「加奈子!聞いて聞いてっ!!」
朝、教室に入って行くと、美佳子が私を見つけて待ってましたと言わんばかりに、少し頬を赤らめながら満面の笑みで駆け寄ってくる。
「美佳子、オハヨウ。どうしたの?朝から大きな声で……何かいい事でもあった?」
「もぉー。この上なくいい事!って、言うか…すっごく幸せな事…かな」
「幸せな事?」
はにかみながら嬉しそうに、うん。と頷く美佳子を見て、へぇ、何々?といつも通りに返事を返す。
「あのね…実は…」
「うん、実は?」
「えっとね…………あぁ、やっぱ恥ずかしい!!」
……って、おい!
期待させるような言い方をしといて、そこで「恥ずかしい!!」は無いでしょう?
なによ、もぅ。と半ば投げやりな言い方をすると、美佳子は一つ咳払いをして深呼吸をすると徐に口を開く。
「ごめんごめん。えっと、実はね、昨日……」
「昨日?」
「うん、昨日ね。あのね…ダーリンと…その……」
美佳子は最後真っ赤に頬を染めながら、私に耳打ちするように小声で囁いてきた。
「………えっ?!嘘ぉ!!」
それを聞いた私の頬が美佳子と同じように真っ赤に染まる。
――――エッチしちゃった。
確かにそう聞こえた美佳子の言葉。
エッチって……その……所謂アレだよね?
男と女の……。
恋愛音痴の私だけど、最近みんなの恋話に耳を傾けるようになったから、それがどういう事なのかってくらいは理解できるようになっていた。
その行為について、最初聞いた時は卒倒しそうなくらい衝撃を受けたけど。
アレを美佳子と彼氏が…?
………………嘘ぉ。
周りの友達からはそういった話を聞くことがあるけれど、どこか自分とは関係ない遠い次元での話だなんて思ってたのに、一番近くにいる美佳子からそういった話をされると何だか妙に現実味を帯びてくる。
ちょっぴり衝撃を受けて、美佳子に対してどう言葉を言えばいいのか困ってしまった。
「あの…いっ、痛かった?」
一番初めに出てきた言葉がコレと言うのは悲しいけれど、一番聞きたい事でもあった……のかもしれない。
「うん、結構痛かったぁ。今もジンジンしてる。でもね、それよりも何よりもすっごく幸せ。」
そうニッコリと笑いかけてくる美香子の表情は本当に幸せいっぱいって感じで。
「そっかぁ、よかったね美佳子。」
思わず自分の顔からも笑みが洩れて、一緒になって飛び上がってる私。
「次は加奈子の番よ?」
「…………は?」
コソっと言われた美佳子からの言葉。
一瞬にして、私の動きが止まる。
今、何て?次は……私の番?
何が私の番だって?
「何、その反応。加奈子達だって付き合い始めてから随分と時間が経ってるじゃない。そろそろ進展があってもいいんじゃないの?」
「進展って」
私が?篤と??
篤とは手を繋ぐのも、キスをするのも最近は少しづつ慣れてきたけれど。
それだけで十分だって思ってるのはダメなの?
その先だなんて、まだまだ全然考えてないんだもん。
と、言うより私には考えられない。
「斎藤君も結構我慢も限界に近づいてるんじゃないの?いくら加奈子が恋愛音痴だって言ってても、彼だって男なんだからさぁ。あんまり待たせちゃうとかわいそうだよ?」
「かわいそうって言われても……。」
私にどうしろって言うの?