続く、平和な日々。
平和…そう呼ぶのは、絶対にオカシイ。
僕は地の朱雀で、あかねちゃんの八葉で、アクラムに囚われた人質なんだ。
++ ヒトジチLife 4 ++
逃げ出した蘭を探し出して、アクラムに差し出す。それが解放の条件になるんだと思う。……たぶんアクラムは知っているんだよね。逃げ出したんじゃなくて僕たちが彼女を保護していることを。泰明さんが施した結界の中に彼女はいて、鬼の人達からは手出しができない。
あの中に居る以上は、きっと心配ない。
判ってるから、あかねちゃんは無謀にもアクラムに会いに行ったんだ。
……バカだなって、思う。
あかねちゃんが囚われたら、泰明さんは容赦なく蘭を取引の駒として使うだろう。そんな簡単なことが判らない人じゃないのに…。判っていて、それでも。何の確信もなくても「なんとかなる」って動き出すのが、あの人の怖いところ。
無謀な行動を取っても必ず生き残る……その望みを叶える。それこそが『龍神の加護』なのかもしれない。
だけど、今度は、よく考えてね?
今の京に必要なのは、何?
僕を切り捨てられないようじゃ、守れるものも守れなくなる。
アクラムは、何を考えているのか。
僕を追い出すためだけに暴走して壊れていくセフルやシリンを面白そうに見つめながら、今日も僕が作ったご飯を食べてる。
何もせずに身を寄せている時、ほんの僅かに、くつろいだ表情を見せるようになった。
そして夜は……。
「んあ……ダメ…ぇ、アクラム…」
甘えきった声が空気に乗って、僕に返ってくる。
否定の言葉もコレじゃ意味がない。
何度も教えられて知ってしまった、自分の身体とアクラムの熱。
否定しても抵抗しても、同じ結果になることも……ううん、無理に抵抗すると、もっとキツク責められることも。
意地になって抵抗してみた時もある。
だけどそれは、もしかすると…僕の欲なのかもしれないって、本当はアクラムに酷くされたくて抗ったのかもしれないって思ったら、逆らう方が恥ずかしくて。
僕はただ、貴方にしがみつく。
上手に甘えられなくて、されるがままに任せていたら、僕の熱を解放させずに放り出して独りにしたりする。たった独りの部屋。自分で自分を慰めるのは……恥ずかしくて虚しくて、やるせなくて。
「もっと……もっと、シテ」
アクラムに快楽の塊を握られて、どうなってもいいような気持ちになる。
恥ずかしくていい。もっと触って……イかせて…、お願い。
「お前が今どんな顔をしているのか、見せてやろうか…」
差し出された鏡。
「や…だ…。見たく、ない」
「偽りない己の姿を知っておくがよいであろう?……鏡を取れ」
「んはぁ…ああっ……」
握っていたソレを、お菓子でも食べるみたいにパクッと口に入れて、わざと音を立ててしゃぶり始める。
「ひっ……は……ぅああっ」
強烈な刺激。
涙がポロポロ零れて、背中がビクビク痙攣して、陸に上がった魚みたいに腰が跳ねた。
上り詰めて…耳鳴りが上がってきた時。
フッと、刺激が止まる。
「……ぇ…………」
何も知らなかった頃なら、助かったと思ったかな。
今は、ここで止められることが、どれだけキツイか知ってる。
「鏡を取れ」
僕をいたぶって悦ぶアクラムは、残酷な子供みたい。
溜息をついて鏡を覗くと、僕の知らない僕が居た。
「目を反らさず、そのまま見ているがよい」
少し感覚の戻った場所を、さっきよりも乱暴に責め立てられる。
鏡の中の誰か。ああ……あの高い声は、君が出していたんだね。理性なんて微塵もない姿で啼いて、淫らに誘う顔、切なく乞う顔、悦びに震える顔。
恥ずかしいね。僕はこんなにも貴方を求めてる。
「もういいよ。僕は、貴方の顔が見たい」
こんな僕は知ってる。鏡を見なくても知ってる。
貴方に啼かされて、貴方に甘えて、グチャグチャになってる自分を、僕は知ってる。
「貴方を、ください…」
虚勢を張るほどの時間は、残されていない。
駆け引きをしている暇がない。
髪の一房、流れる血の一滴さえも、貴方を刻みつけるように。
永遠の別れが来ても、けして忘れないように…。
「お館様!!蘭を捕らえて参りました」
「何言ってんだよっ、コイツを捕まえたのはボクだぞっ」
誇らしげなシリンとセフルの声が響く。
「やっ、いやあああああっ」
先に連絡を受けていたアクラムは、その声に応えることもなく蘭に術を施して、また元の人形へと戻していった。
取り引きした形跡がない。セフルもシリンも無傷…。
「自分で出てきたのだな……愚かなことだ」
アクラムは本気で追ってはいなかった。それなら皆に任せておけば、京の結界を直して鬼の力を削いで、それからここに宣戦布告してくるはず。…何があったのか知らないけど、君が出てくる必要なんかなかったのに。
僕は、どうしようかな。
一瞬迷う。
迷って、アクラムの横顔を見つめる。
止めてくれたら…攫ってくれたら、どこにでも着いていくけど。
こっちを見ようとしない貴方が、無言のまま『立ち去れ』と命じている。…未来のない戦いと知っているのに、それでも貴方は自分の運命から逃げられない。貴方が「やめる」と決めれば、消えてなくなる運命なのに。戦いに勝ったからといって、貴方が得るものは何もないのに。
僕は、どうしようかな。
一瞬迷う。
迷いを振り切って、背を向ける。
僕は八葉だから、貴方との道は歩めない。
もしもそれが叶う時が来るとしたら、それは……全てを終わらせた時。
僕が貴方を倒すよ。
全力で戦って、貴方が受け入れたものを全て壊してやる。
「さよなら」
全部終わった時に貴方が生きてたら、僕も生きよう。
もう、迷いはなかった。
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最終決戦後にアクラムEDがあるなら、詩紋とのEDだってあるはずだ!・・・と決めつけるアタシは腐女子(笑)。機会があったら、ぜひ続きを書いてみたいもんだと思うんですが。ホホホ。 |