2010/10/27/(Wed)06:38
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※一発書き九弁小話3日目(続いてます)
『君が好きです』 と、彼に告げたのは、十日ほど前のことだっただろうか。 弁慶は九郎が随分と前から好きだった。唐突に言ってしまったのだけれど、本当は彼に告げるつもりはなかった。 そんなことを言われても、九郎はどうしようもできない事を知っていたからだ。 案の定彼はうろたえた。最初は意味を捉えきれず、いつもみたいに笑っていたけれど、次第に青ざめていき、うろたえた。そのうち今度は顔が真っ赤に染まった。声は翻り、紡ぐ言葉は意味を形成しない。 やはり、言わなければよかった、と、弁慶は即座に後悔した。少なくとも彼は自分と同じ気持ちではなかったんだな、という事を、分かってはいたけれども目の当たりにしてしまったのは、さすがに堪えた。 それでも真面目できっぱりとした九郎のことだから、なにかしら返事をくれるのではないかと思っていたけれど……ちょうど鎌倉殿からの伝令が来てしまったので、結局なにもかもうやむやにされてしまった。 それ以降、九郎は何も言わない。確かに弁慶も、それまでと同じ風を装っていたからといって、あまりに普段通りだ。今だって、戸惑う事もなく弁慶の額に手を置いている。 君は忘れてしまったんでしょうね。 照れたりすることもなく、そんな風にいつも通りに振る舞うことが、あの九郎にできるとは思えなかった。だから、きっと、忘れてしまったんだ。あの告白の事も。 胸が詰まる。短くない付き合いの中、彼が自分に触れる機会など何度もあったというのに……一度口にしてしまったがゆえに、想いはとめどなく溢れてしまうのだろう、触れる九郎のてのひらが、弁慶には苦しかった。その温度さえもう分からぬほどに。 けれど、それでいいのかもしれない。そうして元通りになれば、弁慶が何もなかった顔をすることで、今までと同じになるのなら…… 感情はたゆたう。熱に浮かされぷかぷかと上下するようだ。感覚が消えてゆく。そしてただ、触れる九郎の感触だけが残った。揺るがぬ九郎がどれだけ歯がゆくとも、忌々しくとも、ただこれだけで、弁慶の鼓動は早まり、ひび割れそうな心が、繋がれてゆく。 だから、今だけは。 弁慶の意識はゆるゆると、もっと暖かなところへ沈んでいった。
よくわかんなくなってきた
先週くらいに、「弁慶の片想いする話あんまり書いてない」とかなんとか書いてたんですが、ものすごい気のせいだった、と、これ書いてて色々思いだしてきた。でも弁慶視点で九郎に片想いする話はそんなにあんまり書いてはいない気がする……また気のせいかもしれないけど
あと話の中であちこち「〜た」って言ってるけど過去形のつもりで使えてないです 過去形と現在形を使いこなすスキルがない
拍手も連日ありがとうございます〜!!!ありがとうございます。 | | |