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[友頼]忠義にあらず

「‥‥‥また、貴方という人は」
 呆れたような冷たい視線で見つめながら、私の愛を試す恋人。
「すまないねぇ。ご期待通り、いつも君のことばかり考えているのだよ」
「不埒は許しますが、嘘は許しません。私のことなど顔を見た時以外、思い出しもしないでしょうに」
 これは頼久の本気なのだろう。
 残念なことに、君だけが君の価値を知らない。
「そういうことにしてあげても構わないがね」
 言葉を駆使して宥めても、どうせ君は信じやしない。
 ならばその身体に、証を刻もう。
 毎日少しずつ。幾年もの年月をかけて、私が君を想う証を。
 いつか気付いてくれるだろうか。
 君が必要以上に尊く想う男が、ただ一途に愛している人の価値を。
 他の何もいらない。
 君だけに、私を受け止めてほしいのだと‥‥ねぇ、頼久。
 そんなに冷たい瞳で、君自身を傷つけないで。


 言葉で語る愛の方が、よほど容易い。

[友鷹]融愛

「貴方を愛していますよ」
 柔らかな笑顔を浮かべて私を引き寄せる君に身を寄せながら『これは愛なのか』と自問する私を、君は笑うだろうか。
 この身に降りかかる不条理な状況を言葉を、私は一人で抱えて生きられるのだと信じていた。
 君が、私を弱くしたのだ。
 甘やかすことばかり上手な、私の恋人。独りであることに慣れきった心を許して身を寄せる君を想うたび、私の心は弱く脆いものに変わってしまう。‥‥だから君が悪いなどと、そんな馬鹿なことを言うつもりはないのだが。
「友雅殿、いらしてください‥‥」
 理由も何も知らず、それでも私の感情を受け入れようとする君の優しさに、身も蓋もなく甘えて、無体を働く私。それを嬉しそうに受け止める君。
 沈みこむ質量に涙を流しながら、それでも優しく微笑む君が愛しくて悔しくて‥‥つい、乱暴な扱いをする。御しがたい己を恨めしく思う私と、そんな私をこそ喜ぶ君と。
「ヒア‥‥ッ‥」
 めちゃくちゃにしてしまいたい。
 こんな私を愛したことを、君に後悔させたい。
 それでも愛していてほしい。
 小汚い本音など、崇高な君の愛情に打ちのめされて、消し飛んでしまう。
「ぅあ‥っ、友雅殿、友雅殿‥ぉ‥‥っ」
 苦しげに寄せられた眉が限界を語るのに、とても優しくしてやる気分にはなれず、さらに君を追い上げる。
 限界を超えた君は壊れたように痴態を晒して、あとでそんな自分を嫌悪するのだと知ってもなお。
 勝手な私は、そんな君に欲情する。
 惑うことなく私を欲する君が、私の情を煽る。

 愛と呼ぶにはあまりにも薄汚い執着。
 それでもいいと君が泣くなら、どこまでも堕ちてゆこう。

 愛しい人。君と共になら、地獄の底にも風雅な花が咲くのだろうね。

[友鷹]我慢できない

 漂う湯煙の中、少し荒い貴方の吐息と僅かな水音だけが響いていた。
「‥‥‥っ、鷹通‥‥」
 いつもより乱れている貴方に、私は酔いしれるばかりで。
 ただうっとりと、その痴態に溺れている。
「ん‥‥‥っう‥‥」
 困ったように首を振るくせに、私の頭に手を添えて、離れていかないように拘束する貴方が、愛しくてたまらない。
 愛しています。
 もっと私を欲してください。
 何も‥‥言えない。言葉を発する為の器官をすべて貴方の肉欲にふさがれて、出口を無くした感情が涙となって流れ落ちる。
 貴方に教え込まれた身体が、質量を求めて疼いているけれど。
 イラナイ。今はイラナイ。
 刺激に翻弄されて私というものを失ってしまう前に、貴方が溺れる姿が見たい‥‥‥見せて‥‥。

 貴方の全てを、私にください。

[友鷹]愛しき温もり

 パチンと火鉢が最後の一声をあげた。
「おや。そろそろ炭の世話をしてやらないと、本格的に冷え込みそうだよ」
「そのようですね」
 寒がりの恋人は、モソモソと私の夜着に潜り込んで幸せな溜息をつく。
「いいのかい?」
「困りますね。‥‥ですから寒さが苦手な私は、日が昇るまで自宅に帰ることができません。友雅殿が炭を切らしたからですよ?」
 またそんな、私にばかり優しいワガママを言う。寒さが増すごとに人恋しくなる、この心を知って。
「おやおや、それは申し訳ない」
「ええ。こんなに冷える部屋では召し物を整えることすら難しいですから」
「それでは仕方がないね」
 白々しい会話をクスクスと笑いながら、体温を分け合う。

 冬は嫌いだった。
 寒さが深まる事に心は虚しさを増して‥‥寒空の下、毎日違う家に通っては、偽りの温もりを‥‥否、あれは温もりですらなかった。ただ気を紛らわすためだけに、夜を使い捨てていただけだ。
「友雅殿、もっと傍に寄せては頂けませんか。どうやら本格的に冷え込んできたようです」
「ふふ、強がりを言うからだよ」
 僅かに震える身を抱き寄せて包みこむ私の方が本当は、鷹通の愛に包まれているのだ。
 ・・・・あたたかい。
 胸の奥から痺れるような熱さが溢れて止まらない。

 今、はじめて、冬を嬉しく思う。

[イノ友]記憶喪失

元ネタはお友達のSS。友雅が記憶喪失になっちゃってます(頭でもぶつけたか?)
彼はイノリに勝てないと楽しいですねー。クックック。

心理描写が邪魔なので、台詞と効果音だけでまとめてみる遊びです。



「・・・・友雅、俺、記憶を取り戻す方法、知ってんだけど」
「友雅? それが私の名前なのかい?」
「そうだよ。・・・で、どうする? そのままでいいのか、お前」

「まあ‥‥かまわないと言えば、かまわないのだが」
「・・・・・・・・・そうか」
「否、しかし、あまり心地よいものでもないのだよ。君のその視線を受けているとね、胸の中で何かが跳ねるようで」

「友雅、俺、お前に戻ってきてもらいたいんだっ!!」

「‥‥‥? 君は、まさか」
「!?」
「私の家族か何かなのかい?」
「っっっ‥‥‥‥いや、もしかすると、そうなのかも」
「それでは信用しないわけにもいかないね。‥‥方法を教えてくれるかい、イノリ」
「じゃ‥‥何されても、怒るなよ‥‥?」
「ああ、覚悟しておこう」
 チュ
「ん‥‥んっ、友、雅ぁ‥‥っ」
「イノリ、そんなに泣かないで、イノリ‥‥」

「え」

「どうしたんだい?‥‥治療は、おしまい?」
「お前、今、俺の名前。まだ教えてないの、に」
「おや?そうだったかな」
「と も ま さ あああああああああああっ(//□//)」
 ギュッ
「許しておくれ。私は君の家族なのだろう?」
「もー知らねぇっ!!」
「そんなに照れるものではないよ」
 チュッ
「もう二度と君を忘れることなどないように、君の熱を、私に刻みつけておくれ」
 チュッ
「愛して、いるのだと‥‥ン、‥‥イノリ?」
 クチュ
「喋ってると舌噛むぜ。俺を本気にさせるなら‥‥」
「ん‥‥んんっ、イノリ‥‥っ!?」
「後悔するくらい熱いのを、お見舞いしてやらなきゃな?」

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