昼休み、私は昨日と同じように屋上で篤の隣りに腰を下ろしパンを頬張る。
「加奈子、ごめんな?」
大好きな『ハムレット』を今日も篤がゲッチューしてくれてて、それを味わっていると、ぼそっと隣りからそんな声が聞こえてきた。
「……ふぁ?」
「いや、ほら。友達と一緒に飯、食いたかったんだろ?無理矢理付き合わせたからさ…」
その篤の表情が少し悲しげに見えて、動かしていた口が止まる。
「えと…ううん。私こそ、ごめん。酷い事言ったよね。ほんっと、私って恋愛音痴だから。困っちゃうね」
「そういう加奈子も俺は好きだけどな」
「篤はさ…こんな私でいいの?傷ついたりしない?」
「全然」
「そ…、か」
にっこりと可愛らしく微笑まれて言葉に詰まる。
どうしてこんな私を篤は好きって言ってくれるんだろう。
私は好きって気持ちが全然分からなくて、篤を傷つけてるって気がするのに。
「なぁ、加奈子。明日の土曜日って何してる?」
「明日?んー、特に何してるって訳でもないけど…どうして?」
「デートしない?」
「は?」
「それとも休日まで彼氏に占領されんのは嫌ってか?」
そんな…イヤミな言い方しなくても。
「いや…じゃ、ないけど」
「そ?じゃ、デート決定!!加奈子はどこ行きたい?」
何だかんだ言いもって、篤も結構強引だよね。
お昼の事といい、デートの件といい。
「どこって言われてもなぁ…普通デートってどこ行くもの?」
「そうだなぁ。遊園地とか映画館とか?あ、ショッピングっつぅのもあるけど」
「遊園地か映画かショッピングねぇ…んー…じゃぁ、映画?」
「オッケー。映画って、加奈子は何系がいいの?」
「あー、恋愛系はパス。じれったくて見てられないから…アクション系?」
「ぶははっ!それ、加奈子らしー。りょーかい。じゃぁアクション系の映画見るか!!」
何で、そこで笑いが起きるんだ!!
あぁ、そうですよ。恋愛音痴の私は恋愛映画も苦手なんですー。
私はふんっ、と鼻を鳴らしてかじり掛けの愛しのパンを再び大きな口をあけて頬張った。