困った彼で10のお題 07

 変態!!!






 別に狸寝入りをしてたわけじゃない。
 うつらうつらとしていた……ただそれだけを言うために目を開けるのもおっくうで。
 色々と意識して確認出来るが覚醒はしたくない──そんな微睡みに甘える中で、小十郎は俺に羽織を掛けた。小十郎自身の羽織。目を開けなくても解る。重みや、羽織に付いている匂いで解る。そしてこいつの匂いでどこか安堵を覚える俺も重傷だ。
 子供の時から絶対庇護として傍に居たからか、身体が覚えていて安堵する。もちろん小十郎は俺に意見も言うし反論もするし容赦もない。でも、その後ろに控えている感情を知っているから、こいつのこの少し汗臭い匂いでもホッとしてしまう。
 いい夢が見れそうだ……と、そう思った時、頬に手が置かれた。
 大きな手だ。
 硬い手だ。
 ざらざらして、熱い手だ。
 起きている時は触れようともしない癖に、俺が完全に寝てると思ってつい触れたんだろう。だがその手は撫でようともしない。ピクリとも動かない。ただ添えられただけ。それだけで満足だと物語る。
 ただ置かれた手。触れた手。添えられた手。
 なのに何故だろうか体温と一緒に小十郎の想いが伝わる。言葉にならない感情が伝わる。
 ただただ、存在を肯定する甘い手。
 ──クソッ
 いかれてる。
 そんな想いを手だけで伝えてしまうこいつも、そんな想いを手だけで読み取ってしまう俺も。
 甘い手。甘い匂い。甘い感情。
 甘い微睡みの中で、うつら、うつら。