‥‥‥当然みたいにさ。
 そもそも俺を見て『疼く』って辺りが、もう普通じゃねぇ。
 過去に嫉妬だなんて、可笑しいか。
 誰とした?
 何をした?
 どこまで‥‥‥‥‥‥‥っ。
「頼久」
 腸が煮えくりかえる。
 俺は、こんなのは初めてだぞ、神に誓って。
 ギリギリと歯軋りをしながら突き飛ばすと、怯えたような顔になる。
「すまない‥‥やはり」
「嫌じゃない。むしろここで止まれるほど可愛くもない」
「それでは」
「お前、下でも平気?」
 どうなんだろう。本能がビリビリいうんだけど‥‥頼久、お前。
「つーか、下の方が感じるんじゃねぇの?」
 しゃがみ込んで額を合わせるように傍に寄ると、頼久の顔がみるみる赤く染まった。
 あーイライラする。
「てん、ま‥‥?」
 不安げな顔は、たぶん俺が離れちまうことを怖がってるんだろーな。
 ばーか。ありえねーんだよ。
 発情期の犬かってくらい無駄に欲情して、自分で呆れるくらい無駄に嫉妬してんだぞ。どうやりゃ手放せんだ。
「俺が欲しがっちゃダメ?」
 正直、頼久になら、どうされてもいい。
 散々もったえぶって焦らした分、痛かろうがキツかろうが、好きにされてやるつもりでここまで来たけど。
 モヤモヤの正体が解ったんだよ。
「欲しい」
 俺がお前を欲しがってるんだ‥‥こんな関係、知らないけど。
 お前の身体に他の感覚が残ってるなんて許せない。
 誰と、何があった?
 本当は全部聞きたい。お前の過去を全部暴いて、その中の誰より俺が好きだと言わせたい。
 そんなの無理だろ?
 聞いてどうなるものでもないから、せめて。
「お前の中に俺を埋めたい」
 ストレートに求愛したら、頼久が面白いくらい狼狽えた。
 今更、何照れてんだ。
「ダメ?」
 甘えるように追いつめたら、相変わらず言葉のニブイ堅物が、腕を伸ばして引き寄せてきた。

 泣いてる‥‥‥かな。

 俺が欲しがるなんて思ってもみなかったんだろう。
 だから、頼久が迫るしかなかった。
 わかってる。ゴメン。薄々感じてたんだけどさ‥‥こんなのは初めてなんだっつーの。
 お前を甘やかすには、悔しいけど経験値が全然足りてない。
 ほら、今だって。
 どうすればいいかなーと思いながら指でなぞれば、頼久は脱ぎ捨てた着物の懐から小さな入れ物を取り出して、ヌルヌルとしたそれを指で絡め取った。
「はしたないと‥‥笑うな」
 そう言いながら、それを自分の尻に馴染ませて身悶える。
 や。はしたないとかいう問題じゃないだろ。なんだその色っぽい顔はっ。
 唾を飲みこむ音が部屋中に響くんじゃないかと思うほど。
「ゥ‥‥‥ッ、ンゥ」
 たぶんそーとー生々しい箇所を見せないように、気を使ってるんだろう。
 こっちを向いたまま、後ろ手に刺激を続ける。
 だから‥‥、その恍惚とした顔は隠しようがない。
「フ‥ゥン‥‥」
 切ないんだろうな。
 零れそうな眦にキスして、笑いながら耳元で囁く。
「頼久‥‥いろっぽすぎて我慢できない」
 熱い吐息を味わうように唇を合わせてから、胸の突起に吸い付く。
「ア、ッ」
 舌先を固くして何度も往復すると、胸の位置を固定したまま、力無く頭を振る。
 堪えられないくらい感じるから、もっと続けてくれって?
 可愛い。
 こんなに可愛いすぎるのって、どーなの?
 胸がチリチリするのは、こんな姿を他の奴にも見せたかもしれないなーとか思うからだけど。
 たっぷり苛めるのはあとにするかな。
 もう、限界だし。
「そろそろいいだろ?」
 囁いたついでに耳朶を強く噛んで、先を促す。
「てんま‥‥」
「欲しい?」
 手を付いて腰を向けた頼久に触れず、後ろから問いかける。
 早く答えろよ。もう、限界なんだっての。
 全身を赤く染めてコクコクと頷く姿に辛抱堪らず、少し強引に突き入れる。
「う、ああぁ‥‥‥っ」
 久々だったのか、背中を目一杯反らして堪えた後、ガクンと腕の力が抜けて床に崩れ落ちる。
 ハッ、ハッ、と短い息をつぐのは、息苦しさからか。

 クソッ、叫びそうだ。
 全部持ってかれそうなほど、最高にイイ。
 なんだコレ‥‥‥‥ヤバイだろ、いくらなんでもっ!
「頼久‥っ、すご‥‥ァッ」
 溺れそう。
 いきなりしたら苦しいかなって思う。まだ慣れないかとか、ゆっくりと待った方がいいんだろうとか。
 ムリ。
「動くぜ?」
 ヌルヌルと引き込まれるような感覚に、我を忘れる。
「‥‥ウ、‥‥クゥッ」
 それでも感じて堪えるように喘ぐ頼久に煽られて煽られて、もっと‥‥もっと動物みたいに、理性ぶっ壊して啼かせてみたくて。
 上から下から角度を変えては突き上げて、やわやわと入口を揺らしたり、わざと乱雑に抉ったり、小刻みに激しく突きまくったり、腰を回して奥深くを探ったり。
「ア‥‥‥ア、アアアアア、天真っ、天真ぁああぁっ」
 いよいよ壊れた声を上げた頃には、もう俺が限界だった。
「頼久、ゴメ‥‥‥‥もう、俺‥‥っ」
「ア、グッ‥‥ぁっ、中‥‥に」
 もう、ワケがワカンナカッタ。
 言われるがまま解き放った時、頼久も達したらしくて。ギュッと握り込まれるような刺激に襲われる。
 何度も何度も。惜しむように、何度も握り込まれて。
 一度や二度の射精感じゃない。
 経験したこともないくらい、際限なく吐き出して。

 熱い身体に凭れたまま、意識を手放した。


1← →3

勢いで書きましたが、譲葉が イラストを投下したせいで ブレーキが破損しました(真顔)なんだこの破壊力は。
天真がっ、天真がカッコ良いよーーーっ。
頼久が可愛いよーーーっっ(雄叫び)
エロエンジン全開(そして理性という名のブレーキは全壊)です。
精神的には(←強調)もう満足なんですけど頼久さん(だけど俺たちが満足じゃなかったんだとか非道なことを言いたいお年頃)

[頼天]吹雪の熱 1

元ネタはお友達のSS。初めの方の台詞は殆どもらってます。天真サイドだったから頼久サイド書いてみた。で。間違ってエロまで突入したとか。ダメな子でスミマセン(土下座ゴリゴリ〜〜)


  
「うー‥‥‥‥‥寒い‥‥寒すぎる‥‥ヤバイ‥‥」
 ほらまた、そんな無防備な。
「‥‥天真。うるさい」
「あ‥‥‥?」
「寒いのは分かるが、そんなにぶつぶつ言うことはないだろう」
「俺、寒い言ってた?」
「‥‥‥は?」
 あきれて、二の句が継げない。
 念仏のように唱えていたソレを、無意識と言うか‥‥まったく、お前という奴は。
「お前、寒くないのか?」
「寒くないことはないが…」
 むしろ暑いのだと告げれば、熱でもあるのかと騒ぐだろうか。
 こんな時、傍に友雅殿がいれば、酷く意地の悪い病名を付けてくださるものだろうが‥‥いや、私とのこんなやりとりでさえ素直にむくれる天真になど、とうてい聞かせられるものではないな。
「こら、そんな顔をするな。もうすぐ交代の時間だ」
 いつからこんなに囚われてしまったのか。
 慣れぬ寒さに震えてなお凛と伸びる背を見つめる。
 不機嫌な横顔さえ、ただ愛しくて。
 さもすればフラフラと引き寄せられそうになる己を、嘲笑う。
「‥‥あとで、温めてやる」
 言葉の意味を量りかねて時を止めた、無防備な額に、唇を寄せる。
 数瞬を置いて、湯気を噴きそうに温度を上げた姿。
 今、何を思った?
 茶化しもせず抵抗もせず、ただ熱を上げるのか。
 こんな獣のような男を、野放しに‥‥?
 己の中で暴れるものを必死で抑えながら、歯軋りをする。
 長い長い長い数瞬。
 交代の者に早口で引継を済ませ、天真の手を取ると。
「なんだ頼久、お前も寒かったのか」
 などと呑気に笑いかける。‥‥頬を僅かに歪ませて。
「寒くなどない」
 噛みしめた歯の隙間から言を紡ぐと、生まれたての雛のように頼りなげな視線が、まっすぐ向かってきた。
 反らすことなど不可能だろう。
 堪えられる気がしない。これ以上、どうあっても。
 限界と、思う。
 はぐらかすことなど‥‥できるはずも。

 お前の声も姿も何もかもを、全ての者から隠すように、私以外の誰にも触れぬように、人の住まぬ離れまで連れ歩く。
「頼久‥‥‥」
 天真は、この強引な流れに逆らうどころか、力を注ぐように手を握りしめた。

 後ろ手に戸を閉めた私と、そこに重い錠をかけた天真と。
 願いは、一つ所にあったのだろうか‥‥。

 飢えた獣のように、首筋に歯を立てる。
 冷えきった肩を味わう私の髪を、天真の指が宥めるように梳いていく。
「立ったまま強引に食われてもいいけどさ。‥‥一応、初めてだし。柔らかい場所まで運ぶ気とか、ない?」
 呆れたような言葉とは裏腹に、火照った顔がクスクスと笑う。
 すまない‥‥‥。
 謝る言葉も不自由なまま丁寧に身体を抱えあげると、熱い頬が首筋に寄り添った。
「なんか言えよ」
 促されても、こんな時に伝えるべき言葉を何一つ持たない私は。
「‥‥‥‥天真‥‥」
 小さくその名を呼ぶことしかできずに。

 お前の鼓動に支配されるのは、この吹雪のせいだろう。
 全てが閉ざされた空間だから‥‥きっと。
「受け止めてやるよ、お前の全部」
 屈託ない笑顔に、到底勝てそうな気がしなかった。


 →2

[頼天]心配無用

 今日も良い天気だなーっ。
 なんて伸びをして、つい癖で頼久の姿を探す。
 いるわけないか。昨日は怨霊騒ぎだかなんだかで、夜通し警護にあたってたらしーし‥‥本当、アイツっていつ寝てんだか。ったく、素っ気なく「心配無用だ」とか言う前に、心配させないような生活をしろってんだ。

「天、真‥‥‥‥」

 そんなだから、低く聞こえた唸り声が自分の名前だとは、思ってもみなかった。
 ただ何かの気配を感じて振り返る。
「頼久ぁ?」
 ギョッとしたのは言うまでもない。
 一昨日の晩、一緒に夜勤をやったよな?昨日は休めっても聞かないで、通常通り働いてたよな?その後で怨霊騒ぎだとか、いい加減にしろってくらいなのに。
「て‥‥ん、ま」
 うわああああ。その、ゾンビみたいな歩き方やめろ〜〜っ。
 ってゆーか目が尋常じゃねぇ。
 突き飛ばそうにも、今の状態考えると振り払う気にもなんねぇけど、なんだ、なんなんだ、なにする気だ頼久ーっ。
 身を固くして固まった俺に、頼久が覆い被さる。
 そういう展開かよ‥‥っ。
 一瞬、あらぬことを考えて、それはそれでもとかワケのワカンネー覚悟をした俺に、覆い被さった頼久は。


 緊張の糸が切れたように、爆睡しやがった‥‥‥。


 なんだコレ。何の冗談だってゆーか寝るなら布団で寝ろーっ!!
 こんな重いの運べるかよっ。
 語弊はあるが、すっかり押し倒された状態で、土の上に座り込む。
 あ〜あ、ドロドロ。
 あとで俺の着物、洗濯させてやるからな。
 ブツブツと一人ごちながら、髪を梳いて疲れきった顔を見る。
 こりゃ、ほとんど魂抜けてんな。
 不憫なような気もしたけど、自業自得だ。

 しかたねぇ。
 俺の腕に辿り着いたことだけ、あとで褒めてやろ‥‥。

[イノ頼]こんな雪の日は 2

待ち合わせに遅れたことなどなかった。
こんな日に限って、電話は通じず。
なんとか外へと飛び出した私の目に飛び込んできたのは、真っ白の雪景色。
イノリ‥‥!!
どうか先に帰っていてくれと願う心と、それでも私を待っていてくれたならという期待と‥‥そうだ、ここ十日も顔を見ていない。
お前に会いたくて気が触れそうな私は、身が空く確約もないというのに、こんな約束をして。挙げ句、お前を裏切って。
どうか‥‥罵る一言でいい。
お前の声を、聞かせてくれないか。

目が合った途端、怒りに燃えるようにぶつかって消えていったイノリが‥‥愛しくて、恋しくて。フラフラとその家に辿り着いた。
合わせる顔など無い。
謝る術もない。
ただ、その気配を感じられる場所に立ちたかった。‥‥それだけだ。

「頼久‥‥‥オマエ、なにやってんだよ、こんなとこで!!」
「‥‥‥すまなかった、イノリ‥‥」
 温かい声が心を溶かしていく。
「なんでオマエが謝んだよっ。こんなに冷えて‥‥バカ‥‥」
 泣き出しそうな肩を、抱き寄せて良いのかと悩みながら。
 手を引かれるままに風呂場へと招かれ。
「オレはもう入ったから。その冷たい手足が溶けたら出てこい。その後で話そう?」
 困ったように微笑む。
「イノリ‥‥?」
「言うこときいたら、なんでも許すから」
 優しさが指の先まで沁み渡り、凍えた心を溶かしていく。

 堪えきれずその身を掻き抱いた私を笑うように、口付けが下りて。
「んんんっっ」
 乱雑に服が剥ぎ取られる。
 そんな、何をっ‥‥‥‥イノリ!?
 押されるままに後ずさると、踵が湯船に当たって、ようやく意図を知った。
 心配性の、恋人。
「とにかく温まれ。そんな冷たい身体を抱いてたら、オレが寒いだろ」
 普段は望んでもなかなか手を出さぬくせにと、笑いを噛み殺す。
「待っていてくれるか」
 照れるのかと決めつけていた私を、悪戯な瞳が捕らえる
「ん。‥‥和室にいるから」
 まさか。
 赤くなった私に気付かず遠ざかる足音を聞く。

 どうやら、そういう心づもりらしい。
 それは喜ぶべきことだが‥‥さて、どうしたものか。
 いつものように服をかっちり着付けて出ては、その気がないものと思うだろうか。‥‥かといって、何も着けずに出ていくのは‥‥あまりにも、はしたない。
 私を待つというイノリに、どう応えるべきなのか。
 イノリがその気であることが嬉しいように、私が求めればアレは喜ぶだろう。
 しかし‥‥どんな顔で‥‥。

 長く考えているうちに、頭がやられていた。
 立ち上がることが困難なほど。
「わあぁ〜っ」
 様子を伺いに来たイノリが、泣きそうな顔で飛び込んでくる。
「イ‥‥ノリ‥‥、‥‥その‥‥‥‥」
 何を伝えればいいのかとウロウロ言葉を探す私に、何かを誤解したようで。
「いいからっ、無理に抱いたりしないからぁっ」
 もしや‥‥‥これまで、お前が惑っていたのは、私を気遣ってのことだったのか?
 ふっ。
 困ったものだ。お前は、私を幾つだと思っているのか。
「これで許してやるよ」
 額に落ちた唇を、愛しく思いながら‥‥。
 足りない。
「‥‥イノリ」
「うん?」
 ザ‥‥ッと湯を払うように立ち上がって、その目に私を晒す。
「和室に行くか。それとも‥‥ここで、構わないか」
 あからさまな誘いに頬を染めるくせに、目尻が欲情に染まる。
「頼久、誘ってる?」
「ああ」
「そっか」
 パーッと明るくなった顔が、それは幸せそうに微笑んだ。

「嬉しい。なんか俺、お前のこと、今までよりもっと好きになったぜ!」

[頼友]月光の君

 貴方は私の憧れ。麗しの君。

 それは貴方が、まだ私に名があることさえ知らなかった頃。
 宴の席を抜け出し、上弦の月に目を細めていた貴族に目を奪われた。
 橘少将殿。
 昼の貴方を知るものがその姿に気付くことなどあろうかと感ずるほど、儚く脆くある立ち姿に、息を吐くこともままならなかった。
 世を儚むのではなく。
 己を愁うのでもなく。
 その姿は、まるで月光そのものであるかのように。

 手を伸べれば消えてしまう気がした。

 いつまでそうしていたか。
 ザワザワと人の動く気配がして、貴方は私に気付くこともなく人としての姿をまとい、現の世界へと交じり合った。

 忘れることのない出逢いを秘めたまま、私は天の青龍となり、貴方は地の白虎となり。
 親しげに会話を交わすまでになれど。
 仄暗い炎は消えることなく‥‥しだいに激しさを増していった。
「暖めてくれるかい」
「お望みとあらば、喜んで」
 こうして身体を重ねる仲になった今も、この恋を貴方が知ることはない。
「‥‥っあ、頼久」
 その身を壊せとばかり激しく乞う貴方を、優しく抱くことをこそ、叶わぬ望みとなりはしても。
「また、そのように顔を隠さず‥‥取り繕うことなど、もう何もございませぬでしょう。良い声でお啼きになればよろしいかと」
 手中に堕ちた、光。
「あ‥‥あ、あ‥‥‥もっと、酷く‥‥っ」
「御心のままに」
 儚い月光。
 貴方が真に求めるものは‥‥私ではありますまい。

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