*Love Fight お化け屋敷の出口付近で私達が脅かしたせいで、美菜はやっぱり腰抜かしちゃった。 中でも相当泣いたんだろうな、だって目が真っ赤だもん。 ちょっと悪い事しちゃったかしら。 腰を抜かしたお陰で立てなくなった美菜を軽々と長瀬は抱き上げて外に連れ出す。 「美菜ちゃぁん、ほんとごめんね。まさか腰を抜かすとは・・・。」 よしよし、って言いながら直人が長瀬に抱き上げられたままの美菜の頭を撫でる。 あ・・・何かすごい優しい顔。 端から見てた私は、直人の表情に少し複雑な気分になる。 私、直人にそんな優しい顔してもらった事あったっけ?・・・何、この気持ち。 胸の中に居座るモヤモヤとした黒い影のような存在。 「本当に怖かったんだからぁ。・・・柊君も恵子も酷いよぉ・・・ぅ。」 「あ〜もう泣かない泣かない。お兄さんがぎゅってしてあげるから。」 「わわっ!柊君っ!!!」 「だぁっ!!お前、キモイって。俺も一緒に抱きしめんじゃねぇよ!!」 「しゃあねぇじゃんかよ。お前が美菜ちゃん抱っこしたまんまなんだからよっ。」 「だから、おめぇはそんな事しなくてもいいんだよ。クソ暑いから離れろって。」 長瀬の腕の中で真っ赤になる美菜を見て、ちぇ〜残念。って言いながら笑う直人。 そんなやり取りもいつもなら笑って過ごせるのに、今の私は気持ちが沈む一方。 本当にどうしちゃったんだろ?今日の私。何か変、絶対変だよ。 どうしてこんな泣きたい気持ちになっちゃうの? 「・・・・・いこ・・・恵子?」 「あっ、何?ごめん、ぼぉっとしてた。」 今まで美菜達をかまっていた直人が、急に私の顔を覗き見た。 「お前、どうした?何か暗ぇ顔してねぇ?」 「そっそう?あ・・・美菜に悪い事しちゃったなぁって・・・へへっごめんね、美菜。」 そう言って笑って誤魔化したけど、ちゃんと笑えてるかな? あぁ、何かすごい泣きたい気分だよ。 美菜が落ち着くまで、私達はフードテラスで休んだ。 いろいろ話してたんだけど、やっぱりいつものように元気が出なくって。 なんか嫌だな、こんな自分。何ウジウジしちゃってんのよ。 長瀬と話してた直人が私を見てから急に立ち上がる。 「うっしゃ。美菜ちゃんもだいぶ落ち着いたみたいだし、最後にアレ乗るかぁ!!」 直人が指差したのは、観覧車。 「あっ私も乗りたい。遠くの景色とか見れるから好きなんだ。今なら夕焼けがきっと綺麗だよね。」 美菜もぱあっと顔を明るくすると、長瀬にかわいく微笑む。 私達は立ち上がると観覧車の前に続く行列の最後尾に並んだ。 この時間になると、家族連れよりカップルが多くなる。当然観覧車に並んでるのもカップルが多い。 私達の番が来ると、直人は前に並んでた長瀬達に最後は別々に乗ろうぜ、と言って2人を観覧車に押し込む。私は次来たやつに直人と2人で並んで座った。 扉が閉まりゆっくりと観覧車は動き出す。 あぁ・・・何かこの空間今は嫌だな。泣きそうになっちゃう。 外を見ると街が夕焼けで朱色に染まって綺麗だった。いつもなら感動しちゃうんだけど、今日はダメ。 「なぁ、お前何で不安になってんの?」 「へっ!?・・・・・な何よ、不安って。」 私の肩を抱き寄せて覗き込んでくる直人に一瞬ドキっとした。 まっすぐ見つめる直人の瞳は何でも見透かしているようで。 「さっきも言ったよな、俺。美菜ちゃんは美菜ちゃん、お前はお前だって。俺が好きなのは桂木恵子。他の誰でもない、恵子なの。」 「直人・・・・・。」 「ったく、お前らしくねぇっての。今日半日落ち込んで無理して笑いやがって。」 バレてる。私が半日暗い気持ちでいたの・・・。いつもそう。直人には何でもバレてしまう。 ・・・どうして?私は何故か涙が流れた。 「だって・・・。」 「俺は1年前からずっと気持ちは変わってない。本気で恵子に惚れてるし、女だと思うのも恵子だけ。気が強くていつも元気いっぱいで、美菜ちゃんの事を大事に護ってるお前が好き。お前じゃなきゃ俺はダメなの。わかってる?」 私の頬を両手で挟んで、まっすぐな瞳で私の顔を見る直人を見ていたら何だかモヤモヤが晴れてきた気がした。 ・・・そっか。私、直人から『好きだよ』って言ってほしかったんだ。だからラブラブの美菜達を見て 昔を思い出してヤキモチを焼いてたんだ。ふふっ、何だか私ってバカみたいだね。 「・・・ねぇ、直人。ずっと私の事好きって言ってて。じゃないと不安になっちゃうよ。」 「あぁ、そっか。俺、最近言ってねぇや。だからお前が不安になっちゃったんだ。」 ごめんな、って直人は囁くとそっと私の唇にキスをしてくれた。長く深い口づけ。 私達を乗せた観覧車は丁度てっぺんに来ていた。 「ずっと変わらず好きだから、不安になんなよ。俺のお姫様。」 「くすっ。うん。ごめんね、ありがと。」 はぁ。私も直人じゃなきゃだめだ。ずっとずっと傍にいたいよ。 「・・・なぁ、今日お泊りしとく?」 「はぁ?何でそうなんのよ。」 「お前の顔みてたら我慢できなくなった。最近ご無沙汰だし・・・。」 「我慢できなくなったとか言わないの!!もうっ下品!!・・・・・て、あっ!」 私の視線がある場所で釘付けになり、直人もそれに気づくとニヤっと笑った。 うわぉうっ。いい眺め〜と言って私達の前を行く観覧車を覗き見る。 丁度下降している所で、私達が上から見ている形になるんだけどそこから丸見え なんだよね、美菜達のキスシーン。目撃は2度目だけど、前は暗闇だったからなぁ。 今回はっきり見えちゃってるよ。きゃぁ〜美菜ってば顔真っ赤。しかもキス長くない? 長瀬も無表情なクセして結構好きよね、美菜とちゅ〜するの。ヤツは曲者だわ。 私達が地上に足をつけた時には、美菜達もすでに降りていて少し離れた所で待っていた。 そこへ直人がニヤニヤ笑いながら近づく。 「2人共、見せ付けてくれちゃってぇ。熱い熱い。」 途端に美菜の顔が真っ赤に染め上がる。相変わらず長瀬はしれっとした顔。 と思ったら意地悪く目を細めて笑うと 「お前ら程ディープじゃねぇけど?」 なっ!!私達も見られてた!?今度は私が真っ赤になっちゃった。 何だかいつも長瀬には上手を行かれて、悔しいわ。直人だってさっきまでニヤけて たのに、やっぱり頬を染めてるし・・・。 でも今は何だかそれも許せちゃう。直人に『好きだよ』って言ってもらったお陰で さっきの不安な気持ちが解消されたからかなぁ・・・私って現金。 でも、恋ってそんな些細な事で浮かれたり沈んだりするもんだよね。 だからね、直人。私がいつでも元気でいられるようにずっと『好きだよ』って言っててよね。 私は心の中でそう呟いてから、直人の腕を組んで歩き出した。 Fin |
神楽のちょこっとあとがき
はぁ。あっちもこっちもラブラブでよろしいこって(笑)いやいや、それは私が一番好きな展開だからであって。 無理矢理終わらせた気がしますが・・・ま、好きな人からはいつでも『好きだよ』って言ってもらいたいって事で。 |