「……変な事って何?」
「あー…いやー…そのぉ」
自分の言った事に取り返しがつかず、篤からのツッコミに言葉が詰まってしまう。
「加奈子、教えてよ。変な事って何?どんな変な事考えてたわけ?」
「いや、だから。変な事は考えてないって言ってるの!!」
……自分でも苦しい言い逃れだと思う。
これ以上突っ込まれると、すんごい困るんだけど。
考えてた事を言ってしまいそうで。
「だから、考えてなきゃそんな言葉が突然出てこないだろ?ねぇ、何?俺との間に秘密事作るの止めようよ。俺、そういう事されるの嫌なんだけど」
「秘密って……別に秘密にしてる訳じゃないってば。そんなに深く突っ込んでこないでよ」
「秘密にしてる訳じゃないなら言えるよね?」
何か……どんどん追い込まれてる?私。
加奈子?と、篤から見据えるような視線を送られて、私は暫く渋ったのち観念して徐に口を開く。
あぁ、もぅサイテー。
「……今日……美佳子から報告があったの……」
「報告?」
「その…昨日……彼氏と……エッチしたって」
「…………エッチ……」
私の言葉を反復しながら、篤がゆっくりと体を元の位置に戻す。
「で。その……次は……私の番だって」
はぁぁ、もぉ。何でこんな事喋ってんの、私!!
恥ずかしすぎて篤の顔が見れないじゃない。
自分の頬が熱く火照ってくるのを感じながら、俯きスカートの裾を指先で弄る。
「で、タイミングよく俺が部屋に来ない?って言ったから……あんな態度に?」
「……………そんな感じ」
私の言葉を受けて、篤は暫く口をつぐんでから、前を向いたまま俯き加減で呟く。
「加奈子はさ……俺とそうなってもいいかなぁとか思ってる?」
「………へ?」
「いや、だからその……エッチしてもいいかなって」
「えっエッチって…そんなのまだ全然っ!かっ考えてない!!」
あまりにも力強く言ったもんだから、隣から苦笑交じりに、加奈子らしいや。と言葉が聞こえてくる。
なによ、その加奈子らしいって!!
「でも俺、加奈子とそうなりたいって思ってるよ?」
「え?」
「前にも言ったよね、加奈子の全てをいつかちょうだいね、って。加奈子の全てを知りたいって思ってるし、完全に俺のモノにしたいって思ってる」
あのプールで言われた言葉。
全てをちょうだいねってそういう意味だったの?
全然……気付かなかった。
どこまで疎いんだ、私。
「でも、私何も分からないもん。やり方だって……分からないし」
「俺だって!……俺だってキス以上の事はやり方なんて分からないよ?だけど、加奈子と一つになりたいってそう思ってるから」
「………篤」
最後、私の方に顔を向けて言ってくる篤の頬が少し赤いのに気付き、それにつられて自分の頬も彼の倍以上赤く染まる。
「だから週末は、加奈子もそのつもりでいて」
そのつもりって……つまりは?
そうなるって事?!
え……ちょっと待って。何でこんな展開になっちゃったの?