…………美佳子のバカ。
美佳子があんな事言うから、何か変に意識しちゃうじゃない!!
どうすんのよ、もぅ。
昼休み、いつものように屋上で篤とご飯を食べてるんだけど、どこか落ち着かなくて、心ここにあらずって感じで篤の話が殆ど耳に入ってきていない。
先ほどの美佳子の言葉が頭を占領しているせいだ。
――――彼とね、えっちしちゃった。
――――それよりも何よりもすっごく幸せ。
――――次は加奈子の番よ?
そんな事言われたってあなた、どうすんのよ。
「……なこ……かなこ?……なあ、加奈子聞いてる?」
「え?あっ…うん。えと、ごめん。ナンだっけ?」
いつの間にか話し声が完全に聞こえてなくて、気づいたら篤が不思議そうに私の顔を覗き込んでいた。
「どうした?さっきからボーっとしちゃって。何か考え事?」
「え?ううん、何でもない。ごめんごめん」
「なんだよ、変なヤツぅ。で、俺の話聞いてた?」
「あ、ごめん。ちょっと聞けてなかったかも…もう一回言って?」
「ったく。人の話は聞かなきゃダメじゃん。あのさ、週末俺ん家来ない?」
その言葉にドキン!と高鳴る自分の胸。
なんてタイムリーな…
「えっ?!……あっ、篤ん家行って何するの?」
「え。何って……別に特に考えてないけど……」
私の反応に少し驚きながら篤がジュースのストローに口を付ける。
そしてサラッととんでもない事を口にした。
「……加奈子は何したい?」
何したい?……って……
────次は加奈子の番よ?……加奈子の番よ……加奈子の番よ…────
違う…ちがう、ちがう、ちがーっう!!!
「なっなな何って……べべ別に普通に篤の部屋に遊びに行くんだよね?」
別に篤がとんでもない事を口走ったわけじゃない。
私の脳内変換がおかしいのだ。
あぁぁ〜、テンパッてる。
私ってば何、異常に反応しちゃってるのよ。
もうやだー。頭の中、うるさいぃ〜〜〜〜っ。
「加奈子。やっぱ今日の加奈子、様子が変じゃない?何かあった?」
「は?へ……そんな、何もないよ?」
「顔……赤いけど」
「うっ、嘘ぉ!!」
訝しげな表情の篤の言葉に、私は慌てて頬を両手で押さえる。
それを見た篤が私の頭を両手で挟むと、自分の方に向けさせてコツンとおでこを引っ付けてきた。
「なっ?!あっ、篤??」
「いや。熱でもあんのかなぁって思って。でも、無さそうだし……ホントどうした?」
おでこをくっつけたまま篤が視線を合わせてくるもんだから、気まずくなって自分の視線が不必要に左右に動く。
なんとかこの場を切り抜けなければ……
「あの、ほんと……何もないから…心配してくれなくてもダイジョブ…だよ?」
「ほんとにぃ? な〜んかいつもと違うんだけど」
「ほっ、ほ〜んとほんと! 何でもないし、いつもと一緒だって! あーつしこそ、気にしすぎじゃない?」
「そっかなぁ…そのキョドり方、どー考えても変なんですけど」
げっ…。私、キョド…ってる?
あー、ヤバイ。どうしたらいい? どうしたら私はこの場を切り抜けられるの?!
美佳子のせいだ。美佳子があんな事言うから……
このままじゃ、篤にバレちゃうよ〜。
次は加奈子だー、とか言われて、変な事考えてたなんて。
「なあ、加奈子?」
「はっ、はぃ?」
「俺の目、見てみ?」
何故に……そのような拷問を?
「え、なっ、なんで?」
「その反応自体おかしいよね? いっつも真っ直ぐに俺の目を見てくる加奈子なのに、今はホラ…すんげぇ泳いでる。なあ、加奈子…ほんと何があった?」
「へっ?だから何も……何もないってば」
「じゃあ、俺の話も聞かずにさっきは何を考えてた?」
「え゛っ?! べっ、別に何も…何も変な事は考えてないって!!」
「………変な事?」
ヤバ……………墓穴、掘ったか?