*大嫌い!!




休み明けの月曜日。

今日は一日奥田は外回りに出るらしく朝礼が終わってすぐに会社を出て行った。

今は出来るだけ顔を合わせたくなかったからすごく助かる。それでも朝礼までの間に何度か視線が合い、その度に送られる熱い視線にどうすればいいのか分からなかった。

嫌いなハズなのに、視線が合う度心臓が高鳴って痛いくらい。今までには感じたことのない奥田に対する体の異変に正直戸惑っていた。

・・・・・どうして?私はアイツが嫌いなのにどうしてなのよ。



この戸惑いは数日経っても拭いきれないでいた。気が付けば自分が奥田を視線で追っている事も、奥田が女の先輩達と楽しそうに話すのを見てどうしようもないくらい胸が締め付けられてる事も。

どうしたって言うのよ、私。おかしいわよ絶対。

大きなため息を付いて、帰り支度の為に更衣室に入ると一人の先輩が私に話しかけてきた。

「中里、あんた奥田君と喧嘩でもした?」

「へ?別に・・・喧嘩なんてしてませんけど。どうしてですか?」

「ここ2週間くらい奥田君、妙に元気がないのよね。どうしたの?って聞いても、別に。としか返事が返ってこないし。」

「・・・はぁ。」

だからってどうして「私と喧嘩」に結び付くのか理解に苦しむ。

「最近、あんたと奥田君が話す機会がめっきり減ったでしょ?原因はそこにあるんじゃないかって、私思うのよね。」

「え?どうして私が関係してくるんですか?」

確かにあの一件以来随分と奥田と話す回数が減ったと思う。それは故意に私が減らしているんだけど・・・。

「ちょっと中里。あんたあれだけあからさまに奥田君があんたにモーションかけてるのに、その気持ちに気づいてないわけ?」

「は?だって奥田って誰にでも気軽に声かけてるんでしょ?そんな軽いヤツに言われたってムカついてくるだけですよ。」

「あんたねぇ。はぁ・・・奥田君がかわいそう。何でこんな子を好きなのかしら、全く。」

先輩は、やってられない。とでも言うように大袈裟にため息を付く。

「どれだけ私達が躍起になって奥田君を落とそうと頑張ってると思う?食事に誘っても上手くかわされるし、中里が忙しい日は私達が見積もりするわよ、って言ったら、いいよ自分でするから。って断られるし。」

「嘘。だってやってもらった子には奢ってるって・・・。」

「やらせてもらった事なんてないわよ、この1年の間に一度もね。食事だって2人きりじゃ絶対断られるのよ?あんな軽そうに見えてカタイ男、見た事ないわよ。」

『見た目で判断すんなよ。』奥田の言った言葉が大きく私の胸に突き刺さる。

だってだって見るからに「遊んでます」って顔してるじゃない。甘いマスクで誰にでもにこやかに返事して・・・。

「中里にその気がないなら仕方ないけど、少しでも奥田君の事を想ってる気持ちがあるなら応えてあげなさいよ。彼、どれだけあんたの事を見てると思ってるの?」

「私は!・・・奥田なんて嫌いなんです。誰にでもホイホイ気軽に応えて、自分がモテる事を鼻にかけてる態度が。あんな軽い男・・・。」

「あんたってつくづく鈍感ね。それってただ単に奥田君に対してヤキモチを焼いてるだけじゃない。」

「ヤキモチ?」

「そう。自分とも仲良く話してるクセに他の女の子に対しても同じように話されるのが気に入らないんでしょ?だから、嫌いって言ってんのよ。自分の気持ちに気づいたらどう?あんただって奥田君の事好きなんでしょ。」

先輩に言われた言葉に一瞬胸がドキンっ。と高鳴る。

・・・ヤキモチ?私が奥田に対してヤキモチを焼いてるって言うの?嘘よ、そんなの。私が奥田なんかに・・・。

「言っとくけど、これは中里を思って言ってるわけじゃないからね。奥田君があまりにもかわいそうだから言ってあげてるの。どう頑張っても今の私達じゃ奥田君の気持ちに入り込めないようだから。」

先輩がそう言葉を残して更衣室を出て行った後も、暫く動けないでいた。

・・・奥田は私の事を本気で好きなの?私は奥田が好きなの?だからヤキモチ?

私は奥田の何を見てきたんだろう。何を知ってるんだろう・・・。

ダメだ。頭がこんがらがってきた。



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