*大嫌い!!




あぁぁ・・・頭が痛い。昨日、ちょっと自棄酒しすぎたかな。

私は重たい頭と気持ちを抱え、制服に着替えて事務所に入る。

自分の席で今日の段取りをしているらしい隆志と目が合い、あからさまに避けたところで常務から声がかかる。

「中里君。どうした?体調でも悪いのか?」

・・・二日酔いです。などといえる筈もなく。

「あ、いえ。ちょっと風邪気味で。」

なんて、嘘がポロっと口から出る。

「そうかー。体調が悪い所申し訳ないんだが、今日奥田君と一緒に現場の打ち合わせに行って来てくれ。」

「・・・・・は?」

何で私が?

「奥田君の見積もりは君が大体やってるだろう?君も現場に行って勉強してくるといい。今日の現場は私が昔担当した大事なお施主さんの所だから、間違いがないようにね。君もしっかり現場を見てくるように。先方さんは大変忙しい方だから、朝一番の打ち合わせだそうだ。朝礼はいいから、早速行ってくれるか?」

「でも・・・・・。」

そう、言いかけたところで、隆志が「中里、早く支度して。」と、私を促す。

ちょっと待ってよ・・・何で急に。

今までどんな大きな現場だってそんな事言われた事なかったのに。

なんで、この状況の時なのよー。

店長ぐらいなら、嫌です。と悪態もつけるけど、常務となると話は別。

私は渋々支度をすると、隆志について車に乗り込む。

車中の重い空気・・・私は気を紛らわせるように窓を開け外を眺める。

沈黙の中、車はどんどん走り、昨日私が歩いた交差点の信号で止まり、ウィンカーがある方面を指す。

ちょっと・・・この道って。

「・・・・・どこ行く気?」

「現場に決まってんだろ。」

低く、言葉少なめな奥田の声。

何よ、怒ってるっての?私の方が怒ってるんだからね!

でも現場って・・・・・?

交差点の信号が青に変わり、車が走り出すと徐々に私の鼓動が高鳴り出す。

「ちょっと!現場って言ったじゃない。何でこのホテルなのよっ!!」

「だから現場だ。」

・・・・・は?

車を昨日隆志達が入って行ったホテルの前で停めると、隆志は、降りろ。とだけ呟き、さっさとホテルの中へ入って行く。

私は慌てて隆志の後に続き、ホテルの中へ足を踏み入れる。

えっ、えっ?待って待って・・・どういう事??




***** ***** ***** ***** *****





「あら、奥田君じゃない。今日は?何か予定入ってたかしら。」

ホテルの中の事務所らしき場所へ赴くと、中から昨日見た女性が顔を出す。

・・・・・嘘。

「すいません、今回の改装工事は大掛かりなものなので失敗をしない為に見積もりを担当する事務員も、現場を見せてもらおうと連れて来たんですよ。後、少々変更した方がいいサッシ周りもありましたので、採寸もさせていただこうかと。」

「あらー、そう。こちらの可愛い方が見積もりを?ヨロシクお願いしますね。」

女性は人懐っこい笑顔を見せると、軽く頭を下げてくる。

「え、あ・・・はい。こちらこそ、宜しくお願い致します。」

私は頭の整理がつかないまま、ぎこちなく頭を下げる。

「クスクス。こんなラブホテルの見積もりだなんて、びっくりしちゃったんじゃない?あ、そうそう。奥田君、昨日はごめんなさいね。現場まで案内するだけして、後は任せっきりで仕事に戻っちゃって。主人も忙しい人でしょ?ホテルの方の経営は全部私に任せっきりだからてんてこ舞いで。だけど、安心だわー。改装の件は奥田君がしっかり取り仕切ってくれるから。宮田常務が太鼓判を押すだけの事はあるわね。」

「クスクス。ありがとうございます。」

「あらっ、やだもうこんな時間。ごめんなさい、これから私もう一つの方のホテルへ行かなきゃいけないのよ。奥田君、いつも悪いんだけど・・・後は任せていいかしら?」

「ええ、もちろんですよ。先程申しましたように、変更した方がいいサッシ周りがありますので部屋を一つお借りしてもいいですか?」

「もちろん。空いてる部屋を適当にうちの事務員に言って好きに使って。あなたの考えてくださる提案で全て行かせてもらうから、素敵な構想を練ってちょうだい。じゃ、後は宜しくね。」

そう、にこやかに笑って手を振ると、女性は慌しくホテルを出て行った。

隆志は事務室にいる中年女性に、適当な部屋を開けてもらうと私を連れて部屋に入る。

2人の会話を黙って聞いていた私は、言いようのない罪悪感に苛まれ、俯いたまま隆志の後に続く。

ヤッバー・・・超、サイアク。

こんな事とは露知らず、一人騒ぎ立てていた自分が恥ずかしい。

部屋に入り、私の後ろでドアが閉まると、自動的に鍵が、ガチャン。と掛かる。

その音を待ってたかのように、隆志は私に背を向けたまま低い声で呟く。

「・・・・・覚悟しろよ。」

「・・・・・ぇ?」

振り向いた隆志は意地悪い笑みを浮かべ、何故かネクタイを弛めながら私との距離を縮めてくる。

「ちょっ、ちょっと隆志・・・・・何よ。」

少し危険な香りを感じ、私は追い詰められるように後ずさりながら部屋の奥へ進んで行かされる。

「俺を散々振り回しやがって・・・タダで済むと思ってんじゃねぇだろうな。」

「は?・・・何・・・何よ・・・仕事は?採寸は?」

「んなもん、昨日の内にとっくに終わらせてるに決まってんだろうが。俺はそんなチンタラ仕事しねぇんだよ。」

「だって、さっき変更したいサッシがって・・・。」

「あぁ、あれ嘘。部屋を使う為の口実。俺のスペシャルナイスな構想はもう出来上がってんの。今更変える事はねぇ。それにこうでもしなきゃ、お前は俺の話を聞こうともしねぇだろ?」

「もしかして、あんた宮田常務に上手い事言って・・・?」

「クスクス。信頼されてるっていいよなー。」

おかしいと思ったのよ。今日に限って現場を見て勉強しろだなんて・・・コイツの仕業だったとは。

「あんたねぇ・・・部屋を使うって、何する気よ。」

「お前を壊す為に使うに決まってんだろ。」

ニヤリと笑い、弛めたネクタイをするするっと引き抜くと、突然私の両腕を取ると器用にそれを巻きつけ縛り上げてしまった。

「ちょっと隆志っ!何よ、コレ・・・やだっ解いて!!」

「ま〜た暴れられて、俺のカッコイイ顔に傷をつけられたらたまんねぇし?暫く大人しく縛られとけ。」

・・・・・一言余計だっ!

いつの間に、こんな所まで隆志の気迫に押されて進んできたのか、私の体はベッドの脇まで来ていて隆志にポンっと体を押されてベッドの上に倒される。

「やっ・・・ちょっと、何考えてんのよ!!」

「さっき奥さんが言ったろ。好きに使っていいわよ、って。だから、好きに使わせてもらう。」

意味が違うだろーが、意味が!!

隆志はベッドの上でもがく私の腕を取ると、縁の装飾部分に括り目を引っ掛けて私の自由を奪う。

「やだやだ、こんなの!バレたらどうすんのよっ!!ちょっと、隆志っ!!!」

「クスクス。俺がドジを踏むような仕事をすると思うか?・・・腹括れよ。今日は完璧お前を壊す。」

口の端を上げて隆志はそう呟くと、私の唇を奪った。



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