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妄想散文

ついったーでRTされたら~で引き当てたお題を絵じゃなくて文で書いてみた。
途中から801展開しそうになったので強制終了。
あと、お題自体は傷口を舐めるセージ、ってな感じに、801要素はまったくなかった。



 すいっと持ち上げた腕の傷口に、弟は何の躊躇いもなく吸い付く。
 他者が見れば一種異様な光景だろう。
 しかし、自分はそれを欠片も異質に感じることもなく――それどころか、逆の立場であれば自分も弟と同じ事をすると確信をもって――その行為を受け入れていた。唾をつけておけば治ると言ったのは自分だが、まさか自分とは違い理知的て落ち着きがあると評判の弟が幼児のように迷信めいたそれを実行するとは思わなかった。
 そもそも、唾をつけておけば治ると言うのは、自分の唾をつけるという意味だ。
 けっして誰かに舐めさせるものではない。

「……兄上、包帯は持っておられますか?」

「俺が持っていると思うのか?」

「愚問でした」

 銀色の睫毛を伏せ、物憂げに思案する弟の顔を見下ろす。
 兄と弟とはいえ、自分達は双子の兄弟だ。
 寸分違わぬ同じ顔――のはずなのだが、心持弟の方が優しい面差しをしている気がしている。
 優しいというよりは、どこか女性的――

「……セージ、その紅はどうした?」

「紅……ですか?」

「唇が赤い――ああ、俺の血か」