*Love Fight






美菜のお化け屋敷編




はぁぁぁぁ。嫌だぁぁ。

恵子と柊君がお化け屋敷の中に入ってから5分が経った。

次は私達の番。

長瀬君は大丈夫だよ、って言ってくれてるけど本当に苦手なんだよぉ。

前に恵子と入った時なんて、最終的に腰抜かしちゃったんだよ!!

あの、真っ暗な中で何が起こるのかわからないのと突然鳴るドンって音が怖い。

長瀬君は私の手を握ってくれてるけど、汗ばんじゃってるよぉ。

ゆっくり中に進んで行くけど、やややっぱり怖いぞ!!

心臓が嫌な速度で高鳴る。

「美菜?そんなに手を強く握らなくても大丈夫だって。全部作りものだよ?」

「うっうん。わかってるんだけど・・・わっ、何々!ひょえっぇ!!!」

突然私の頭に何かが触れる。ふと頭を上げるとお化けの人形が逆さになって落ちてきてた。

「うっきゃぁぁぁぁぁ!!!」

「クスクスっ。人形だって。」

「な、何で・・・長瀬君平気なの?」

「ん?もちろん怖いよ。」

いや、全然怖そうにしてるように見えないんですが。

むしろ私の反応を見て楽しんでいるような?

うぅぅ。こうなればっ。長瀬君に手を引かれてるから目をつぶってしまえっ!!

私はぎゅっと目を閉じて、開いた片方の手で耳を塞ぐ。反対の手は長瀬君と手を繋いでいる から、肩を耳に押し当てる。

こっこれで進んで行けば怖くないはず。うん、ナイスアイディアよ、美菜!!

と、突然私の手から長瀬君の手がすっと離れた。

へ・・・?ちょ、ちょっと待って。

な、何で手を離すんですか!!これじゃあ、私どうやって前に進めば?

「な・・長瀬君?」

「ん?ここにいるよ?目をつぶったままじゃ進めないよ、美菜。」

「やっや、待って待って・・・手を離しちゃ・・・やだぁ。」

「ほら、目を開けてここまでおいでよ。そうじゃないと、手を繋いであげないよ?」

うっ。密かに笑いを堪えている声だ。

絶対この状況を楽しんでるんだぁ。くそぉ。

薄っすら目を開けると、少し離れた所に長瀬君らしき人影。

よ、よし。あそこまで行けばいいのね。

私はゆっくりと足を進める。長瀬君にあと一歩という所で、頬にぺちゃっと冷たい感触。

「ひぇあぁぁぁぁぁっ!!!」

悲鳴を上げて避けた瞬間バランスを崩して、横の台に両手をついてしまった。

ひえっ!?ガッと目を見開く落ち武者の生首が目の前にぃっ!!目が合っちまったよぉ!!!

「うわあぁぁぁぁぁ!!!!」

慌ててがばっと後ろに飛びのくと、どんって誰かにぶつかった。

「わっ。ごごめんなさい!!・・・・・てっひぃっ!!」

振り返るとそこには頭からべっとりと血糊を塗ったお化けさんが立っている。

私と目が合うと、ニヤ〜っと笑いかけてきた。

「ひっひっ!!ぎゃぁぁぁぁぁ!!!・・・うわぁ〜〜んっ。」

私の目から涙が溢れ出てきた。

だって、だって怖い!怖すぎるよぉ!!たっ助けて、長瀬君。

一歩も進めなくなって、両手で顔を覆いながら泣いているとふわっと誰かに抱きしめられた。

「・・・・・・・っ!!」

「ごめんごめん。悪乗りしすぎた。」

「な、長瀬君!うわ〜ん、怖かったよぉ。ひっひどいよぉ、手を離すなんて・・・。」

「ごめんね。あまりにも美菜の仕草がかわいかったから、ちょっと苛めたくなった。」

ちょっとじゃないよ、これって。死ぬほど怖いんだから!!

私は言葉に出来ず、長瀬君の胸に顔をうずめて泣き続けた。

「あ〜ほらっ泣き止んで。クスクスッ鼻水出てるって。」

もぉ、最悪だぁ!!みっともないくらいに怖がって、おまけに鼻水っすか!?

誰か、穴を掘ってくれぇ。頭から突っ込みたいよぉ。

長瀬君は私のカバンからティッシュを取り出すと、鼻をきゅっと拭ってくれる。

クスクスっと笑いながら・・・だから、笑いすぎだって。余計惨めになるじゃない。

「やぁ・・・もぉ、やだぁ。はなっ鼻水まで出て・・・っぅみっともなぃ。うぅっ。」

「はい、鼻水完了。みっともなくないよ?可愛すぎっ。ごめんね、もう絶対離さないから 安心してよ。ね、美菜?」

「ぶぅ・・・・・。」

「もう、そんなかわいい顔しないの!!ほんとにここで襲うよ?」

「へっ!?やっ・・・それはもっとやだぁ・・・。」

長瀬君はフッと微笑むと、私の肩を抱き寄せて涙で濡れた瞼にちゅっとキスをしてから 優しく唇を重ねてきた。

柔らかい唇の感触が伝わってくる。

彼は唇を離すと、もう少しだから頑張ろうね、と囁き私の肩を抱いたまま歩き出す。

・・・ずるい。ちゃっかりキスされちゃってますやん、私。

それでも、さっきよりは怖くなくて・・・でも、長瀬君にしがみついてたのは言うまでも ないけど。だって、怖くないって言っても薄らいだだけで怖いもんは怖い!!

出口に差し掛かった頃、突然脇から「「わっ!!」」という声と共に誰かが飛び出してきた。

「うきゃぁぁぁぁぁっっ!!!」

私は悲鳴をあげて長瀬君の体からすり抜けると、床に尻餅をついてしまった。

「あははははっ!!美菜ちゃん脅かし作戦大成功!!」

「ほんっと、美菜ってば昔から変わらないわねぇ。」

柊君に恵子!?あ、あなた達なんて事をするんですかぁ!!!

あわわわっと口をパクパクさせる私・・・・・どうしよう、またまたこれって。

「お前らなぁ、何やってんだよ。美菜、大丈夫?」

「・・・・・こっ腰が抜けて・・・立てません。」

あぁ、もう最後の最後で最悪だぁ!!また腰が抜けちゃったよぉ。



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