色とりどり、デザインも様々な下着が並ぶ。
私と美佳子はその下着売り場の一角に並んで立っていた。
………そう、勝負下着を買いに。(正しくは美佳子に無理矢理連れてこられたんだけど)
「はぁ、もぅ加奈子は。斉藤君をそこまで追い込んでどうするのよ」
「追い込むって……別に私は」
「爆発だなんてよっぽど我慢してるってことでしょう?加奈子、やっぱり週末に覚悟を決めるべきよ。斉藤君の為に」
美佳子は色んな下着を手に取りながら、ため息混じりにそんな事を言ってくる。
そんな事言ったって……篤の為に?んー。
「加奈子さぁ。そんなに渋る理由は何?」
「え……何って……分かんないけど、痛いし…怖いし?」
「そーんなの、痛いかどうかなんてやってみなきゃ分からないって。痛くない子だっているんだし。そんなに最初から構えてると痛くなくても痛くなっちゃうわよ?根性見せなさいよ、加奈子」
こっ、根性って……。
こんな所で根性見せてどうすんのよ。
美佳子の言葉に深いため息を付きながら、自分も様々な下着を手に取ってみたりする。
「あ、これ可愛い」
ふと何気なく手に取った下着。
薄いピンクの生地に大きな花柄がプリントされていて、ふわふわっとストラップ部分からカップにまでフリルがついているブラとショーツがセットになったもの。
それを手に取り眺めている私を見て、美佳子が少し驚いたような表情を見せる。
「えー、意外!加奈子ってそういうフェミニン系が好きなんだ。もっとボーイッシュ系なのかと思ってた」
「……悪い?」
「ぜ〜んぜん。いいんじゃない?好みなんて人それぞれなんだし。斉藤君も喜ぶと思うよ〜?」
「そうかな。喜んでくれるかな」
ふと篤を思い浮かべて笑みが漏れる私。
………って、何買うつもりになってるの?
「加奈子ー。加奈子も斉藤君に女にしてもらってさぁ、一緒に綺麗になろうよ!」
「……綺麗に?」
「うんうん!何かね、女の子って好きな男の子とエッチすると綺麗になれるんだって。どう?私、ちょっとは綺麗になったかしら?」
一応悩ましげなポーズを取ってるらしい美佳子の姿を見て、一瞬考え込んでしまう。
……………イマイチ違いが。
美佳子は元々が綺麗だからなぁ。
綺麗になったか?と、言われればなったような気もするし、変わってないような気もする。
強いて言うなら……大人の雰囲気がちょっと出た?
あぁ、やっぱ分かんない。
「……微妙」
「………。何よ、その微妙っていうのは!もぅ、失礼しちゃう。お世辞でもいいから綺麗になったって言ってよねぇ」
「お世辞って……だって分からないんだもん。正直に言ったまでよ?でもまぁ…大人っぽくなった…かなぁ?」
「あん、もう!わからないならもういいわよ。まぁ、加奈子も斉藤君と一線を越えられたら分かると思う。私が言いたいこと。ちょっぴり世界が違って見えちゃうわよ〜?」
何て、少しいやらしい笑みを浮かべながら美佳子は言うけど……。
どんな風に世界が違って見えるの?
私には全然分からないって。
暫く無言でいる私に対して、とにかく!と、肩を叩いてくると、
「週末、頑張るのよ!応援してるからね♪」
なんて念を押されてしまった。
え……予定ではしませんけど?