困った彼で10のお題 03
甘えたがり
隙を見てゴロリと奴の膝を枕にすると、何かを言いかけた口が開いたまま固まった。で、固まって、無理矢理閉じられたかと思うと“仕方がない”と少し呆れたような表情を浮かべて、眉間に皺寄せる。
「これでは小十郎の仕事が‥‥」なんてブツブツ言い出したり。
「へーへー」と一応宥めながら、膝上でゆっくり瞳を閉じた。
まったく、素直じゃない。
俺じゃなくて小十郎が。
何せブツブツと小言を言いながらも、どこからともなく櫛を取り出し、いそいそと俺の髪を梳き始める。そして梳き始めると今度はそれをきっかけに、色々とチェックが始まるのが常だ。
耳ん中はまだ綺麗かだとか、うなじに残る後れ毛が目立ち始めただとか、爪が伸び始めただとか、色々と理屈を口にしながら俺に触れてくる。
触れて、撫でて、又触れて。
こうやって、なすがままにしないと奴は触れてこない。
遠巻きに、まるでお預けをくらった犬みたいに、触れたいのをいつも我慢する。
「まったく‥‥息抜きばかりでなく‥‥」
「わかってる。わかってるからもう少しゆっくりさせろ」
俺の台詞に溜息が吐かれるが、同時に大きな手が、飽きないのかとつっこみたくなるくらい優しく触れ、撫で続ける。
気付かないとでも思っているのか? 俺はお前の主だぜ? 甘えさせるのも仕事の内だ。
了