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 致死量Lovers


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 ジリリと灯明の油と芯の焼ける音に、時間という存在を思い出し、書状から顔を上げ一息つく。政まつりごとは政宗の仕事とはいえ、簡単なものはここでまとめ、結論の出るものは出しておいた方がいい。
 かといって魂を詰めすぎたか……。机を照らすための灯明皿の油の減り具合が物語る。
 筆を置いて小十郎は背を反らし、肩をまわした。
 若衆の話からして昼間のあの件の後、政宗の癇癪は凄かったようだ。
 自らが撒いた種という意識は持っていたので、小十郎は大人しく、屋敷の中に宛がわれた部屋に篭っていた。仕事も溜まっていたので丁度よかった。
 大体、頭に血が上っている政宗は手がつけられる代物ではない。下手に触らず、怒りの鎮火を待つのがいい時もある。それに今回の癇癪は自分に対してのものだ。当り散らすといってもさほど酷くはなるまい。
……まぁ、今夜の伽を申し付けられた伽女には少し同情するが。
 左手で軽く右肩を揉みながら、長く溜息を吐く。

『触れろ。』

 焼きついた声と、心を見透かされていたような隻眼を思い出し、手が止まる。
 本当にあの人は無茶を言う。
 触れた瞬間崩れ去るものは理性と解っているはずだ。
──酷な事を申しつけ下さる……。
 家臣が……しかも傅役が主に手を出すなど、何処の世にあるというのか。それは政宗とて十分理解しているはず。だからこそ彼は表立って無茶は言ってこない。第一、その当たり前の掟を最初に破ったのは誰でもない自分である。これ以上はない。これ以上はあってはならない。
 なのに……
 流れとはいえ、つい最近又触れてしまった主君の肌──再び解き放ってしまった情は、欲と絡み、制御が難しい。
 身体の崩し方、足の投げ出す仕草、道に入った煙管捌き。唇から漏れ浮かぶ、煙草の白い煙。そこから覗かせる、心を見透かすような隻眼……
 机に両肘をつき、額を支える。
 間違った想いを抱く不幸は、どうすれば解消されるというのか?
 一瞬とて、自らの主君に欲情する家臣がどこにいる。まったく情けない。自分も伽女を呼んだ方が正解だったかと、又ため息が出てしまう。
 兎にも角にも重臣であること。それ以外に政宗に対して突き合わせる顔はありえないのだから、思い悩んでも仕方がない。
 不幸であれなんであれ、それは家臣として、重臣として乗り切るべき事柄なのだ。心の、深く見えない場所から浮かび上がるソレは、無理やりに重石をつけ、また奥底に沈めなければ話は進まない。
 何度目か解らない溜息を吐き、顔を上げる。すると廊下から荒々しい足音が響いて来た。
「?」
 夜遅くに何事かと障子に目をやる。こちらの離れは小十郎に宛がわれた管轄だ。自分に用のある者しか来ない。用立ての者かと考えたが、それならばなおのこと、深夜にこのような露骨な足音はたてない。
 政宗と並ぶやんちゃの成実か? そう予測しながら、障子の前で立ち止まった影を睨む。
「誰だ? 夜分に何用が」と口上を全てあげる前に、勢いよく障子が開く。
 そこに立っていたのは誰でもない、政宗だった。
「! 政宗様、如何致しましたか?」
 部屋に一歩入り、政宗は後ろ手で障子を閉める。その間も、じっと小十郎を凝視する姿に違和感を覚えた。
「政宗様?」
 慌ててこちらに来たようで、少し息が荒い。いや、何よりその姿だ。白い寝間着を着ているが少し乱れている。それだけではない。唇の端や鎖骨に紅の跡が見えるところからすれば、伽女と楽しんでいたように見受けられる。
 ここに来る要因が見当たらない。
「政宗様?」
 もう一度、優しく問いかけてみる。すると、世話しなく上下させていた胸を落ち着かせるため、深呼吸のような長い息を吐き、政宗は辛そうに眉を顰め、小十郎を見つめ直す。
「なにがございましたか? この小十郎に──」
 全てを言い終わる前に政宗は、ふらふらと小十郎の前に歩み寄ると、ぺたんと力が抜けたように座り、じっとこちらを凝視する。
 書机上の灯明の灯が、どこからともなく吹いてくる風に揺れ、政宗の表情を読みにくくしていた。
 陰影が交錯する。
 問いかけたい気持ちを抑えていると、するりと手が伸び、小十郎の頬についた傷を恐る恐ると撫でる。撫でた後、今度は輪郭を確かめるように触れ、鼻や唇をなぞる。
 まるで盲人が、人がそこにいることを確認するように、その人が誰なのか確かめるように、丁寧に、そしてやさしく触れてゆく。
「政宗様」
 その、儀式のような行為を邪魔しないように呟く。
 ピクリと一瞬その手が止まる。が、次に名前を呟いた唇を確認するよう、もう一度触れなおす。
 触れながら、長い、安堵の様な息を政宗は吐いた。
 とたん、ぱたりと手が落ち、緊張から解かれたのか肩から力が抜け、政宗は項垂れた。
「……すまん、突然。」
「いえ、」
 少し顔を上げ、照れくさ気に笑った政宗は、そのまま、子供が親に甘えるよう、小十郎の膝を枕に腰に抱きついた。
「政」
「もう少しだけ……な。」
 突然の事に困惑する小十郎だったが、何かを悪巧む様子もなく縋る政宗をただ受け止め、慰めるように背中を二・三度叩く。身体は大きくなろうと、怖い夢や雷に怯えた幼い頃の政宗と変わらぬ行動に、小十郎の唇には笑みが浮かぶ。
 愛しい愛しい我が主。それ以外他ならない。
 ただ先刻も確認したが、紅の跡やこの安っぽい白粉の香り……傍に誰かがいたにもかかわらずのこの怯えに合点がゆかない。
 大人……とまでは言い難いかもしれないが、子供ではない。餓えや渇きを凌ぐ術は知っているはずだ。
 それとも、彼の餓えや渇きは一生癒えないのだろうか?
 安心して甘える政宗背中を、子守唄の調子を刻むかのように柔らかく叩き続ける。すると心地が良いのか、一層擦り寄って、腰にしがみつく。
 この当主に一体何を考えていたのかと、情けなさ過ぎて笑みがこぼれる。
 まだ間違いで済む。まだ──
 後ろ髪から覗いたうなじに、ふと眼をやる。襟首から肩口にかけて目をやると、細く、蚯蚓腫れの鬱血が視界に飛び込んだ。
 その身を慰める相手はいる。彼には彼が選ぶものが。
 自分ではない、誰か……
 何気に、その細い傷跡に惹かれるように、触れるか触れないかの感触で小十郎はなぞる。
「──ンッ」
 ビクンと身体を震わし、不意に発せられた甘い悲鳴に、小十郎の身体は固まった。
 不意に触れられ、思わぬ自らの声に政宗は頬を染め、起き上がると、申し訳ないといわんばかりに首をすくめ、身を小さくする。
「すまん。その……」
 呷ったつもりではないと、上目でチラリと小十郎の表情を政宗は伺う。気分を害していないかと。
 害はしていない。害はしていないが……
 先刻まで腕の中にあった、少し汗ばんだ肌。その肌に纏わる白い布。呼吸のリズム。崩れた紅のついた唇。安い白粉で誤魔化されて入るが、自らの匂いが染み付いているはずの肌。
 全てが腕の中だった、目の前にあるその姿全て。
 自らの全て。
 限界だった。
「こじゅ──」
 なんの前ふりも無く引き寄せ、口付ける。深く深く。一瞬の戸惑いの後、ざらりとした舌が差し出され、彼の唾液と共に絡め取る。
「ふ……ぁ」
 いきなりの激しい口付けに、自然と逸れてしまう政宗の頭部をしっかりと右手で持ち、利き腕を背中に這わせ、腰の窪みに合わせると力任せに引き寄せた。
 引き寄せながら政宗の唇の端についていた紅を、舌で何度も丁寧に拭い去る。安い紅が政宗に触れていたことが面白くない。いや、それをいうなれば今まとっている白粉の匂いも面白くない。
 全て、すべて、スベテ。
「こじゅぅ……ろぅ?」
 息継ぎの合間に唱えられる自分の名前は、戸惑いと不安が混ざっていた。考えていなかった展開に、現状を受け入れるだけでいっぱいのようだ。
 腰に安定させていた手を、そのまま下げ、身体の形を確かめるよう尻と内太股をなぞると、ビクリと政宗の全身が震える。
 汗でしっとりと湿った肌。
 ここまでくれば後戻りは出来ない。さて、どう料理していこうかと、後ろから股を弄っていた手を前に移動させ、政宗の下肢にゆっくりと触れる。
 やはり伽女と遊んでいたのか、下帯はない。
「小十……郎ぅ」
 口付けももちろん止めない。彼の身体を煽る要因があればあるほどいい。
 色事など理性をどれだけ手放せるか。そして程よく現実を突きつけてやるか。乱れる彼がどれほど魅力的か味わった自分にとって、壊れる寸前の快楽をかけてゆきたい。
 長く口付けて熱を持った粘着質な音は、更に上気させてくれる。
 やさしく、政宗自身の形を確認すると、まだキスだけしかしていないというのに、半勃ちの状態で更に肥大しようと、ふるふると震えていた。
 これは又元気なものだと意地悪く笑い、小十郎は笠の上に軽く爪を立てる。
「──ッ! なに、してんだ、」
 悪戯に近い刺激に、背に回していた手で慌てて掃おうとするが、キスだけで意識を朦朧とさせられていた政宗の抵抗など、意味のないもの。
 むしろ、今から料理をしようとしている小十郎にとっては邪魔なもの。
 頭部を支えていた右手で、政宗の手首を素早く握り取り、横倒しに政宗を押し倒す。
「ツゥッッ」
 バタンと肩を床板に打ち付ける音。軽い衝撃と共に政宗の瞳に、ギラリと宿った光。少し現実に引き戻った目だ。
 それがいい。崩しがいがある。
 握っていた左手首を床板に押し付け、覆いかぶさりながら、脚を閉じにくくするため、じりじりと自分の脚を挟み込む。
「こんのぉ」
 引き戻されたおかげで意識する、組み敷かれるという微かな怒りと恐怖に、政宗は抵抗するが、抵抗していた右手も簡単に掴み取られ、床に打ち付けられるように押し付けられた。
 ハァハァと、呼吸で政宗の胸が上下する。この部屋にやってきた時と同じように。
「こうされに来たのではないのですか?」
「違う!」
 両腕を押さえられているというのに、起き上がらんばかりの勢いで否定する政宗に愛しさが増し、小十郎は優しく微笑み、又キスをする。
 政宗とて解っている。小十郎が、自分を嬲る対象として見ていない事ぐらい。それでも、切り替わりの激しさにいつも当惑し、翻弄されてしまう。
 嬲るような勢いで、愛おしさを訴えかけてくるこの男に。
「ふぅ──んっ──」
 唇も舌も、口内の何もかもを丁寧に絡め取る口付に、押さえつけていた政宗の腕の力がゆっくりと弱くなることを感じながら、挟んでいた脚で政宗の下肢を擦り、刺激すると、ビクンと大きく身体が震えた。
「こ、小十……ろぅ」
「はい?」
「抵抗……しないから、手、外せ」
 求められるキスから逃れつつ、たどたどしく願う。
「あぁ」と承諾のように小十郎はそう言うが、掴んでいた両手を素早く政宗の頭上に持ってゆき、両手首を一まとめにして片肘に体重をかけ、動けないよう腕を床に押し付ける。
「ちょ、待──! ばかっ、やっ」
 首に舌を這わせながら、空いた片手で政宗自身を丁寧に嬲る。
 付け根から芯に沿って爪の甲でなぞってやると、政宗が喉の浅いところで呼吸し始める。
「我慢されずとも、声を出されていいのですよ?」
「こ、のっ……あぁっ」
 先刻現実に少し引き戻したおかげで、プライドと羞恥が頭の隅に残っているようだ。
 手を使って縋る事もできず、その上声を押し殺してしまうと、発散が出来ずに苦痛になってしまう。
 ただしその苦痛は、“快楽”という名のもの。
 ほどほどに力の抜けた腕を確認し、手を自由にしてやると、政宗の下肢を嬲る手を何とかしようと伸ばされるが、胸に小さく立った突起を舌先で飴玉のように玩ばれ、どちらも拒絶する暇なく、快楽の狭間に突き落とされた。
 熱く嵩を増し始める政宗自身を、柔らかく、根元からゆっくりと小十郎は握ってゆく。
「あっ……んっ……もぅ、少し」
「もう少し?」
 聞き返す小十郎に、政宗は勢いよくそっぽを向く。
 解っている。じれったいのだ。刺激を与えられていないわけではない。かといって自分を自由にしてくれないことに、願望が口から漏れる。
 しかし残念ながら、手の中で果てさせようと思っていない小十郎は、優しく政宗自身を弄るだけで、決定的な動きに移つらず、耐え切れないといったように彼の下肢は、先走りの白濁でちょろちょろと小十郎の手を汚すのみ。
──さて、どうしてくれよう。
 赤く、唾液で艶やかかに光る突起を甘噛みした後、口の端に啄ばむような軽いキスをして、小十郎はゆっくりと立ち上がり、灯明の光が及ばない所へと去る。
「……こじゅうろう?」
 身体に種火を残されたまま背を向けられた政宗の声には、当惑と不安が混じる。しかし
声を出す以上の行動には移れなかった。
 芯は熱く対処できず、意識の端には快楽と理性が交差する。
 逃げるにしても半端な悦に身動きがとれず、自分で慰めるほど理性は飛んでいない。それを見越して焦らされていてたのだが。
「お待たせしました。」
 戻ってきた小十郎の手には小さな入れ物があった。
「それ……は」
「椿の鬢油ですよ」
「鬢の? ぅわっ!」
 坐した瞬間、両太股を持ち、自らの腰を政宗の股座に挟み込むと、あられもなく大っ広げられた彼の羞恥も尻目に、容器の蓋を開け、ゴソリと油をこそぎ取り小十郎はにこりと笑った。
「先日の一件で、政宗様が少々お辛そうに見えましたので、配慮でございます」
「配慮って……!」
 ここまで来て忘れていた現実に、慌てて身を起こそうと、後ろ手に立て肘をつくが、小十郎の指は簡単に政宗と繋がる処を探り、指の腹をぴたりと押し当てる。
 鬢油の冷たさに唾を呑んだと同時に、ずぶずぶと指が政宗の中へと進んだ。
「くぅぅ……ぁぁあっ」
 息が詰まり、悲鳴にも喘ぎにもならない声。だが侵入した小十郎の指は、内壁を丁寧に広げながらも、確実に政宗の良い処良い処を刺激する。
 ただの呼吸にすら掠れた声が混じり始め、政宗が必死にかみ殺すと、内部を攻めながら、その親指で、そそり勃つ政宗自身の根元を擦り摩る。
「やっ…ぅっ、ば、か……どっちかにし…ろ」
「良くないですか?」
 その言葉に一拍置いた後、政宗は無言でふるふると頭を振る。
「それはよかった」
 若々しく綺麗に割れた腹筋を摩りながら、内壁を柔らかくするよう、忙しなく攻め始める指の動きに、朦朧とし始める意識の中、政宗は気付いた。
「テメェ……それ、いきなり二本…入れやがってる、なぁっ」
「おや。今頃気付かれましたか。」
「なにが、配慮、だ」
 何とか肘に力を入れ、意地で政宗は上半身を起こそうとする。小十郎は手こそ差し伸べなかったが、内部の攻めを止め、起きるのを助けていた。
「こちらもそろそろ限界ですので」
「限……?」
 上半身を半分起こしたところで、小十郎の肩に手を回し、片手で少し支えられながら、やっとの思いで政宗は身を起こした。そうでもしなければ、体内に残っている指が微かに動く度刺激し、力がうまく入らない。
 甘い溜息をついた政宗は、自分のものとは思えなくヒクついている下肢に羞恥を覚え、頬染めると同時に、小十郎の着物からそそり勃って見えたソレに、血の気が引いた。
「無理! ぜってぇ無理!」
「何を今更。」
「そんなもの入れたら絶対死ぬ!」
「死にませんよ。それにこの間、俺のをしっかり咥えこんだのはアンタじゃないですか」
「咥え込んだって──ぅんっ」
“黙っていなさい”とばかりに指の攻めを再開され、政宗の抗議は喉の奥で掻き消える。
 指を締め付ける度合いで、小十郎は頃合を見計らう。思い出したように弱いところを撫でるたび、政宗はしがみつき、小十郎の肩に唇を埋めては声を押し殺す。
「声ぐらい出したらどうです?」
 ふるふると腕の中で震えるように政宗は首を振る。どうやら、そこに意地を張ることに決めたようだ。
 ならばと指を静かに引き抜き、自らのものではなく、指をもう一本増やした。
「んふぅっ……ぁぁぁあっ」
 締めながらもゆっくりと、自分の意思とは関係なく指を受け入れてゆく器官に、政宗は戸惑いよりも羞恥でいっぱいになり、それが更に感覚を煽っていゆく。
「だめ……もう、……ぁぅ」
 しがみつき、懇願する愛しい声。
 そんな事をされては、更に悦の中へと陥れたくなる。
 耳を甘噛みしながら、体内を攻めていない手で政宗の熱の孕んだそれを撫でてやった。
「だめっ……だ……ぁああっ!」
 トシャッと、白濁が、小十郎の手を汚す。何度かは理性を植えられたものの、限界だったらしい。
 政宗は肩に寄りかかり果てていた。
「これからが本番だってぇのに、あんた一人でイかれたら……困った人だ」
 政宗はしがみつき震える。いや、首を振っているのかもしれない。
「その行儀の悪さ、少し直していただかなくてはいけませんね」
 いつも聞いている声が、淫靡にこだまする。
 抜かれた指の後に押し当てられたそれに、コクリと政宗は息を呑む。それを合図として小十郎は膨れ上がった己を政宗の中へと押し入れた。
「ひぃぃ──ぁっ あぁっ」
 まだ慣れていない政宗は、その絶対量の異物に悲鳴を上げるが、どこか嬌声が混じっている事も、自ら感じていた。
 息も出来ない圧迫感と共に首筋を麻痺させるような快感。そしてゆっくりと差し入れられることを急く意識。入れられて快感を覚えているなど、悟られないようにと政宗はなるべく全てを押し殺そうとするが、小十郎にはお見通しだった。
「政宗様」
「な……ん?」
「具合がよさそうですね」
「──!! なに……を」
「少しずつ進める度、心地よく私を締め付けてくれます」
 カッと、政宗は自分の耳まで真っ赤に染まった事がわかった。
「この野ろ──」
「動かない方が」と小十郎が忠告する前に、ヘナリと政宗は肩口に崩れる。
 熱く作り上げられた内部は、下手に動いてしまうとイイ部分を不用意に刺激してしまう。
「挿入しただけで達してしまうのは、貴方も不本意でしょう?」
 否定したかったが、今果てたはずの自分のそれが、又熱を帯びて勃ち始めているのを見ると、否定し辛い。そして油と丁寧な前儀のおかげか、圧迫感はあるものの、ズブズブと下半身が小十郎の熱を咥え込む。
 荒い呼吸に嬌声が時々混じり、撫でるように前立腺に触れる小十郎のそれが歯がゆくなり始める。
 小十郎は甘い声と締め付けの快感に我慢しながら、やっと政宗の中へと挿入できた事に少しホッとする。何度考えなしに貪り喰いたくなったかわからない。根元まで荒く差し入れたい衝動を堪え、よくもったと思わず自分を褒めたくなった。
「こじゅぅろぅ……」
 不意に甘く名を呼ばれ、しがみつかれる。
 その声と表情は、意地の張った政宗ではなかった。
「どう…されま」

「好きに──して、いい」

 甘い声。潤んだ瞳。小刻みに震える肩。
──まだ手加減を考える余裕があったというのにこの人はっっ!
 荒々しく唇を奪いながら、差し込んだまま性急に押し倒す。
 政宗の言葉に甘え、小十郎は完全に理性を手放した。






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