undercords


2010/12/28/(Tue)07:12 
※ほとんど一発書き日記で九弁小話2・17話(最終話)
  (一話目は これ(11月5日の日記)

[8/18 17:35pm ]

「ああ〜今日も譲くんのご飯は美味しそうで困るよ〜」
「困りますか?」
「困ります! つい食べすぎちゃうじゃないですか。ただでさえ、こっちに帰って来てから戦ったりしなくなってやばいのにー」
「おやおや、君をそんなに悩ませるなんて、譲くんもいけない人ですね」
 今日はみんなで夕飯食べませんか! と、望美に呼ばれた弁慶が、招待主である望美とそんな言葉をかわしつつ有川家のリビングに入ると、先に来ていた九郎の姿が見えた。
 が、彼の様子はいささか不可解。いつもだったらこんな時、名を呼びながら振り返ってくれるのにそれがない。
「九郎? どうかしましたか」
「綺麗だ」
 どうやら彼はテレビにくぎ付けになっているようだった。夕方のニュース番組の特集コーナーらしい。どこかの祭の話をしているようだけれど、
「花火大会ですか?」
「花火って言うと、景時が夏に見せてくれた、あれでしょうか」
「それです」
「あれなのか」
 こちらの会話も聞いてはいるけど、九郎はなおも、「昨年の映像」と書かれた報道に夢中になっている。確かに、綺麗だ。それを見た望美が顎に手をあてにやっと笑う。
「ははーん、夏の思い出作りってやつですね。九郎さんたらやっるー! 妹弟子として鼻が高いです」
「何の話だ?」
 けれど九郎は首を傾げ、弁慶はつい半笑いになってしまった。
「ふふっ、望美さん、九郎がそんなこと考えてる訳ないでしょう」
「分からないですよ、九郎さんだってやるときはやるんですよ」
「だから何の話だ!」
 ついには九郎は怒りだしてしまって、それについ、弁慶の望美は顔を見合わせて笑ってしまったけれど、放っておいてますます怒らせても面倒なので、話を進めることにした。
「で、九郎、それはどこでやるんですか?」
 と、唐突に振られた九郎は案の定、きょとんという顔をして、再びテレビに向き直って必死に記憶を手繰るように画面を凝視した。
「ええと…もう文字は消えてしまったか、確か伊豆だとか言っていた気がする」
 と、そこへ料理をもった譲がひょい、と顔をのぞかせる。
「なんの話ですか?」
「ああ、譲くん、お邪魔してます。実は……」
 と、挨拶しつつ弁慶と望美とで説明すると、譲は携帯を取り出して、慣れた手つきで操作しはじめた。
「伊豆で花火大会、調べてみますね……ああ、ありました。今週末ですよ」
 そしてあっという間に情報を探して、九郎たち三人に見せてくれた。
「伊豆なら日帰りもできますよ」
「そうなのか?」
 譲の言葉に、九郎がぴくり、と彼を見た。頷く譲に、少し惑いそわそわしているように見える。
 そもそもそんなに行きたかったのだろうか。弁慶からすれば正直、少し意外だ。だって今までそんな話を聞いたことはなかった。去年の景時の花火だって、すごいすごいとは言っていたけど、特段興味をしめしたようには思えなかったのに……それを懐かしんでいるのか、という割に花火だと(自分も)彼も気付かなかったし。
 それとも、まさか本当に思い出作り?
 内心、もしかしたら九郎以上に戸惑ってしまった弁慶をまるで代弁するように、否、きと偶然だけど望美が、
「もしかして二人で遠出するの、はじめてですか!?」
と、まるで自分の事のようにはしゃいで問う。というか、
「ああ、そうだな」
九郎まで二人で行くつもりなのかということに、更に面食らった。いや九郎は多分、望美の話の『遠出ははじめてですか』の方しか頭に入らなかったのだと、それだけだと思うのだけど。
「だったら行かないと!!ますます行かないと!!」
 その間に望美はますますヒートアップしている。九郎は今はまだ思いあぐねいている。どうしたものかな、と、弁慶は思った。特に断る理由もないし、でも楽しそうなのは事実だし、どういうものなのかという好奇心もある。
「遠出なんか、今までもしょっちゅうしてるぞ……」
 という九郎の言葉も事実。けれど……、
と、弁慶が言葉を返そうとするより先に、九郎がくい、とこちらを見た。
「だがこういうのもたまにはいいか。行くか弁慶」
 そしてさも当然のように、しかも気軽に言うものだから。
 ……九郎にお任せしますよ、と、言おうとしていた弁慶の答えなんて、だったら既に決まっている。
「君がそう言うなら、行ってみましょうか」
「ああ!」
 返せば、九郎は即答した。その笑顔だけで、きっと楽しい一日になるのだろうな、と弁慶に予感させるには十分だった。


 日記代わりに日記で小話!のつもりがうっかり長々長引いてしまい結局年末近くになってしまいましたが、これで終わりです。1話目探してて気付いたんだけど2カ月もやってたんですね。
 もはや冬なのに真夏の話にお付き合いくださってありがとうございました!
 楽しみに読んでます、などなど暖かいコメントくださった方、すごく励みになった…割にぶつぶつ連載になっちゃってましたが、嬉しかったです。

 二人で馬鹿な話してるだけの九弁が書きたいなーと前から念願だったものの、実際書き始めてみたら延々弁慶がボケてるだけの話になっちゃった…のは九郎のキャラを壊しきれなかったというか、天然を生かしきれなかったせいなのかな。また今度、今度は二人で延々ボケたおしてるような話とか書いてみたいですって目標!

2010/12/27/(Mon)17:51 
 更新関連のお知らせ
 日記で書いてる小話は明日の朝にラスト書きます
 それと、前に書くとか書かないとか日記で喋ってた、迷宮設定の忘年会の話ですが、無理でしたごめんなさい、って一度は諦めたものの、全く別のものを思いついて書いてみたら書けちゃえそうなんで、29日中に更新します。オチも意味もないのはいつものことなんだけど、テンポ感を見失ってるのでかなりだるい仕上がりになってる…ってまだ書き終わってないけど! あと九弁度はかなり低いです(九郎があんまり出てこない)、それと飲み終わった後がメインの話なのでみんな別に酔っぱらってないです、っていうか酔いどれネタ2年連続は私じゃ無謀すぎる……ってことに気付くの遅すぎだけど
 たぶん平気だと思いたいんだけど、もし、更新もごめんなさい無理でした連絡もなく年越ししちゃってたら、その時はパソコン壊れたんだな…って思ってください。なんか最近……日々悪化してるきがする


 ところで先週書いてたあんず飴のちょっとした続きなんですが、ぶどう飴ってのはやっぱり存在して、巨峰ひとつぶ入ってるよー!って教えて貰ってしまいましたありがとうございます! 巨峰ひとつぶっていいな食べてみたいなー!! 自分が、苺杏林檎葡萄のラインナップの中ならいちばんぶどうが好きだからかもしれないけど、っていうかだって、巨峰だとお店の人、いちいち皮をむいてる…んですよねさすがに多分。その一手間に高級感を感じる(勝手に)  いちご飴って……自分で食べたことないのにいうのあれだけど、ヘタつきじゃなかったっけ?それとってないんかい!ってみんなが食べてるの見て思った気がするんだ。とか喋ってたら食べたくなってきた。冷えた水飴がカリパリっとしてるのがたまらないんだよねー!年末年始に隙があったら食べよう。

 前後しちゃいましたがぶどう飴情報の方、メリークリスマス!とかも含めてありがとうございました〜!
 勝手に日記のネタにしちゃってすみません楽しかったのでつい!

 そしていつも拍手もありがとうございます!

2010/12/24/(Fri) 
メリークリスマス! ……なのに夏休みの話しか書けなくたって悔しくなんかっ……くやっ……
毎年そうなんですが、クリスマスイブの朝になると、あクリスマスだーって実感して、なんにもしようと思わなかったことに寂しくなります
どこかでクリスマス更新されてたらいいな!ってわくわくしながら過ごすからいい
あと迷宮のクリスマスイベント思い出してにやにやしてすごすからいい!
迷宮クリスマスは将臣くんとリズ先生のイベントが好きだよー 好きです
ヒノエも好きだけど大好きだけどなんかあれはクリスマスイベントとして好きって言うのとはちょっと違うような気がしてる
弁慶もすごい大好きなんだけどあれはクリスマスどうこう以前に迷宮弁慶が好きすぎるって気がしてる
銀髪も好きなんだけどあれは別格すぎてよくわからない
なによりみんなでパーティーしてるあのスチルが好きです


 ところでこの前日記小話に、杏飴、って食べ物を出してみたんですが、それはじめて聞きましたー!ってお言葉をいただいたので、調べる…ってほどじゃないけど、wiki見てみたら、東日本で主に見られる食べ物なんだそうですね
 私関東出身なんですが、小さい頃、夏祭りとか、あと月に1回くらいかな、通学路の途中で売ってたりしてたので、きっと有名なんだろうと思って軽率に出してみちゃってました。
 西日本だとりんご飴とかになっているらしい。それにもびっくりしました。あれ、私りんご飴も知ってるんだよな……りんご飴は見た目がすっごい可愛いんだけど、食べ終わるまでにちょっと疲れるよね(笑)
 今住んでるところはもっぱらいちご飴です。
 あとその他バリエーションとして、缶詰のみかんとパインのがあったり、それとぶどう飴ってのもあるらしいですね。ぶどう飴ははじめて聞いた。巨峰使ってるのかな。なんか豪華だな。
 この手の全国各地の「それ知らないよ〜!」っていうお話聞くのが大好きです。インターネットの醍醐味だと思うの。 

 それを踏まえてってわけじゃないけど、今住んでるあたり毎年クリスマスイブにどっさり雪が降ってホワイトクリスマス///って次元を通りこしてうんざりする感じになるんですが、今年も順調にそんな感じになりそうです
 なんにせよ九弁弁ヒノ含めてよいクリスマスをおすごしくださいー!

長文の下になっちゃいましたがいただいたコメントにお返事です。
21日の夜の方
 遅くなってしまいましたが、感想ありがとうございます〜! 苦手なんで普段あまりやらないんですが、素敵な雰囲気たっぷりな文章で書きたいなー!って思って書いてみたのでキュンキュンしていただけて嬉しいです〜!! あでも夏の匂いがするような、って勿体なさすぎる感想までいただいてしまって思ったんですが、きっと素敵な想像力でカバーして読んでいただけたおかげ、っていうのが大きいんだろうなとも思います。とはいえ楽しく読んでいただけて、萌えのお手伝いになったのでしたらすごく嬉しいです!ありがとうございます!
 ところでいただいたコメント拝見してて、ぜひ迷宮の夏バージョン、というか、夏にもう一回みんなで時空跳躍しちゃうゲーム出ればいいのに!皆で浴衣着ちゃえばいいのに!と思ってしまいました。元々和服な人たちですけど、みんな変な服(笑)だったり厚着だったりなので、きっとまた新鮮に違いないですよね〜!
 最後に、先に触れちゃいましたが杏飴についてもありがとうございました。やっぱり楽しかったです。


拍手くださった方もありがとうございました!
日記で今書いてるあれは次で終わりなんですが、その後の予定がまだ未定で……今日中になにかしら目途がつけばいいなと思ってるけど思い続けて一週間来ちゃったからどうなるか自分でも分からない

2010/12/24/(Fri)07:23 
※ほとんど一発書き日記で九弁小話2・16話目

[8/22 05:45am ]

「夜に電話するなと言うのは分からなくはないような気がする、だがこの時間に何故電話して怒られるんだ? 目覚ましにもなって丁度いいと思うのに」
「さあ、なにか余程間でも悪かったんでしょうか」
「なんにせよ、助かったな」
「そうですね」
 と、不可解さは残りつつも、なんのかんの道を調べてくれた将臣のお陰で二人は無事に駅まで辿りついた。そして無事に電車に乗ることができた。
 通勤の時間にはまだ早いし、今日は日曜日。だからだろうか、東京行きだというのに車両はガラガラで、二人は並んで座ることができたし、目の前に大きくとられた窓から景色が良く見えた。昨日と逆方向に景色が過ぎてゆく。それはまるで時を巻き戻してゆくよう。
「なんだか不思議かな」
 他愛のない話の途中で、ふと弁慶が口にした。
「もうすぐ家に、日常に戻ってゆくんですね」
 聞いた九郎は難しい顔をした。
「……俺からすれば、未だになにが日常なのかすら良く分からん」
 聞いた弁慶はいささか目を丸くした。けれどすぐにふふっ、と、口元に手をあて楽しそうに笑った。
 九郎の言葉はもっともだ。考えてみれば、九郎も弁慶も、ずっと流転の連続だった。こんな風にずっと旅ばかりしていた気がする。けれどあまりそういう気がしなかったのは、きっと、いつだって。
「ますます不思議な気がする」
 更に笑みを零す弁慶に、隣の九郎は相変わらず意味が分からんと言わんばかりに眉をひそめていた。

 どんどんと電車に人が増えてきて、人で溢れ返ってきたあたりで乗り換えのために二人は一旦電車を降りた。乗りなおした車両はさっきまでのよりは若干マシだったし、わずかな時間であったけど窮屈さは感じながら、最寄駅まで辿りつく事ができた。
「ふう、戻ってきましたね」
 帰るまでが花火大会ですよ!と、出る前に望美が言っていた気がするが、見知った風景に安堵してしまった九郎と弁慶は、すっかり呑気に見慣れた道をふわふわと歩く。
「ここまでこれたのも将臣のお陰だな」
「ええ。帰ったらお礼を言わないと」
「そうだな……。あっ」
 唐突に、九郎が立ち止まって声をあげた。朝のまだ静かな住宅街にちょっと響いた。
「どうしました?」
「土産を買ってくるのをすっかり忘れていた」
「ああ……そういえば」
 普段世話になっている分、こういう時にしっかりと返さなければ、と、行きには散々に喋っていたというのに、すっかりと抜け落ちていた。もっとも、覚えていたとして、何事もなく終電に乗れていたとしても、あの時間に空いている店などほとんどなかったからどのみち買えなかった気がする。次は行きに買わなければならないな、と、いささか悔しく思いながら、
「まあ、すぎたことですから仕方ないですが、今回は、お土産話で、ということで許してもらいましょうか」
と、弁慶は開き直ることにした。……それでおそらく一番迷惑をかけた将臣が喜ぶかは別として。代わりに明日にでもこの前できたばかりの和菓子屋でなにか物色してくるとしよう、と、内心思いつつ、
「君が今回の出来事を望美さんたちにどう話すのかも興味がありますしね」
微笑むと、何故か九郎は少し面食らった顔をした後、顔を赤くして照れた。それを隠すように歩き出した。なにかそんなに慌てるような事があっただろうか? 思わず噴き出さずにいられなかった。
「笑うな!」
「だって可笑しくて」
「うっ、うるさい!!」
 くすくす笑っている間にも、歩みは進んでいく。もうすぐ家だ。
 長かったような、短かったような時間だった。
「……あいつらへは今度、なにか旨そうなものでも探してくるとしよう」
「ええ。これでまた君と出かける口実ができた」
「そんなものなくてもどこにだって行けばいいだろう」
「……まあ、そうですね」
 言葉をかわす二人を朝の陽射しがじりじりと照らす。吹き抜ける風はすでに重くて、今日も暑くなりそうだ。多分、弁慶としたらこの後エアコンつけて眠ってしまう予定だから関係ないのかもしれないけれど、
だけど、寝るのが少し勿体ないかな、なんていう気もした。
「とりあえず」
 最後の曲がり角を曲がるとき、ふと九郎が言った。見れば当たり前のように目が合った。そして、
「楽しかったな」
「楽しかったですね」
当たり前のように笑った。



あとでここにお返事とか書きに来るって言ってたんですがあまりに長くなったので分割しました