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[頼天]吹雪の熱 3

 遠い意識の向こうで、低い子守歌のようなものが聞こえた。
 それが頼久の声だと気付いた時、声が泣いていることにも気付いて、なんだか悲しくなる。
 ‥‥‥頼久?
 泣くなとは言わないけどさ、せめて俺が起きるまで待ってろよ。たぶんその頃には涙を消して、当然のように大人びた顔をするお前が憎らしい。
「‥‥‥‥‥兄上‥‥」
 微かに聞こえたソレが全ての元凶なのだとは、この時全く気付かなかった。


 奇妙なほどの温もりに守られていた。
 少し汗ばむくらいの温かさに、今が冬だってことも、今日は最高に吹雪いてるってことも忘れて、気持ちよく身を捩る。
「起きたか」
 え、わっ、なに頼久、裸!?ってゆーか俺も裸っ!?

 あ。いや。
 そうだ確か、そういうことになってたかもしれない。

 回らない頭でジッと見つめると、穏やかな目がそこにあった。
 そう。こんな状況で。
 穏やかな!?
「頼久、お前どーしてこんなっ!」
 すましたってダメだ、腰に当たってるソレが元気すぎんだよっっ。
 ギュッと握ると、ふざけて笑うように身を引いた。
「天真が服を着ければ、治まるのではないか?」
 俺のせいだとか言うか。
「今出したばかりだろーが」
「‥‥‥‥‥ん」
 いっそ素直に信じれば良かったとさえ思う。
 その困り切った顔を知るくらいなら。
「もしかして‥‥‥足りない?」
 そういえば俺だけムチャクチャ搾り取られた気がするぞ。
 まったく、どんな身体してんだか。
「心は足りた。だから‥‥」
「身体は足りてないってことだろ?」
 仕方がない‥‥と下へ動いて、それを口に含む。
「天真っ」
 黙ってろ。こんなの抱えたまま、あんな顔で笑ってんじゃねーよ。
「あ、あ‥‥ク‥‥‥や‥っ」
 初めてでも、なんとなく解る。
 頼久の反応が素直だからかもしれない。きつく吸い上げると、全身を強張らせて堪える。唇で大きく扱くと、息を吸って身悶える。
 裏の筋とか玉とか悪戯でもするような気分で弄ぶと、その度に息とも声とも付かないソレで反応する。そんな頼久に感じて悶える自分が、むしろヤバイ。
「天真、そんな‥‥っ」
 頭をチロチロと舐めたまま、両手で包みこむように扱いてやると、泣きながら達した。

 結構ものすごい量が出たんですけど?

 なぜ元気。
 コレが噂の『絶倫』ってやつか!?
 いや。
 さすがに、変、だろ。
「だから‥‥よせと言ったのに‥‥」
 バツが悪そうに呟く頼久は、そんな自分に慣れているようだ。
 てことは、俺がどーこーじゃねぇよな?
「よくワカンネーけど‥‥辛くないのか?」
「つらい??」
 だってほら、いつまでもスッキリしないで燻ってる状態なわけだし。
 俺じゃ満足させられないのか‥‥。
「そんな顔をするな。私はお前がいれば、他に何も欲しない」
 掛け値なしに幸せそうな頼久を見てると、それでいいのかなと思う。
 だけど‥‥‥どこか意地になる自分もいた。
「頼久。まだ俺のこと、抱きたいか?」
「天真っ!?」
「正直に言え。俺は‥‥お前になら、それもいい」
 この際なんでもアリだ。
 ここまできて怖いものもないだろ。
 そういうのは、ゆっくりでいいと思ってた。だけど今それが必要なら、続けても構わないぜ?
「お前が壊れてしまう」
「バカにすんな」
 若いって強い。
 まだまだ多少の無理なら利くぜ?
「それとも俺なんか抱きたくないか」
「っっ、そんなわけが」
「ならいーだろ」
 否定するわけない。頼久は喉から手が出るほど、この身体を欲しがってる。
「生意気言ったこと後悔させてくれよ?」
「‥‥‥まったくだ」


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