オトメディア12月号付録から妄想 〜アニメその後話〜

 10/31・双竜祭で急遽配ったペーパーの小話






  ◇◆◇


 一気に肌寒くなってきた今日この頃、伊達軍は一時の休息を得ていた。
 あの豊臣軍の崩壊と、なにより拉致されていた小十郎の帰還という政宗にとって最も憂慮な事柄が無くなったのだ。そりゃ一息も二息もつく。
 お留守番の別名本城の守りを命ぜられていた成実は、二人仲良く揃って米沢城にご帰還する姿を見た時の、あの何とも言えない安堵感を思い出す。
 ぼろぼろになりながらも伊達軍が帰ってきて、政宗が無事に帰ってきて、小十郎も無事に帰ってきて。それは目に見える伊達家の安泰の象徴。そう、政宗一人でもこの奥州を象徴するが、磐石を絵にするなら小十郎が必要で。
 だめなのだ。欠けてはだめなのだこの二人はと、改めてそう思った。
 確かに、小十郎がいなくても政宗は筆頭としての仕事をするが、精神的な安定感が全く違う。小十郎は間違いなく政宗が全てなのだから、その全てを隣にし、いつもの小十郎として帰ってきて。
 共依存? 違う違う。似て異なるもの。もっともっと、根本的な所。歪だけどもっと純粋な羨ましい関係で繋がっている。今回のことで、二人は更に思い知ったのだろう。欠けることの怖さを。
 またいつも以上に煩い日常になるかな? いやいや、当分は大人しいかな? などと考えながら成実は手に持っていた書簡の束で軽く肩を叩き、薄暗い夜の廊下を歩く。
 帰ってきて早々申し訳ないのだが、急ぎの書類と懸案がある。数日は、小十郎の過保護メーターが振り切れ(いや、勿論大けがもしてたが)政宗は大事を取って休み休みだったが、そろそろ通常職務に戻っていただきたいし、何かあれば部屋に来いと言われていたのでさっそく言葉に甘えようと政宗の部屋に向かっていたのだ。ま、仕事だけを突きつけるのも悪いので、酒という手土産をもって。
 俺だってつのる話はあらーな。大体、自分が飛び出す度に城の守り任されるのは性分じゃないんだよ。今度こんな事があったら俺も連れてけ〜──などとぶつぶつ思いながら、薄明かりの漏れる政宗の部屋に到着した。
「おーい、政宗〜、溜まってる書簡とあと良かったら酒……──ヒッッ」
 断りを入れるのを忘れ勢いよく襖を開ければ、本気モードの小十郎が片膝を立て、抜刀直前でこちらを睨んでいる。正直、開けた襖側がに政宗が座ってなければ、小十郎が座っていれば、一太刀の様相だ。
「成実……」
 少し驚いた風に困惑を眉で訴える小十郎に成実は、呼吸が勝手に止まっていたことを思い出し、走ってきたようにゼーゼーと呼吸し始めた。
「なんなのなんなのなんなのー!! 今殺そうとしたよな? 殺そうとしたよね!?」
「a〜、落ち着け成実。断りなく入ってくるお前が悪い。再三いってるだろう」
 杯を片手に振り返ってこちらを見上げる政宗は、小十郎とは対照的に、いつもの変わらぬ成実の行動にクスリと笑う。
「そりゃ……まぁそうだけど」
 よくよく見れば、小十郎の前には酒が零れ、転がる杯。曲者かと慌てて刀に手をかけたことは一目瞭然。水入らずの晩酌に水を差してしまったようなのだが、成実はこの光景に少々違和感を感じ小首を傾げた。
「全く。しかも政宗様の背後から。そちら側は通常使うなとあれほど……」
「あーもー、ごめん、悪かったって! 酒盛り邪魔したのも謝るからさぁ」
 チンッと音を鳴らして刀を鞘に収めると「まったく」と呟きながら、小十郎は零した酒の後始末に取りかかる。
「で、どうした成実」
「え? あぁ、うん。書簡と……」
 と、手に持っているモノを政宗に説明していたが、成実はもやもやとする違和感を先に口にした。いや、流せばいいのだ。小十郎の警戒もおかしくない。主を思う当たり前の行動、そこから引き出された光景。なのにその当たり前の中に、何かが引っ掛かる。
「なあ小十郎。俺だと気付かなかった?」
「?」
「an? おい成実、何言い出してる?」
「いや、だってよ、小十郎がこんな寸前になって人の気配に気付くなんて変だろ?」
「お前は身内だから小十郎も気が緩んだんだろ」
「そこだよそこ。緩んでも薄々は気付くだろう? なのに殺気むき出しでビシバシだったってのが……それを証拠に政宗慌ててねぇじゃん。小十郎の方は杯落として抜刀する慌てようがわかんねぇんだ」
「……たしかに」
 二人の視線を浴びながら、後始末のすんだ小十郎は困ったように眉を寄せ、二人を見た。
「そうは言われましても……。政宗様に何かがあってからでは遅いのです。そして恥ずかしながら慢心の結果、察するのが遅れ、申し訳ございません……」
「ま、いつもこれだと困るが、たまにはそういう時もいいさ小十郎」
「……ハッ」
 目の前で穏やかに話がまとまりかけているが、それでも成実のもやもやは晴れず、小首を傾げる。そして閃いた。
「あ。」
「あ?」
「小十郎、政宗に見惚れてたな」
「!」
「見……惚れ?」
「成実! そう憶測でべらべらと!」
「え? 政宗時折超かっこいいじゃん。小十郎もよく見てるくせに」
「な!!」
「……」
 成実にしてみれば、邪心も裏も表もなく事実を述べているだけで悪気などこれっぽっちもなく、政宗はその事実を知って意識し真っ赤になってしまい、小十郎は確かに事実であるがこの場で指摘されることではなくと慌て。
「成実! そう根も葉もなく」
「根も葉もなくってよく言うぜ。そりゃさぁ、育てたに近い政宗が立派になって惚れ惚れするのも解るけど、時々?は緩んでるわ視線はそれないわで若干……」
「……小十郎、そうなのか?」
 少し顔の赤いまま、政宗が小十郎の顔を伺えば「は、それは、ご立派になられたのはこの小十郎の誉れでございますからして」と、身を小さくさせながらも事実を誤魔化すことはしなかった。
「そんな政宗とさ、一緒に帰ってきたとはいえ久しぶりにゆっくりとした時間貰って、見惚れないわけないでしょ? 違う?」
「……」
「そ、そうか。」
 あっけらかんと述べられた悪気のない事実であるにしろ、変に意識させるには十分で、政宗は思い出したように持っていた杯に残っていた酒を飲み干し、小十郎は一気に黙ってしまった。
「? 俺、なんか余計なこと言った?」
「いや……」
「……」
 二人借りてきたネコになって黙り込んでしまう。その様子にぽりぽりと成実は頭を掻いた。ここまでくれば肝心なところがすっぽりと抜けてる成実とて、まずかったと察しつく。
「本当、お邪魔だったみたいだな」
「そんなことはない」
「そんなことある。ま、酒、置いていくから小十郎と仕切り直してくれ」
「……成実、大事な用があるのではないのか?」
「いーよ、もう。明日小十郎が葉っぱかけてくれれば。小十郎の一世一代の告白より大事なもんはねぇだろ?」
「!!」
「告……白? いったいなんの、」
「まーさかぁ。俺もそこまで鈍感じゃねぇよ。そっかそっか、いい雰囲気の所邪魔しちまったんだな」
「──は?」
「!!!」
「そりゃ刀も抜きたくなるよな。ハハ。じゃ、お邪魔しました〜」
 そう言って手を振り、成実は爽やかな笑顔で部屋を後にする。
 そりゃ告白の途中で邪魔が入るとはおもわねぇし、入ったら小十郎だってびっくりするし刀抜きたくなるよなぁ、うんうん──と、変なところで悟りをひらき、一人で納得する。

 実際は。

 確かに成実の読みは当たっていた。が、告白の途中ではなく、告白をしようと心に決めた途中であり、政宗はその事に全く気付いていなかった。
 つまり、この狙ったような成実の水差しによって完全に小十郎は告白の機を逃し、逆に政宗は以前にも増して小十郎を意識する切っ掛けとなってしまった。
 その事が判明するのは二人が晴れて気持ちを通じ併せる、そう遠くない後日であった……。













−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 最近のアニメ雑誌はすごいなぁと思ったオトメディアの付録の絵(笑)
 誰かが部屋を覗くと政宗が晩酌をしていて、政宗は余裕の表情なのですが、
 小十郎は驚いて今にも刀に手を……といった構図で、いやはや、小話一つですw
 丁度双竜祭に何にもないのは悲しいなぁと、急遽ペーパーに致しました。
 出し尽くされたネタでございますがまぁこんな感じでw
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−