*大嫌い!! 「かんぱ〜いっ!!」 「はいはい、どうも。」 ニコニコッ。と上機嫌でビールのジョッキを私のグラスにカチンッ。と合わせてくる奥田に向かって気の無い返事を返す。 「・・・お前ね、もうちっと楽しそうな顔をしたらどうよ?折角「俺」と言ういい男が一緒に飲んでやってんだぞ?」 ・・・誰も頼んでねぇっつうの! 「あんたね、その超自惚れの態度どうにかしなさいよ。一体何様のつもり?」 「俺様。」 「・・・・・ムカツク。」 ちょっとカッコイイからって・・・どうにかしてよ、その態度!! ムカムカっと込み上げてくる怒りをアルコールと共に、ごくごくっ。と腹の奥に流し込む。 「っつうか、お前ビール飲めないの?チューハイなんてショボイ飲み物飲んじゃって。」 「仕方ないでしょ?ワイン頼みたかったのにここ置いてないんだもん。それにビール嫌いなの。苦いじゃない?」 「クスクス。お子ちゃま。」 「・・・・・ビール腹のオヤジ。」 「・・・見たことあんのかよ。」 「見たくねぇし。」 「だからその口の悪さを何とかしろって。綺麗な顔してそんな言葉使いじゃ幻滅されっぞ?」 奥田は美味しそうにビールを飲んでから、ため息混じりにそう呟く。 「別にね、誰にも相手してもらわなくて結構。これでも好きって言ってくれる人探すもん。」 「じゃぁ、俺にしとけば?」 「・・・・・・・・・・何ですか?」 「聞こえなかった?その口の悪いお嬢さんと俺が付き合ってやろうか?って言ったの。」 「お断り〜。あんたなんかと付き合ったら弄ばれて捨てられるのがオチだもん。それに、私なんて相手しなくっても困らないでしょう?いっくらでも相手いるんだから。」 「いくら相手がいても、本命の子に振り向いてもらえねぇんなら意味がねぇだろ?」 奥田は少し寂しそうに呟くと、ポケットからタバコを取り出し徐に火をつける。 ・・・まただ。何なの、この寂しそうな表情は。ん?でも今「本命の子」とか何とか言ったわよね・・・何、コイツ狙ってる子いるって事? 「ちょっと、あんた本命の子って・・・誰か好きな子いんの?誰よぉ。そんな子いるのに私なんかと飲みに来てたらダメじゃん。あんたなら即行でOK貰えるでしょうに。」 「・・・・・鈍。」 「は?」 大きなため息と共に吐き出された一言に首を傾げながら、チューハイをコクン。と流し込む。 「ったく、何で分かんねぇかな。あれだけ俺が話しかけてんのに素っ気無い返事ばっかり返してくるし、食事に誘ってもいっつも断られっし・・・。」 「クスクス。何、そんなモーションかけてんの?奥田がそんな躍起になってんのに、気づいてもらえないってかわいそ〜。」 「・・・・・ワザとかお前。」 「なにが?」 ジト目で睨んでくる奥田に焼き鳥を頬張りながら素で返事を返す。 「天然かよ・・・頭痛ぇ。」 片手でコメカミ辺りを押さえる奥田に、「何、飲みすぎ?」って言ったらまた睨まれた。 ・・・・・何で睨むのよ。 「でも、奥田とこうやって飲みに来たのって初めてだよね。」 「・・・お前が尽く断るからだろ。」 「え〜。だってあんたと飲みに来たら酔っ払った勢いで何されるか分からないじゃない。危ない危ない。」 「俺はケダモノかよ!!飲んだ勢いで襲う程女に困ってねぇっつうの・・・まぁ、ここ1年くらいご無沙汰だけど。」 「うっそだぁ!!1年もご無沙汰なんてあり得ないじゃない。あんなにモテんのに、つまみ食いもしないわけ?」 「つまみ食いってね・・・俺はそんな軽いヤツじゃねぇっつってんだろ?惚れた女を落とす為に必死になってんのに、何で他の女を相手にしなきゃなんないんだよ。」 奥田は少し乱暴にタバコを灰皿に押し付けて消すと、ジョッキに残ったビールをグイッ。と飲み干す。 「だったら私なんかも相手にしないでその子を誘えばいいでしょ?ま、今回は私のミスのお詫びって事だけど・・・。」 「・・・ストレートに言わなきゃ分かんねぇのかよ、この女は。」 ボソッと呟かれた言葉が周囲の声にかき消されて私の耳に届かなかった。 「・・・え?何て?」 「はぁ・・・別に。何でもねぇよ、バーカ。」 「ばっ?!バカとは何よ!!ったく、人をバカにすんのもいい加減にしなさいよね!」 「そのままそっくりその言葉、お前に返してやるよ。この鈍感娘!!」 「すっごいムカツク、その言葉!!鈍感娘ってどういう意味よ。気分を害された・・・今日はあんたの奢りだからね。」 「はぁぁ?!なんで、俺が奢るんだよ。今日はお前のミスの侘びにココに来てんだろ?」 「だから言ったでしょ?気分を害したって・・・だから奥田の奢りね。ご馳走様〜♪」 「・・・あぁ、そうかよ。だったら奢ってやるけどその代わり今日は連れまわすからな、覚悟しとけよ!!」 「ふん。奢りとなっちゃぁ遠慮はしませんからね、とことん飲んでやる!こう見えてもお酒は強い方なんだから。お会計の時に後悔させてやるんだから!!」 |