「貴方を愛していますよ」
柔らかな笑顔を浮かべて私を引き寄せる君に身を寄せながら『これは愛なのか』と自問する私を、君は笑うだろうか。
この身に降りかかる不条理な状況を言葉を、私は一人で抱えて生きられるのだと信じていた。
君が、私を弱くしたのだ。
甘やかすことばかり上手な、私の恋人。独りであることに慣れきった心を許して身を寄せる君を想うたび、私の心は弱く脆いものに変わってしまう。‥‥だから君が悪いなどと、そんな馬鹿なことを言うつもりはないのだが。
「友雅殿、いらしてください‥‥」
理由も何も知らず、それでも私の感情を受け入れようとする君の優しさに、身も蓋もなく甘えて、無体を働く私。それを嬉しそうに受け止める君。
沈みこむ質量に涙を流しながら、それでも優しく微笑む君が愛しくて悔しくて‥‥つい、乱暴な扱いをする。御しがたい己を恨めしく思う私と、そんな私をこそ喜ぶ君と。
「ヒア‥‥ッ‥」
めちゃくちゃにしてしまいたい。
こんな私を愛したことを、君に後悔させたい。
それでも愛していてほしい。
小汚い本音など、崇高な君の愛情に打ちのめされて、消し飛んでしまう。
「ぅあ‥っ、友雅殿、友雅殿‥ぉ‥‥っ」
苦しげに寄せられた眉が限界を語るのに、とても優しくしてやる気分にはなれず、さらに君を追い上げる。
限界を超えた君は壊れたように痴態を晒して、あとでそんな自分を嫌悪するのだと知ってもなお。
勝手な私は、そんな君に欲情する。
惑うことなく私を欲する君が、私の情を煽る。
愛と呼ぶにはあまりにも薄汚い執着。
それでもいいと君が泣くなら、どこまでも堕ちてゆこう。
愛しい人。君と共になら、地獄の底にも風雅な花が咲くのだろうね。