*「舌、絡ませて…」






「ぁっ…んっ…しゅ…ご…君」


しっかりと体に腕をまわされて抱き寄せられ、何度も角度を変えて浴びせられるキスに自分の口から甘い声が漏れ始める。


いつもそう…どれだけ何度も唇を重ねても、初めのうちはドキドキと胸が高鳴って、次第に何も考えられなくなってくる。

魔法のような彼からのキス。


うっとりとするように、体を彼に委ねると、舌先で唇を割って修吾君の舌が口内に入ってくる。



「美菜…舌、絡ませて…」



微かにだけどそう聞こえてきた修吾君の声。

思わず体がビクッと震える。



そ…そんな。絡ませてだなんて…今まで言った事なんてないのに。


急激にドクドクと脈が打ち始める鼓動に翻弄されながら、それでも彼からの誘惑に負けてしまっている私。

繰り返されるキスの嵐に、無意識に腕を修吾君の首の後ろにまわして、自ら彼の舌に自分のを絡ませる。


いつからこんなにも自然に出来るようになっちゃったんだろう。

あのマンガのように、赤面するような事を私は……


頭の片隅でそんな事を考えながら、ゆっくりと倒される自分の体。

修吾君は私を見下ろしながら、優しく微笑み頬を撫でてくる。

私も微笑み返し、再び彼からのキスを受け止める。


キスを繰り返しながら、一つ一つ脱がされていく服。

そんな事もついこの間までは、恥ずかしすぎて両手で顔を隠していたのに、今は頬を紅く染めるだけになっている私。


……変わっちゃったなぁ。なんて、思ってしまう。


「美菜…綺麗だよ」

「修吾君…ぁっ…んっ」


修吾君は一糸纏わぬ姿の私を愛しげな眼差しで見つめてから、そっと掌を身体に滑らせて、胸の蕾を口に含んで優しく弄ぶ。

次第に息があがり、火照り出す私の体。

恥ずかしいくらいに自分の秘部が熱い蜜で潤ってくるのが分かる。



「美菜?すごい濡れてるけど…マンガ読んだから?」

「なっ?!ちっ…違いマス!へへ変な事言わないでよぉ…」

「そう?アレを読んで変な気分になっちゃったのかと思ったけど…違うんだ?」


クスクス。と笑いながら秘部に指先を這わせて、意地悪く視線を投げてくる修吾君。


……もぉ、やだぁ。


恥ずかしくなって視線を外して横を向くと、それを許すまいと彼の唇が私の唇に重なる。



「あっ…いやっ…しゅ…ご君っ…ダメっ…あぁんっ」

「美菜…ダメじゃなくて、いいって言わなきゃダメでしょ?ホラ…マンガみたいに言ってよ」

「んっ…やぁっ…恥ずかしいっ」

「恥ずかしくないって…ホラ、言って?マンガではなんて言ってた?『いい』とか『もっと』って言ってなかった?ねぇ、美菜」


修吾君はワザと息を吹きかけるように耳元で囁き、ペロッと耳を撫で上げながら、秘部に刺激を与えてくる。

くちゅくちゅっといやらしく響く卑猥な音。

それに上気しながら、先ほど見てしまったマンガの一場面が頭にチラッと浮かぶ。



『――――…いい…もっとそこ…』


『――――…あんっ♪いい、いいわタケル…もうイっちゃう!!』



やっヤダヤダっ…どうしてあんな場面が頭に浮かんじゃうの?


今の自分の状況と、マンガの一場面がシンクロして、途端に真っ赤に頬が染め上がる。

そんなモノに翻弄されながら、一度目の軽い絶頂を迎えると、修吾君は満足そうに微笑んでから、自分の着ているものを脱ぎ捨てて準備を整えると私の火照った身体に覆い被さってくる。



「美菜…今度はちゃんと美菜の口から言ってね?」



なんて、悪魔の囁きを耳で唱えながら、ゆっくりと彼は自身を私の中に進めてきた。



「はんっ!…そんなっ…あぁっ…」


なっ…なんて事を言ってくるんでしょうか、このお方は。


修吾君はうろたえる私に追い討ちをかけるように、律動を送りながら耳元で、こんな恰好をしてたね?とか、こういう事言ってたね?なんて実行に移しながら囁いてくる。


うがあぁっ!そっそんな事言われたら、また思い出しちゃうよぉ。

修吾君、意地悪だぁ!しかも、しかも!!なんでそんなに事細かに覚えてるのよぉ…チラッと流し読みしただけなのに…。


色々な角度で攻められつつ、言葉でも追い討ちをかけられながら、完全に私の頭の中は崩壊していった。


もう、何も考えられない…何も浮かばない。


マンガの中の情事とセリフ…そして、修吾君から送られる快感の波と耳元で囁かれる甘い言葉…それ以外は。


「あぁんっ…もっ…いあぁんっ…ダメ…ダメっ!修吾君っ…私、わたしっ!!」

「美菜…イキそうなら…言って?美菜っ…」

修吾君からの言葉に恥じらいを覚えつつも、与えられる高波にプツンと何かが弾け飛んだ。

「でもっ…あっ…あっ…もう…いっ…イっちゃう…修吾君…ダメえぇっ!イっちゃう!!」

「はぅっ…美菜っ…すごっ…締め付けがっ…くぁっ!俺も…っ!!」


グッと足を押し広げられて、激しく身体を揺さぶられる。

頭が真っ白になり、身体が痙攣のように震えると同時に、修吾君が奥深くで熱いものを解き放ち、色っぽい息を吐きながら私の体に倒れこむ。


「美菜…すごく気持ちよかったよ…」

「修吾君…」

「愛してるよ、美菜。今日はいつもにも増して可愛かったね」

「んもぅ!へっ変な事言わないでください!!」


少し汗ばんだ髪を撫でられながら、クスクス。と笑われて、ついつい頬がプクっと膨らむ。


だって、なんか……恥ずかしいよ、もぅ!!



「たまには桂木さんもいい事してくれるよな」

「へ?」


私の髪を指先で梳かしながら、そんな事を言ってくる彼に、きょとんと首が傾く。


「どうせ彼女の事だから、俺と一緒の時にコレを読めとか何とか言ってきたんでしょ?」

「う…うん。勉強になるわよ〜とか…受験勉強の息抜きにとかって言われたケド…勉強になんてならないよ…もぅ、恵子ってば」

「そうかな?俺としては息抜きにもなったし、美菜もちゃんと言えるようになったしね?ある意味勉強になったカモ?」

「なっ!?」


な…何をちゃんと言えるようになったんでしょうか?


意地悪く笑う修吾君に横目で少し睨みつつ、恥ずかしすぎて頬が真っ赤に染まってしまう。



事の発端のあのマンガ…今日の帰りにでも恵子の家に寄って即行で返そうカナ。

いや…返さなければ絶対ダメ!!

だって、おかしくなっちゃいそうなんだもん。


修吾君からの優しいキスを受けながら、頭の片隅でチラッと机の横に置かれている表紙が裏返されている存在が掠った。


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