「ショートコント!今日のサッカーを、ダイジェストで!」
「え・・・?」
思わず小さく声を漏らしてしまった。
なぜなら、彼らは他のコンビがやったネタをそのままパクって1試合のダイジェストに仕立て上げたからだ。
その中にはもちろん、ボビダリがやったコイントスや2組目のコンビがやったPKなんかも含まれている。
オリジナリティもヘッタクレもない。
観客は真新しい戦法に笑っているけど・・・
これはひどい・・・許せない・・・
ボビダリとあのコンビのネタで番組は盛り上がりを見せたままエンディングへ突入。
スタッフの「カット!」の声とともに番組が終了した。
「お疲れさまで〜す!」
スタッフの拍手と観客から拍手が起こる。
「・・・てめぇらいい加減にしろよ?!」
響き渡る村上くんの怒声に拍手が鳴り止んだ。
「はぁ?何?」
ボビダリの横にいたあのコンビのボケの方が鼻で笑うように聞き返す。
「卑怯じゃんか!こっちは正々堂々と勝負してんのに!」
温和そうに見える安岡くんも怒りを露わにしている。
「何ムキになってるワケぇ?そんなのウケたもん勝ちでしょ?」
「てっめぇ・・・!」
村上くんが殴りかかりそうになったところを食い止めたのは、さっきまで俺の隣にいたはずの酒井さんだった。
「やめろ!やめるんだ!」
「酒井さん、離してくれっ!」
「離さん!殴ってどうなる?!そんなつまらんことで夢をパーにしないでくれ!」
「さ・・・酒井さん・・・」
他のスタッフも仲介に入り、何とか乱闘寸前で収まったものの、現場はまだ殺伐とした空気が流れている。
「北山!」
「は、はいっ。」
酒井さんに呼ばれて、俺は3人の元へ駆け寄った。
「今楽屋に戻ったら元の木阿弥だ。タレントクローク(楽屋)の受付前にソファがあるから、こいつらを連れてそこでしばらく待っててくれ。」
「はいっ・・・わかりました・・・。」