そう遠い距離ではない、弁慶はゆっくりと歩いて勝浦まで向かう事にした。
道中では自然と夏の事を思い出した。
九郎の用で皆と熊野にやってきたのは、まだ新しい思い出だ。
怨霊の仕業で足止めされて、最初の頃は随分九郎が苛立っていたけれど、結局最後は皆とただ遊んでいたりしたものだ。
怨霊に出会う事いつつも、皆楽しそうに熊野を満喫していて、それを見ているだけで弁慶の心は和むようだった。
中でもはしゃいでいたのはヒノエと敦盛だっただろうか。
熊野の街の入口まで辿り着いたところで、弁慶は思い出して笑ってしまう。
A ヒノエは毎日これみよがしにあちこちから魚を持って来ては望美さんを喜ばせていましたね
B そういえば避暑のために、涼しい場所を知っている敦盛くんを探していたけれど、皆でくっついているものだから余計に熱くなってしまっていたな
C 景時も空に光の花なんてあげてみたりして、あれは綺麗でしたね