*Love Fight










「きゃはははははっ!!楽しかったぁ。」

「うひょ〜っ。最っ高っ!!」

私と直人は無類の絶叫マシーン好き。遊園地に来ると必ず1個は乗る。

で、今は遊園地内にある2つ目のジェットコースターから降りてきた所。

「はぁぁぁ。内臓出るかと思ったぁ。うぅ・・・足ガクガクだよぉ。」

「俺も・・・よくお前ら平気だよな。」

ジェットコースターに乗って興奮気味の私達に対し、美菜達2人は青い顔。

美菜って絶叫系苦手だもんね。長瀬もなんだ。クスッ似てるね、この2人。

「お前ら遊園地の醍醐味は絶叫系だろう?これが好きじゃないってかわいそぉ。」

「ほんとほんと、私もう1回乗りたいくらいよ。」

「もう結構。乗るんなら、お前らだけで行ってこいよ。俺、吐きそう。」

「けっ、情けねぇの。ん〜じゃあ、気分転換にあっこに入ろうぜ。」

そう言って直人が指差したのは、遊園地には必ずと言っていいほどあるお化け屋敷。

途端に美菜の顔が青ざめる。

あぁ、美菜ってお化け屋敷もダメだもんねぇ。私は平気だけどさ。

「えぇ〜〜。お化け屋敷入るの?・・・やめようよぉ。」

「何、美菜ちゃん怖いのぉ?じゃあ益々行かねぇとなぁ。怖がるやつの為にあるんだから。」

「ひえぇぇ。ほんとに入るの?待ってちゃダメ?」

「だぁめ。ほら、修吾もいるんだからしがみついときゃ大丈夫だって。」

「そうよ、美菜。この際だから思いっきり引っ付いちゃいなさいよ。」

「なななっ何言ってるのよ、恵子。ひっ引っ付くだなんて。」

さっきまで青ざめてた顔が、今度は真っ赤になっちゃったよ。美奈、かわいい。

「赤くなっちゃってぇ。美菜ちゃんかっわいぃ。恵子なんて見てみろよ、平気な顔してんだぞ。」

「ほっほっといてよ!!怖くないんだからしょうがないでしょ。」

ちょっと、ズキンッとした。私って可愛げがないのかしら。

私も美菜みたいに女の子らしくなった方がいいのかなぁ。

「美菜、俺がいるから大丈夫だって。行こう?」

「でもでも、本当に苦手なの。前なんて、途中で歩けなくなって非常口から出してもらった くらいだよ?」

「歩けなくなったら、俺が運んであげるから大丈夫だって。ね?」

「なっ!!あ〜うぅ〜〜。」

「ほれほれ、ラブラブトークはそれぐらいにして、入るよぉ!!」

うぅ〜、と唸りながらも承諾した美菜を連れてお化け屋敷に入ることにした。

本当に怖そうに震えている姿を見たら、大丈夫よって思わず抱きしめちゃいたくなる。

私でそう思うんだから、絶対長瀬もそう思ってるよね。流石に私達がいるから出来ない だろうけど・・・。

「んじゃ、俺ら先に行くから。修吾らは後から出発な。」

「OK。直人、怖がって桂木さんに抱きつくんじゃねぇぞ。」

「ばぁか。お前こそ、途中で美菜ちゃん襲うなよぉ。」

「クスクスっ。さあね?」

「なっ長瀬君!!」



***** ***** ***** ***** *****




辺りはヒヤっとしていて薄暗く、湿っぽい臭いが漂っている。

ひゅ〜〜〜っ。という定番の音が流れていて、ところどころに生首の蝋人形などもあって 結構本格的。暗闇の中から突然落下物があったりして。

よく見ると、こんにゃくみたいな物だったりするんだけどね。

こりゃぁ、美菜すっごく怖がるだろうな。まぁ、長瀬がついてるから大丈夫だろうけど。

私と行った時も大変だったもん。転んで泣いて挙句の果てに腰抜かすわで。

私がここまで強くなれたのも、幼稚園の頃から美菜をそうやって護ってきたからかもしれない。

そう思うと苦笑が漏れた。

「おぉぉ。結構本格的なお化け屋敷じゃん。」

「ほんとぉ。リアルだよね。あ、ほらあそこの生首とか。あははっ笑えるぅ。」

「お前、マジで怖くねぇの?」

「へ?あ、うん。怖がった方がいい?」

「いんや。その方が恵子らしくっていいけど?あ〜、でもキャ〜っとかって抱きついて来る のもそそられていいかもなぁ。男冥利に尽きる。」

やっぱりそうなのかな?美菜なら絶対怖がって長瀬に抱きついてくんだろうな。

はぁ。ちょっと落ち込むなぁ。

でも、全然怖くないんだもん。作り物じゃない?これって。

たまに、ここの従業員がお化けに変装して追いかけてくるけれど、それはそれで面白い。

面白いって感覚がおかしい?

「何、黙り込んで。落ち込んでんの?」

「ん?・・・ん〜。もっと私、美菜みたいに女の子らしくなった方がいいかなぁ?」

「俺は今のままの恵子でも十分女の子らしいと思うけど?お前はお前。美菜ちゃんは美菜 ちゃんだろ?それでいいじゃん。」

「それはそうだけど・・・。」

直人はそれでいいの?今のままの私でいい?美菜みたいにもっと女の子らしい子じゃなくても いいって思ってくれてる?

どうしよう、何かすごく不安。

出口に差し掛かった頃、直人がふいに立ち止まるとニヤっと笑う。

「ここで、待ち伏せしてあいつら脅かしてやろうぜ。」

「くすっ、いぃかもぉ。美菜絶対腰抜かすよ。」

そういって笑ってみせるけど、やっぱりどこか本気で笑えない。

どうしちゃったんだろう、私。



《美菜のお化け屋敷編》

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