ほんのり恋の味


未知なる世界へ ...02

…………美佳子のバカ。

美佳子があんな事言うから、何か変に意識しちゃうじゃない!!

どうすんのよ、もぅ。



昼休み、いつものように屋上で篤とご飯を食べてるんだけど、どこか落ち着かなくて、心ここにあらずって感じで篤の話が殆ど耳に入ってきていない。

先ほどの美佳子の言葉が頭を占領しているせいだ。





――――彼とね、えっちしちゃった。



――――それよりも何よりもすっごく幸せ。



――――次は加奈子の番よ?





そんな事言われたってあなた、どうすんのよ。





「……なこ……かなこ?……なあ、加奈子聞いてる?」

「え?あっ…うん。えと、ごめん。ナンだっけ?」

いつの間にか話し声が完全に聞こえてなくて、気づいたら篤が不思議そうに私の顔を覗き込んでいた。

「どうした?さっきからボーっとしちゃって。何か考え事?」

「え?ううん、何でもない。ごめんごめん」

「なんだよ、変なヤツぅ。で、俺の話聞いてた?」

「あ、ごめん。ちょっと聞けてなかったかも…もう一回言って?」

「ったく。人の話は聞かなきゃダメじゃん。あのさ、週末俺ん家来ない?」

その言葉にドキン!と高鳴る自分の胸。

なんてタイムリーな…

「えっ?!……あっ、篤ん家行って何するの?」

「え。何って……別に特に考えてないけど……」

私の反応に少し驚きながら篤がジュースのストローに口を付ける。

そしてサラッととんでもない事を口にした。



「……加奈子は何したい?」

何したい?……って……


────次は加奈子の番よ?……加奈子の番よ……加奈子の番よ…────


違う…ちがう、ちがう、ちがーっう!!!

「なっなな何って……べべ別に普通に篤の部屋に遊びに行くんだよね?」



別に篤がとんでもない事を口走ったわけじゃない。

私の脳内変換がおかしいのだ。

あぁぁ〜、テンパッてる。

私ってば何、異常に反応しちゃってるのよ。

もうやだー。頭の中、うるさいぃ〜〜〜〜っ。



「加奈子。やっぱ今日の加奈子、様子が変じゃない?何かあった?」

「は?へ……そんな、何もないよ?」

「顔……赤いけど」

「うっ、嘘ぉ!!」



訝しげな表情の篤の言葉に、私は慌てて頬を両手で押さえる。

それを見た篤が私の頭を両手で挟むと、自分の方に向けさせてコツンとおでこを引っ付けてきた。

「なっ?!あっ、篤??」

「いや。熱でもあんのかなぁって思って。でも、無さそうだし……ホントどうした?」

おでこをくっつけたまま篤が視線を合わせてくるもんだから、気まずくなって自分の視線が不必要に左右に動く。

なんとかこの場を切り抜けなければ……

「あの、ほんと……何もないから…心配してくれなくてもダイジョブ…だよ?」

「ほんとにぃ? な〜んかいつもと違うんだけど」

「ほっ、ほ〜んとほんと! 何でもないし、いつもと一緒だって! あーつしこそ、気にしすぎじゃない?」

「そっかなぁ…そのキョドり方、どー考えても変なんですけど」

げっ…。私、キョド…ってる?

あー、ヤバイ。どうしたらいい? どうしたら私はこの場を切り抜けられるの?!

美佳子のせいだ。美佳子があんな事言うから……

このままじゃ、篤にバレちゃうよ〜。

次は加奈子だー、とか言われて、変な事考えてたなんて。

「なあ、加奈子?」

「はっ、はぃ?」

「俺の目、見てみ?」

何故に……そのような拷問を?

「え、なっ、なんで?」

「その反応自体おかしいよね? いっつも真っ直ぐに俺の目を見てくる加奈子なのに、今はホラ…すんげぇ泳いでる。なあ、加奈子…ほんと何があった?」

「へっ?だから何も……何もないってば」

「じゃあ、俺の話も聞かずにさっきは何を考えてた?」

「え゛っ?! べっ、別に何も…何も変な事は考えてないって!!」

「………変な事?」



ヤバ……………墓穴、掘ったか?