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[頼天]吹雪の熱 1

元ネタはお友達のSS。初めの方の台詞は殆どもらってます。天真サイドだったから頼久サイド書いてみた。で。間違ってエロまで突入したとか。ダメな子でスミマセン(土下座ゴリゴリ〜〜)


  
「うー‥‥‥‥‥寒い‥‥寒すぎる‥‥ヤバイ‥‥」
 ほらまた、そんな無防備な。
「‥‥天真。うるさい」
「あ‥‥‥?」
「寒いのは分かるが、そんなにぶつぶつ言うことはないだろう」
「俺、寒い言ってた?」
「‥‥‥は?」
 あきれて、二の句が継げない。
 念仏のように唱えていたソレを、無意識と言うか‥‥まったく、お前という奴は。
「お前、寒くないのか?」
「寒くないことはないが…」
 むしろ暑いのだと告げれば、熱でもあるのかと騒ぐだろうか。
 こんな時、傍に友雅殿がいれば、酷く意地の悪い病名を付けてくださるものだろうが‥‥いや、私とのこんなやりとりでさえ素直にむくれる天真になど、とうてい聞かせられるものではないな。
「こら、そんな顔をするな。もうすぐ交代の時間だ」
 いつからこんなに囚われてしまったのか。
 慣れぬ寒さに震えてなお凛と伸びる背を見つめる。
 不機嫌な横顔さえ、ただ愛しくて。
 さもすればフラフラと引き寄せられそうになる己を、嘲笑う。
「‥‥あとで、温めてやる」
 言葉の意味を量りかねて時を止めた、無防備な額に、唇を寄せる。
 数瞬を置いて、湯気を噴きそうに温度を上げた姿。
 今、何を思った?
 茶化しもせず抵抗もせず、ただ熱を上げるのか。
 こんな獣のような男を、野放しに‥‥?
 己の中で暴れるものを必死で抑えながら、歯軋りをする。
 長い長い長い数瞬。
 交代の者に早口で引継を済ませ、天真の手を取ると。
「なんだ頼久、お前も寒かったのか」
 などと呑気に笑いかける。‥‥頬を僅かに歪ませて。
「寒くなどない」
 噛みしめた歯の隙間から言を紡ぐと、生まれたての雛のように頼りなげな視線が、まっすぐ向かってきた。
 反らすことなど不可能だろう。
 堪えられる気がしない。これ以上、どうあっても。
 限界と、思う。
 はぐらかすことなど‥‥できるはずも。

 お前の声も姿も何もかもを、全ての者から隠すように、私以外の誰にも触れぬように、人の住まぬ離れまで連れ歩く。
「頼久‥‥‥」
 天真は、この強引な流れに逆らうどころか、力を注ぐように手を握りしめた。

 後ろ手に戸を閉めた私と、そこに重い錠をかけた天真と。
 願いは、一つ所にあったのだろうか‥‥。

 飢えた獣のように、首筋に歯を立てる。
 冷えきった肩を味わう私の髪を、天真の指が宥めるように梳いていく。
「立ったまま強引に食われてもいいけどさ。‥‥一応、初めてだし。柔らかい場所まで運ぶ気とか、ない?」
 呆れたような言葉とは裏腹に、火照った顔がクスクスと笑う。
 すまない‥‥‥。
 謝る言葉も不自由なまま丁寧に身体を抱えあげると、熱い頬が首筋に寄り添った。
「なんか言えよ」
 促されても、こんな時に伝えるべき言葉を何一つ持たない私は。
「‥‥‥‥天真‥‥」
 小さくその名を呼ぶことしかできずに。

 お前の鼓動に支配されるのは、この吹雪のせいだろう。
 全てが閉ざされた空間だから‥‥きっと。
「受け止めてやるよ、お前の全部」
 屈託ない笑顔に、到底勝てそうな気がしなかった。


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