記事一覧

[頼鷹]白と黒

なんかホストっぽい絵だったから、鷹通がこんな、まさか!!みたいな(笑)感じで、勝手に記憶喪失にさせました。あっはっは。そんでたぶん頼久は「手荒な手段を使ってでも、取り戻す」みたいな使命感なんじゃないかと、そーとーワケワカンナイようなパラレルです。妄想の自己完結?(ゲラゲラ)


「困りましたね。‥‥愉しいですか?」
 どれほど汚しても追い詰めても、余裕の笑みは壊れることがない。
 それは‥‥貴方が。
 もう既に、壊れているから?

 いや、それでは困る。
 こんな茶番を演じるために、こんな所まで足を運んだわけではない。
「一緒に来ていただけますか?」
「何のためでしょう」

「貴方のために。‥‥貴方の失った記憶を、私は握っています」

 それを聞いた貴方は一気に青ざめて、逃げるように身を捩った。
「いりません。捨てようとして捨てた記憶なのは、ぼんやりと覚えているのです。‥‥私には、必要のないものだと」
「思い出されたのですか!?」
「いえ。何度か思い出そうとするたびに、私の心が悲鳴をあげたものですから‥‥どうか知っているのなら、そして私を救おうとしてくださるのなら、捨ておいてはいただけませんか」
 項垂れた貴方が悲しくて、その心に私がないのが悔しくて。
 刻みつけるように、抱いた。
 貴方は抵抗する素振りもなく、何かに縋るように私を求めてくる。

 その時、ふと。
 私の中の黒いものが蠢いたのが解った。

 貴方は神子殿を忘れようと必死だ。
 私は‥‥その隙間に、この身を割り入れることが、できる‥‥?
「名前。ア‥‥名前、を‥‥‥ん、あふ‥っ」
「頼久と申します」
「頼久殿‥‥?」
「殿は余計です。ただ、頼久と」
「ならば私のことも、んあ‥っ‥‥鷹通、と」
 畏れ多いと辞退すべきだと、頭では解っていた。
 ただ‥‥。
「鷹、通」
 せめて貴方を抱く時だけ。
 せめて偽りの契りを結ぶ間だけは。
「頼久‥‥‥ぁあっ、よりひさぁ‥‥」

 私に罪があるのは存じ上げているのです。
 貴方が記憶を取り戻した時は、腹を切ることも厭わない。
 ただ、この胸に縋る貴方が愛しくて恋しくて、もう狂おしいばかりで。
 鷹通殿、お許しください。‥‥‥貴方を、愛しているのです。

[×頼久]飢餓感

 与えられる刺激。湧き上がる悦楽。
 激しく攻め立てられながら、朦朧とした意識の中で短い夢を見た。
『兄上‥‥』
 口走りそうになった名前を、苦く飲み下す。

 これが本音か。

 吐き捨てるように項垂れながら、身体は軽い絶頂を迎える。
 どうしてこれほどまでに男の身体が恋しいのかと‥‥女を愛せない身体なのかと諦めもした。
 違う。違うのだ‥‥私は、私は‥っ。

 あ な た に 愛 さ れ た か っ た の だ。

 溢れた涙を快楽のためと決めて、優しく抱き留める腕の中。
 前後も解らなくなるほど強烈な飢餓感に襲われる。
 何をしても届かない。
 疼き続けるこの身を持て余して、ただ生きていくのだ、これから先もずっと。
 貴方が与えてくれた命なれば、捨てること叶わず。
 欲に溺れて、命を繋いで。

 兄上。兄上。兄上。兄上‥‥っ。

 誰か私を、穢して。
 この傷みを忘れるためならば、どんな仕打ちにも耐えるから。
 どうか私を‥‥‥‥。

[友頼]ご褒美

「友雅殿‥‥」
「なんだい、頼久」
 どこまでも柔らかく見つめてくる瞳に、狂わされていく。
「私は‥‥」
 ああ、違う。私が貴方に狂いたいのだ。
「貴方が欲しい」
 全て捨て去って。
 捨ててはならないはずの、私を形取る全てを置いて。
「愛して‥‥‥ほしい」
 身分も立場も何もかも、この激情の許に投げ打って。
「上出来だ」
 パッと花咲くような笑みを浮かべて、その指で私を嬲る‥‥楽しげな貴方に声もなく流されて熱い息が上がる。
 ‥‥‥っっ。
 胸の突起を嬲られて息を詰めると、意地悪く「此処がいいのかい?」などと呟きながら、私の上に跨った。
「友雅殿、そのような‥‥ァッ」
「君は『このような』ことをしに来たのだよ。その年で一々怯えるものではない。可愛らしい、などと言われたいわけではないだろう」
 わかっている。わかっているけれど。
「ン‥‥ン‥‥‥‥クゥ‥ッ」
 言葉にならない。
 貴方の熱に煽られて、全身に火が灯るようだ。
「ンアァッ」
 得体の知れない感覚に怯えて貴方の足にしがみつくと、手を止めてニヤリと笑った。
「それとも奉仕する方が性に合っているのかい」
 なんでもいい。この感覚から逃げられるのならば。
 泣きながら何度も頷くと、哀れむように首を傾げた貴方に、優しく抱き留められた。

「まだ早いよ。一度は私の好きにさせなさい。それでも立っていられるようなら、一つずつ教えてあげるからね」

[友鷹]愛された痕

 派手にちりばめられた赤い痣。
 困ったものだと、また一つ溜息をつく。
 髪を束ねて装束に身を包んだ時に外に出る部分を、一つずつ白粉で隠している私。それを知らないわけもないくせに。
 私を試しているのですか。
 誰かに誇示しているのですか。
 恋は密かに。
 邪魔など入らぬよう、用心深く、密やかに。
 だから貴方が意図的に付けた恋の痕は、私以外の誰も知るべきではないのです。

 そんなことを呟きながら、秘密の痕を消していく指先が少し嬉しそうだと‥‥妙なことに気付いて、苦く溜息を吐いた。

[友鷹]囚われの身

 私は束縛されることを嫌っていたはずだと、記憶に確認を取る。
 どうしたことか。
 君に縛られて‥‥こんな鎖を用いるほどに狂ってしまった君に、この身を縛られて。
 どうやら私は悦んでいるようだ。

 私が欲しいのかい?

 構わないよ。
 君が望むだけ、君の中に痕を残してあげる。
 生かすも殺すも君次第。
 こんな鎖で縛らなくとも、私は既に君のモノだと納得できるまで。

 縛られていようか。


 子供の遊びだと自覚しながら、貴方に鎖をかける私。
 それを見つめて愉しげに笑う貴方。

 判っていらっしゃらないようですね、私は本気で貴方を‥‥。

 また、私は何を言っているのか。
 身勝手な想い。
 こんなものを抱えた所で、貴方にも私にも、この世の全てにとって何一つ建設的なことはないというのに。あれほど大人になりたいと願っていたはずの、あれほど世の役に立つ人間になりたいと願っていたはずの私が。
 ああ、もういい。
 貴方を失う恐怖に勝るものなど、何もないのだから。
「友雅殿‥‥‥」
「なんだい、鷹通」
「貴方は、私のものです」
「ああ、そうだよ。どうして泣くんだい?」
「泣いてなどおりません‥っ」
「これが涙でないとすると、先走りの露かな。‥‥私に欲情しているのだろう?」
「っ‥‥友雅、殿‥‥んっ」
「私を繋ぎ止めるには、鎖では足りない。君自身を贄に‥‥」
「ぅあ‥っ」

「鷹通。‥‥愛しているよ」

ページ移動