PRINCE OF A CAR






今日、私はオングストロームの皆さんの所へ応援に行くところ。
レース場に着くと、相変わらずの熱い熱気とエンジン音が聞こえてくる。

チームの皆さんにすっかり感化された私は、ここに来るのが楽しみでしょうがない。
もちろん、晴れて恋人となったあの人に会えるということもあいまっているのかもしれない。





やっと、愛しいあの人に会える!
私は、はやる心を抑えつつオングストロームのピットへと向かう…。





「あのっ……!」




突然の声に振り返ると、レーシングスーツを着た見知らぬ男性がこちらに向かってやってきた。


「私…ですか?」

誰だろう?と小首をかしげると、その男性は笑顔を見せる。

「君、確かオングストロームを取材していた記者の人だよね?」

「えっ、は、はい…。2ヵ月ほどですが。」

「今日は、差し入れを持ってきたの?」

「はい。」

う〜ん?
誰かの知り合いなのかな?

「今度、俺とデートしてくれませんか?」

「……は?」

今、この人はなんて言った?
だって、今初めて会って話をしてるんだよね?

「ホント突然だよね。でも実は俺、君に一目惚れでしちゃってたんだ。
ずっと前から声をかけよう!かけよう!って思ってたんだよね。」

「そ、そんな事を言われましても…。」

「俺の事もっと知って欲しいし、君の事をもっと知り…」

そんな事言われても無理、困る。
これ以上話が進まぬうちに断ろうと思い男性の言葉を遮って

「あのっ…私お付き合いしてる人がいるんです。だから…。」

私はごめんなさい、とお辞儀する。







「でもさ、俺の事知ったらそいつより良いかもしれないでしょ?
とりあえず、ご飯食べ行くくらいいいでしょ?ね?」

私の言葉は伝わっていないのだろうか?
ちゃんと断ったつもりなのに…。

「ごめんなさい。そんな事できません。失礼します。」

私はこれ以上この場にとどまってもしょうがないと、
吐き捨てるようにそう言って、ピットに向かって歩き出そうとした。


ところが…


その男性に痛いくらいに腕を捕まれて、逃げ道をふさがれてしまった。

「じゃ、どんな事ならできる?メルアドだけでも教えて?そしたら今日のところは引き下がるよ。」

絶対イヤだ。
私は心からそう思った。
捕まれた腕を振りほどこうとするけれど、男の人の力には敵わない…。

「だから、お断りしてるじゃないですか。離してください。」

私がいくらキッとにらんでも、悠々とした態度でニコリと笑っている。

「俺、諦めが悪いんだ。」

ど、どどどどうしようっ!?
うわ〜ん…。怖い…。

「わ、私は好きな人を裏切る事なんて出来ませんっ!」

助けて〜…。





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