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[将譲]逢夢辻〜10〜

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【逢夢辻】〜10〜


 やばいなー。可愛いなー。
 無邪気に悩殺してくる譲の痴態が可愛すぎて感動しすぎて気持ち良すぎて、頭がついていかねぇ。
「なんだ俺‥‥‥泣いてんのか」
 滲んだ視界に笑いが込み上げる。
 これじゃどっちが『カワイイ』んだかわかんねーな。
 完全に飲まれてる自分が可笑しい。ほんと、俺はどんだけお前が好きなんだと。

 すっかり脱力した譲の身体を優しく寝かして、意識が無いのをいいことに思う存分ベタベタしてみる。なんだこの可愛い物体は。とても血が繋がってるとは思えねぇ。
 つい深くなりすぎたキスが、譲の眠りを妨げる。
「なに、して‥‥」
 いつもはあんなに寝起きのいい奴が、気怠そうに横を向いて‥‥いや、照れてんのか。
「キス」
 チュッチュッチュッと音を立てて顔中に触れまくると、呆れたように払いのける。
 それも照れ隠しだろ。
 不機嫌な振りして、口の端が笑ってるのに気付いてない。
「兄さんっ」
「‥‥‥もう一回」
 こういう時の自分は狡いなーとか思わなくもない。
 譲が甘やかせば甘やかすだけ、際限なく甘えちまう。めいっぱい猫撫で声出して擦り寄るように顔を寄せると、案の定。
「仕方ないな‥‥」
 なんて、嬉しそうに抱き寄せてくる。

 嬉しそうに?

 それはまあ、お前、なんか‥‥甘すぎないか?
 意外と悪くなかったとか?
 いや、譲は‥‥‥‥自分が『欲しい』なんて思った時点で、恥ずかしくなって突っぱねてくる。そういう奴だろ。
 そっか‥‥。
「欲しいんだろ?」
 呆れるように笑った顔が、俺の望むままに受け入れようとしてるのに気付いて、苦しくなる。
 そんな菩薩みたいなツラで『捧げて』くんじゃねぇよ。
「欲しい」
 罪悪感で止まってやれたら‥‥お前が何を望んでいるのか、ちゃんと聞いてやれたらいいのに。そう思う反面、嬉しそうに腕を伸ばす顔を見て、何も聞かないのが正解なのかもしれないとも考えた。
 どんな理由があるにせろ、ムリヤリ受け入れてるわけじゃない。それは、ついさっき解った。嫌々してたら、あんな‥‥‥あんな顔は、しないだろ。
「兄さん」
 急かすように熱くなる声。
 膝に乗せたまま軽く抱きしめて脇を滑るようにさすると、くすぐったいのか感じているのか、息を荒くして身を捩った。
 そのまま後ろを向かせて、背を抱くように沈みこむ。
「ゥ‥‥グ‥ッ」
「息吐けよ。‥‥ゆっくり‥‥そうだ」
 性急な交わりは譲に負担をかける。本当なら一晩に何度もすることじゃねぇ。
 譲の息が調うまで、ゆるゆると小刻みな出し入れを繰り返していると、さっき注ぎ込んだものが潤滑油のように滑りながら派手な音を立て始めた。
「やあ‥‥っ、‥‥兄さ、んっ」
 耳を塞ぐように頭を抱えたせいで上半身が布団に沈んで、反り返った背中が妙に艶めかしい。
 そんな可愛いこと言うんじゃねえよ。苛めたくなるじゃねーか。
 一気に深く沈みこむと、前のめりになった身体を支えるために耳から手を離す。
 相変わらずソコはグチャグチャと淫猥な音を立ててる。
「音だけで済んでいいじゃねぇか。こっちは、なかなかいい眺めだぜ?」
「やあっ」
「そう言うなよ。こんな固く張りつめて‥‥‥イイだろ」
「そ、んな‥‥ぁ、んあんっ」
 感じまくる身体を自覚させるように握り込んで扱きだすと、自分を抱くように肩を掴んだ腕の途中に歯を立てて、悲鳴を堪える。血の気が引くほど強く‥‥指先が白くなるほどの力で。
「ほら、怪我すんぞ」
 動きを止めて指を外すと、すっかり弱々しくなった眼差しが、子供のように泣き出した。
「ダメ‥‥‥後ろ、しながら‥‥触っちゃ‥‥」
 悩殺。
「こうすると、感じる‥‥?」
「う、あ‥‥っ、ダメ、出ちゃ‥からっ」
「イケばいいだろ」
「そしたら、また‥‥一人に、しちゃ‥‥ぅ」
 ほとんど意識のない状態でナニ‥‥可愛いこと言って。
 ダメだもう、もたねぇ。
 絞り出すように何度か突き上げると、譲も諦めたように飛沫を上げた。
「ア‥‥兄さぁ‥‥」
 この年で射精自体に慣れてないのか、一度吐き出す事にどうしようもない眠気に襲われるらしい。ゴメンとか小さく謝りながらムリヤリ身体を捻って抱きついてきた譲が、腕の中でホロホロと崩れる。
 一人に、したくない‥‥か。
 目覚めたら今度こそちゃんと聞いてやらなきゃな。

 心地良い怠さに身体を預けながら、譲の身体を引き寄せて眠りについた。
 なんか眠っちまうのが勿体ねぇなーなんて、笑いながら。
 
 
 
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