*Love Fight










美菜と長瀬が付き合い始めて1ヶ月が経った。

私達は2人のお祝いと称して、4人で遊園地に遊びに来たの。

所謂ダブルデートってやつ。

何で今更お祝いって?ま、深い事は気にしないで。何でもいいのよ、遊びに行ければ。

世間は夏休み。平日とは言え、やっぱり家族連れが多いなぁ。

私は少しため息をついて、楽しそうに手を繋ぎながら前を歩く2人を眺める。

「うわぁ、結構多いねぇ。やっぱり夏休みだからかなぁ?」

「美菜、あんまりキョロキョロしてるとまた転ぶよ?ほら、前見て。」

「うぅ。な、長瀬君また私の事子供扱いするぅ・・・大丈夫で・・きゃっ!!」

「もう、だから言ったろ?前見てって。手繋いでなかったら、転んでるよ?」

「・・・・・ぅ。どうもスイマセン。」

はぁ・・・。何か今日はヤケに暑いと思ったら、この2人のせいだったのね。

まったく、熱々なんだから。見ているこっちが恥ずかしくなっちゃう。

あぁ。でも美菜ったらほんとにかわいい。恋する乙女って感じ。

長瀬を見るたび頬を赤く染めて屈託のない笑顔を彼に向ける。

美菜はどちらかと言うと『綺麗』より『かわいい』タイプの女の子。

女の私から見ても、危なっかしくて放って置けないんだけど、ついつい弄りたくなっちゃう ほんわかした子。

直人も美菜を弄るのは好きらしい。後、抱き心地がいいらしく、いつも美菜を見つけると 抱きしめにかかるんだけど、最近は長瀬に阻止されるって少し凹んでた。

それは痩てる私に対する嫌味かしら?だって美菜ったらほんとにナイスバディなんだもん。

太ってる訳じゃなく、ほんとに付くところには付いて締まるところはきゅっと締まってるって 感じでとてもうらやましい。そういう私も美菜を抱きしめるのは好きなんだけどね。

それと、長瀬の変わりようには驚きだわ。美菜を前にすると、コロっと態度が変わっちゃうんだから。

何なのあの顔。いつもは無表情極まりないのに、美菜を見つめる優しい瞳。

美菜にだけ発せられる優しい言葉。

愛しくてたまらな〜いって感じよね。すっごくいい雰囲気の2人。

少しうらやましくなっちゃう。

「ねぇ直人、あの2人いい感じよね。」

「お?おぉ。クスクスッ初々しいカップルって感じ。」

「私達もあんな時代あったよねぇ。何をするにもドキドキしっちゃって。」

「何だよ、俺は今でもドキドキするぞ。」

「えっ!そ、そうなの?」

少し嬉しかった。だって、私達付き合ってもう1年程経つんだけど最近マンネリ化っていうか ドキドキする事が減っちゃって、直人は私でいいの?って思う時があるんだよね。

そう言えば最近直人から『好きだよ』ってセリフ聞いてないなぁ・・・。

「おぅ、恵子は今日どんな下着付けてんのかなぁって思ったらドキドキする!!」

「・・・・・。」

前言撤回。少しでも喜んだのがバカみたい。

私は直人の頭をカバンで殴るとスタスタと歩きだした。

まったく、何考えてるのよ!!

ねぇ、直人・・・・・今も私のこと好きでいてくれてる?

あの2人を見ていたら、不安になってきちゃったよ。だってあまりにも眩しすぎるから。



***** ***** ***** ***** *****




「ねぇ桂木さん、付き合ってる奴いなかったら俺と付き合わない?」

そう直人から告白されたのは、1年の夏休みに入る少し前。

その頃私は付き合ってた彼と別れててフリーだったんだけど、直人の事はクラスは違えど 噂をよく耳にするから知っていた。

直人と長瀬は高校に入った時から目立ってたの。背が高くて美形な男子がいるって事で。

普段は人を寄せ付けない雰囲気の長瀬とは対照的に、直人は誰とでも仲良くするタイプだから 周りにはいつも女の子がいっぱいで。

いろんな噂が飛び交ってたわよ。女をとっかえひっかえだの彼女が何人もいるだのって。

ま、総称して【プレイボーイ】って噂ね。

だから、告白された時随分迷ったわ。私も遊ばれてる内の1人になるのかしら?って。

で、私は断った。遊ばれるのはごめんだって言って。

「それは、噂の話だろ?俺は遊びで女の子と付き合った事は1度もない。周りにいる子と だって学校でしか話してないんだぞ。俺の事信じてよ。」

それからも何度も何度も告白されて・・・いつまで私をからかうつもり?って半分嫌気が さしてきた頃、

「じゃあ、俺がどれだけ君に本気で惚れてるか証明するよ。」

って言うから、どう証明するのよって思ってたら終業式の日に校長先生が挨拶してるのに 体育館の壇上に駆け上がると全校生徒がいる前でマイクを奪い取って、

「俺は桂木恵子が好きだぁ〜!!他の女には興味がねぇ。だから俺と付き合え!!」

って叫ぶんだよ。もぉ、私は穴があったら入りたいぐらいの勢いで真っ赤になっちゃって。

「OKしねぇと、何度でも叫ぶぞ!桂木恵子が好きで好きでたまりません。本気で惚れて るんだって!!恵子?返事しろよ。桂木・・・・」

「だぁぁぁっっ!!わかった、付き合う!付き合うから早く降りてよっ!!!何度も人の 名前呼ばないでっ。恥ずかしいでしょ!!」

・・・・・負けた。こんな強硬手段に出てくるなんて卑怯だわ。

ニヤっと笑うと、直人は壇上から飛び降りてそのまま私の所にやってくると、ぎゅっと抱き しめたの!!もぉ、赤面でぶっ倒れそうだったわ。

お陰で私たちは全校生徒公認の仲になってしまった・・・何でこんな展開になってんの?

付き合いはじめてからしばらくは、直人の周りにいた女の子達から嫌がらせを受けた。

でもその度に直人が護ってくれて・・・優しくて頼りがいがあって。

だからいつしか私も本気で直人の事好きになってた。

ずっとずっと傍にいたい存在。離れてほしくない存在に変わって行った。

あれから約1年。あなたの気持ちは未だに変わってない?



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