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 数週間後。
 弁慶は九郎を探るために、相変わらず彼を見張るように暮らしていた。が、なんの収穫もなかった。
 あの翌日には九郎はこちらを警戒し、集中できなかったようで、珍しいこともあるものだな、なんて思ったものだけど、束の間。いつしかすっかり元通り、彼が声あげ修行する隣で、弁慶が薬を煎じ書物に目を落とす日々が続いている。
 街についていけば、相も変わらず彼の評判は上々だ。皆が笑顔で出迎える。それが弁慶は嬉しかった。ほら、僕の見る目は間違っていなかったでしょう、と泰衡を嘲りたい気分だった。
 変わったとすれば弁慶の方だった。微々たることではあったけれど、どうにも先日、泰衡に『同類』と言われた事が心に引っかかっていた。それはまるで呪詛のよう。でも九郎を勝手に無能と決めつけ支配しようとする彼と自分のどこが似ているというのだろう? ……いや、泰衡は心から九郎が愚かだと思いこんでいるのだから、泰衡としては危うい彼を閉じ込め守りたいということになるのか。なんという過保護。少しばかりげんなりとした。
 とはいえ結局どちらにしても弁慶には関係くて、九郎を知りたいという弁慶の宿願に終わりは見えない。稽古を続ける彼を訪れるものはなく、気配すら見えない。
 ある日、夕餉を共にとっている時、九郎がふと言った。
「そんなにじっと見るな、食べにくい」
「ああ、すみません」
 秘密を探りたいあまり、彼をじっとみつめるのが癖のようになっていたらしい。
 謝り、目を伏せ、箸で蕗の煮付けをつかもうとするけれど……、
「……君こそ」
「ん、いや、すまない」
それは、お互いに言えることだったようだ。じっとこちらを見つめる九郎に返すと、彼はかすかに眉を寄せた後、随分と改まった口調で言った。
「お前はいつも難しそうな顔ばかりしているな」
「それは、まあ」
 即答すると、九郎は更に顔をしかめる。
「泰衡みたいだ」
「それは、否定できないですね。先日本人にも言われましたし」
「信じられれん。肩が凝りそうだ」
 言いながら、椀を持ち食事を進めていく彼は奔放に見えて、箸が止まってしまった。
 にこりと繕った笑顔も崩れてゆく。それでも九郎を見つめてしまう。
 だって、彼は完璧すぎる。
 弁慶がこんなに探ったところで、九郎の笑顔は結局壊れない。裏も見えない。いつかの鍛錬の朝を思い出す。あんな風に嘘をつかれたら、もうこちらはお手上げだ。そもそも、もう出会って一年もたつのだから、少しくらい隙を見せてくれても……信頼してくれればいいのに。
 らしくなく思った。どうやら随分と疲れているみたいだ。はじめて実感したそれに、弁慶は目を伏せる。
「落ち込むな」
 九郎は相変わらずの晴れやかな声で言った。視線をあげると、さわやかに笑っていた。
「早く飯を食べないと冷めるぞ」
 誰のせいだ、誰の。悪態の代わりににっこりと、心をこめて弁慶は笑った。



 そんな風に九郎は張り切って笑顔を輝かせていたけれど、弁慶の気分は昇るどころか落ちてゆくばかりで、そのまま夜が明けた。
 朝餉の後。いつもだったら鍛錬を眺める頃合い。けれど一度疲労に気付いてしまったせいか、弁慶はすっかりと熱意を無くしてしまったので、今日は九郎を見守ることなく一人で出かけることにした。
 隠すつもりはなかったが、言うほどのことでもないだろう。判断し、家の事をしてくれる者の誰かに適当に言付けしておけばいいか、程度に思っていたのに、よりにもよって部屋を出たところでばったりと、九郎に会った。
「ん? 出かけるのか?」
「ええ」
「どうした、なにかあったか?」
「いいえ、何も。……別にそこまで慌てる程のことでもないでしょう、どうしたんですか」
「いや、いつもだったらそこで何か読んでいるから」
「そうですが」
 もう、君を見つめることにやる気をなくしました、とはそれでも言えない程度にふてぶてしい弁慶は、
「たまには薬草でも摘みにいこうかと思いまして」
とさらりと言うけれど、何故か途端、九郎は寂しそうな顔をした。それはまるで捨て犬。
「……」
 無言でみつめると、
「……」
無言で見つめ返された。
 なんだこれは。傷ついているのは弁慶の方だというのに。きっとこれも演技なんだ、思いこんでも、途方もなく感じるのは罪悪感。
「鍛錬するのでしょう? 毎日欠かさず」
 だからそう言い捨て置いていこうと思っていたのに、
「……そ、そうだ!」
唐突に、九郎は弾けるような笑顔で言った。
「鍛錬だ、そういつだかなにか、勝手に怪しんでいたろう」
「ああ…」
「あの疑いを晴らす!」
「……」
 きらきらと、目を輝かせながら言う九郎。
「どうした?」
「いや、どこまでも鍛錬なんだなあ、と思って」
 なんかすごく、どうしようもなく複雑な気持ちになった。怒りたいのか、逃げたいのか、とにかく、そんな頼りない気分になる。
 そんな弁慶を、九郎はまさに、尻尾を振るように見ていた。
 まあいいか。結局、憂鬱ごと溜息吐いて、弁慶は苦く笑った。
「分かりました、行きましょう」


 と言ったことを、弁慶は正午を回る頃には後悔した。
 目的の薬草を入手したというのに九郎の鍛錬が全く終わらなかったからだ。しかもよりにもよって、やってきたのは高館の南西に位置する金鶏山の山頂。そこを選んだのは確かに弁慶だったとはいえ、一人で眺めていると、秋風は冷たい。
「まだですか」
「当然だ! 飽きたならお前もやればいいじゃないか」
「お断りします」
 風切りながら九郎はよくわからなく、落ちる葉や紅葉を無造作に斬り回している。
 全く理解できない。風流を気取っているのだろうか、一体彼の師は何を思ってこれをやったんだろう。今ならあの、師匠は鬼だという冗談も信じてしまいそうな気がした。
「帰ってからもまだやるんですか」
「いやっ、今日は、これで、終わりだっ!」
 長い髪をひらひらさせながら、九郎は風にり飛び落ちてくる紅葉をくるくると追いかけまわす。とことん犬のようだった。
 けれど九郎が言ったように、誰かと待ち合わせするならここに来る必要はない。否、それさえも仕組まれていて、弁慶を欺く為に今日はここで合流することにしているのかも、と思えど、怪しい動きは全くなかった。
「どうした?何をふてくされてるんだ?」
「そんなんじゃありません、ていうか、君に言われたくありません」
「……」
「……」
「秘密なんて、無いぞ。そんなに器用じゃない」
「なにを」
 言うんだ、こんなにも綺麗に、その笑顔できらきらと全てを跳ね返し隠すように弁慶を騙してくれるのに。
 感傷的になっているのだろうか、つい出かかった言葉を、瞬きと共に飲み込みはしたものの、空が眩しくて俯いてしまう。
 弁慶は自分よりも上手に笑える人間を、今まで見たことがなかった。だから今の九郎のそれも偽りだと決めていた。だってそれは、子供よりもむしろ純粋に見えて、ありえない。
 弁慶が彼を有能だと信じる理由の片方がそれだった。そう、こんなに綺麗に作り笑顔を向けられるなら、他の全てに嘘つくことなんて簡単な筈だったからだ。
 けれど、本当は。たまに思う。思ってしまう。先日泰衡と毛越寺で遭遇してからは特に。
 泰衡は九郎を間抜けだと言う。その上で、彼を平泉に縛り付けてやる、と、勝手に一方的に保護すると決め込んでいるらしい。それと、弁慶が同じだと言う、その意味を……認めたくはないけれど、予感するものは見つけてしまった。
「……なんか、お前、俺を過大に見過ぎだと思うんだが」
「そんなことない!」
 自分の中に浮かんだ可能性を否定するように、弁慶はめいいっぱいのに叫んだ。それに、九郎は驚き後退さる、と、躓いたのかよろりとよろけた。そこに山が邪魔だというように、突風が襲い山頂を薙いだ。
「くっ」
 思わず顔を両腕で覆った、それほどの風で、目の前の九郎がゆらりと揺れたのが見えた。
「九郎!」
 ぐらり、九郎が地面の向こうへと落ちる。しかも頭から。
 鍛錬してる癖に! 心で毒吐きつつも弁慶はとっさに手を伸ばした。偶然触れたのは指先で、それを必死に掴んだ。けれど持たない、ずる、と九郎の足が滑った感触が伝わってきて、ぐい、と引かれて弁慶もそのまま急斜面の山頂からずりおちそうになったけれど、幸いな事に足元に木の根がひっかかったからかろうじて踏みとどまった。
「っ」
 九郎が短い悲鳴を飲みこんだ。一瞬だけ、彼の力が抜ける。
 ……やはり、腕が痛いのは本当だったのか! けれど今は後悔や様々に罵りたい気持ちを押さえ、慌てて手を握り返し、しっかり支えた。間髪入れずに風が容赦なく襲う。千切れそうに九郎の髪がたなびく。彼も揺れ、弁慶も思い切り煽られ膝をつく。がくり、と九郎が更に落ちる。
「弁慶!」
 それに焦る、だというのに落ちた当の本人は何故か冷静で、声も軽い。
「少しだけ引きあげてくれ、崖に手がかかれば、どうにかなると思う」
「その腕では無理です」
「平気だ」
 何を馬鹿な、思えど、確かにとりあえず掴ませるまでは間違いじゃない、石の食い込む膝の痛みをこらえつつ、ぐい、と必死に引き上げると、確かに弁慶が心配していたよりはあっさりと、けれど時にはらはらさせながら九郎は這い上がってきた。
「よかった……」
 高い山ではないとはいえ、こちら側には木があまりない。ずるりと落ちたら下まで転がっていただろう。膝をついたまま安堵する弁慶の隣で、似たような恰好での九郎が、ぱたぱたと両手についた土を払い落しながら明るく言った。
「助かった、礼をいう」
「……ほとんど自分で登ってきたでしょう」
 無事でよかった、思えど、弁慶は優しい言葉を彼に言えそうにもないままに、弁慶はきつく布の巻かれて九郎の効き腕をとり、触れる。ああ、やはり腫れている、しかも酷い。事実に唇をかんだ。
 ……だって、いよいよ認める時が来てしまった。自分は思い違いをしていると。
 腕の痛みが本当だったなら、多分、もっとたくさん、弁慶が勝手に作り上げていた九郎とは事なる部分がでてくるはずだ。その中の、どこまでが正しくて、どこからが過ちなのか、それは分からない。けれど。
「弁慶?」
 軋む気持ちに侵される。心配そうにのぞきこむ、彼が心配してくれているのかすら疑ってしまう。……本当を知った時、弁慶は九郎の事を、まだ好きでいられるのだろうか?
「驚かせてすまなかった」
 そんな弁慶に、九郎は笑顔のまま謝罪した。きっと九郎が落ちそうになってびっくりして落ち込んでると思っているのだろう。
「いえ……」
 違うのに。そうじゃないのに。そんな言葉さえ紡げずに、弁慶はただただ九郎を見た。まるで今度は自分が吹き飛んでしまいそうな心許なさを感じてしまう。
 けれど九郎はなおもいつものように笑っていた。そして、いつものさっぱりとした口調で言った。
「……でも、これで分かったんじゃないか?」
「なにがですか?」
 突然の問い。まったく意味の分からない弁慶は、素直に首を傾げた。すると九郎は何故か胸を張り、
「これが鍛錬の成果だ」
「?」
「日頃から、追い込まれてもいいように、腕が痛くても頑張っているからな。こういう時に役に立つ」
 とても誇らしげに言った。それでも、弁慶は本当に落ち込んでいたので、それでもなお、呆然と、彼を見上げるしかできなかった。
 そこに感じた、既視感。
「ああ……またそれですか」
「弁慶?」
 ふるふると、肩を振るわせ弁慶は怒りに任せて叫んだ。
「そんな屁理屈もうどうでもいいです、いいですか、君の言ってる事は到底馬鹿げてます。戦で生き残るためだったら痛みに耐えて剣を振るより痛みを受けないように先行することが大事でしょう、腕が痛くても登れたと威張るより、落ちない事が大事でしょう!! なんでそんなことを言うんですか、」
 思いだした分の怒りも込めて、めった刺しできそうな視線で九郎を見下ろした。なんならもう一度突き落としてやろうかと思った程だったのに、
「なんで、そんな……………………」
そこで、止まってしまった。
 だって答えが出てしまった。
 だって理屈も通ってしまった。

 さて仮に、九郎が、弁慶が今まで思い描いてきた通りの、冷静で完璧な策士だとしよう。
 彼はどうやら本当に腕を痛めている。よって、腕が痛いのに剣を振るっていたのは事実。
 その目的を、弁慶は、痛みに耐えても剣を振るわなければならなかった理由があると思った……つまり、人待ちしてると思ったのだ。
 けれど九郎はそれを、彼は痛みに耐える訓練だと言い、弁慶を怒らせた。それが嘘か本当かは分からないけれど……どうだろう、完全で瀟洒な御曹司だったら、誤魔化しの為だけにもう一度弁慶の怒りを買うような事を言うだろうか? 鍛錬の邪魔をされるかもしれないのに?
 ならば、彼は本気で、痛みに耐える為に剣を振っている事になり、だったら待ち人などなく、更には意味なくあてなく純粋に剣術の為だけに毎朝効率悪く剣をふるっていて、
そこまで本当ならおそらく、彼は嘘をつけるほどに狡猾な人間じゃなく、
つまり、いつものきらきらとした笑顔も、九郎の本来の持ち物で、兄が蜂起した時には役に立ちたいと思いながらも、特になにかすることなく、素直にありのままの毎日を謳歌していた……そんな結論がでてしまうのだけれど。

「そんなまさか」
 さあっと、血の気がひくようだった。口元を手で覆ってしまう。九郎を見ることができずに、視線を泳がせてしまったところで、
追い打ちをかけるように、突然九郎が声をあげ笑った。
「?」
「いや、お前のそういう顔、はじめて見た」
 朗らかに言う九郎。今度こそあっけにとられた弁慶に彼は続ける。
「お前は、いつもにこにこしてばかりだろ? だがらずっと、別の顔が…お前の別の面が見たいと、特に最近は思っていた。それでここまで付いてきてみたんだが、正解だったみたいだ」
 きらきらと、心底嬉しそうに彼は言う。それを見、弁慶はいよいよ驚愕して、
ああ、本当に自分の推測は正しかったんだな、思った。本当に、ぽーんとここから突き落とされたような気分。
 それでもなお、九郎の笑顔は眩しかった。目をそむけたくなるけど、もはやもぬけの殻、といっても過言じゃない弁慶はそらせなくて、ただ最後に、
「……ひとつだけ、確かめてもいいですしょうか?」
ゆるゆると言葉を紡ぎ、問いかけた。九郎は、
「確かめる? よく分からないが、なんでもいいぞ」
と、こちらを見上げながらなんでもなく明るく返した。
「……最初に出会った時の事、覚えてますか?」
「五条の橋だろう? しっかり覚えてる」
「あの時、どうして君は僕に躊躇することなく突っ込んできたんですか?」
 それは、絶対すぎて、今まで疑問にも思ったことがなかった程に、弁慶にとっての九郎のすべての始まりだった。そう多分、出会いが違えばここまで勘違いすることはなかったと思う、と、今となっては負け惜しみのように思ってしまうまでに。

 あの三日月の夜、彼は弁慶にひるむことなく突っ込んできた。でも普通、こちらは年上で、しかも橋の上で待ち伏せなんて、怪しいにも程がある。普通、回避するのが当然だ。
 なのに彼は躊躇わなかった。それは自惚れだと、剣が重なる前には思った。けれど、後で知った。彼がとった方法はこの上なく最善だったのだ。あの方法以外では、彼らに縁ある二つの寺を巡って、厄介事が起きていたかもしれなかった。
 その冷静な判断力。弁慶の描いた彼の全てが夢想だったとしてもこれだけは真実であれと、そう願わずにはいられなかった。
 だというのに。
「ん……それは……ああ、そうだ! あの日は寺で世話になっていた方の使いで、文をお運びしていたんだ。だが京に入ったところで白い色の狐をみかけてな、珍しいからと追いかけているうちに、つい街はずれまできてしまって、これ以上遅くなってはいけないと、とにかく急いでいたところで……後から、寺で皆に聞いたが、お前、結構有名だったんだってな。そんな相手に挑むなど無茶をしすぎだと散々怒られたぞ。実際、俺も本気で急いでいて、必死じゃなかったら負けていたかもしれないし、帰り道も、もし待ち伏せされてたらどうしようかと、結構怖かったぞ」
 彼の言葉は風に弾むように、楽しそうに過去を語る。それほどにあの日の記憶は九郎にとってもいいものだったのだろう。それは嬉しいけれど、同時に弁慶の中の様々な想いが霧散してゆく。清々しいほどに、木っ端みじんに砕け散り、
「……そうですか」
あっけなくも簡単に崩れた。
 だってまさか、弁慶にとってもなにより大切だったあの日の思い出が、こんな形で、本人直々に砕かれるとは。
 ……泰衡は正しかった。本当の意味で正しかった。そう、彼は言っていたんだ、『九郎に勝手を押し付けているのはお前も同じだ』と。
 空を仰ぎ、体の奥底から、すべてを放つように弁慶は息を吐いた。
「……お前、今日は随分、表情をくるくる変えるな。知らなかった、そういう奴だったのか」
 こちらの気も知らない九郎はきらきらと笑っていた。釣られて弁慶は笑った。九郎のように無邪気に笑えているかは分からなかったが、久しぶりに、弁慶も偽りない笑顔で微笑んで、
「ええ」
九郎の右腕を掴む。
「っ!?」
「ふふっ、僕、もともと結構、こういう性格ですから……ね!」
「いっててててて!!」
 そのまま、ぐい、と思い切り、感情のままにねじあげると、九郎はそれこそ聞いたことない絶叫を上げた。だけど加減はしてるから大丈夫。せめてこれくらいは貰わないと気が済みそうにない。
 だって嘘などつけず、冷静な判断力も幻想。九郎は弁慶の望んだものを、たったのひとつも持ち合わせていなかったとは。
「ああもう、本当に馬鹿だ」
 けれど、それが弁慶の求めた答えだ。ここ一年の収穫だ。完敗だ。
 そして後に残るは、九郎の本質をとうとう見抜けなかった自分への、怒りと言うか、絶望だ。だってそんな九郎を見抜けなかったというなら、弁慶は彼より間抜けということじゃないか。
 けれど同時に、めくるめく予感にくすくすと笑いが零れて仕方がない。
「困ったなあ」
 心はすっかり有頂天。ああ、本当に尽きることない好奇心は恐ろしい。
 今まで一年散々と九郎のことを知りたいと付きまとっていたのに、それが無駄に終わったならば、
……今度こそ本当の彼を知りたいと思ってしまうと言うものでしょう?
「改めて、よろしくお願いしますですね、九郎」
「頼むから手を離してくれ!!」
「これくらい、平気って言えるように腕を痛めたまま放置していたんじゃないんですか?」
 にこにこと弁慶は、結構本気で痛がっては喚いている九郎を、……ずっと見ていた筈の彼の素顔を改めて呑気に楽しんだ。






通じてなかったら寂しいにも程があるので説明ですが、
九郎はとっても凄いに違いないです。僕の見込んだ九郎に間違いはありません!彼の一挙一動は全て計算づくなんです!
って勝手に思い込んだ弁慶が、
なんで九郎ってこんなに凄いのかな、もっと彼のこと知りたいな、
ってわくわく探ってたのに、
別に九郎に裏なんてなくてただ平泉で遊んでただけで弁慶ショック!
という弁慶さんの一部始終をみつめてみだだけの話です
弁慶よりも地味に九郎の扱いが酷い

弁慶さんを困らせてみた企画(5):九郎の事が知りたくて仕方ないけど迷走してる弁慶
(26/02/2010)



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おまけとして、この話の途中〜その後の九郎視点の話も書いてみました
完全に後付けなんですが、よろしければ
「恋心は探究心になる」(R15)
サソ