嵐
不楽是加何 小夜嵐之篇02
海から吹き荒ぶ早朝の風は、冷たいというのにさらりとせず、なんとも言えず肌に絡みつく。水分が含まれている潮風のせいだろうか?
松林を過ぎると、地面の砂は平地のそれと完全に変わっていた。
うっすらと水平線から上る朝日を背景に、波の音に掻き消えない男達の怒号が飛び交い、慌しく荷物が港とは名ばかりの海岸に乗り付けされた船へと運ばれる。荷だけは前々から用意させ運ばせていたが、それでも結局余裕なくバタバタとしてしまった。
天候は快晴。いい船出日和だ。
「お〜い、右目の兄さん!」
久しぶりの奥州来訪で数日間、街や周辺を探索するだけ探索し冷やかすだけ冷やかして、目新しいものから商談に持ち込めそうなものを買うだけ買い込んで、陸地生活も相当楽しんでいた元親だったが、さて船へ案内するとなって海が近づいてくると、家臣はもとより政宗も小十郎もそっちのけで馬を走らせいなくなった。
その元親が、我が家に戻ったとばかりに一足先に船に乗り込んで、海の男達の動きを眺めていた小十郎に向かい、甲板から大手を振る。
いつも以上に生き生きとした表情に、小十郎は少し笑って手を挙げ応えた。
「竜はどうした、竜は」
一緒にいたはずの政宗が見当たらずそういうと、小十郎は笑みを苦笑いに変えて視線を少し動かすに止まる。
「?」
その笑みの理由がわからず、甲板から岸へと伸びる、船を岸に留める為の太い縄から一本見繕うと、もっていた手の平以上ありそうな鈎針を引っ掛け、荒っぽく、それでいて慣れた手つきでそれにつかまり・伝わせて元親は岸へと降りたった。
見た目以上の身軽さはここからかと小十郎は感心する。
「っと‥‥んで、竜は?」
元親の言葉に、やはり苦笑い気味に視線で主の居場所を示す。
船から少し離れた岸辺。彼はそこにただ立っていた。
何をするでもなくただ立って、水平線を眺めている。
「? なんだ? あんなところに突っ立って。」
「えぇ、まぁ‥‥海は初めてなものでして」
「はぁ!?」
海を生業としている元親にとってはあまりにも信じられない言葉に、目も口も大きく開いてしまう。
「マジかよ‥‥」
「えぇ、マジです。」
山奥育ちの大将ともなれば確かに珍しい事もないが、博識であり見栄を張ることが自然な政宗は、そんな事を気取らせるわけもなく。
「つーことはなんだ、船も初めてか?」
「小船等ならありますが、戦船ともなると見るのも乗るのも初めてですよ」
「兄さんは?」
「普通の船なら‥‥。しかしここまでの軍船は、海の者でもそうそうお目にかかることは少ないと思いますがね?」
ごてごてしいものではないが船の知識に明るくない小十郎でも、この船がどの程度のものか判断がつく。全体が大きいながらも最軽量に納め、帆の大きさと数から、大きな船体であるにもかかわらず、速度と小回りを優先している事も窺える。対陸ではなく、上陸用…もしくは海上白兵戦用といったところか。加えて大量の積荷や人間を運ぶのにも適してそうだ。
「へへ、まーな。にしても、海は初めてかぁ」
「えぇ。気の済む様にさせて下さい、長曾我部殿」
「あぁ。人間初めての経験ってモノはじっくりして感動するのが一番良いさ‥‥っと、兄さん」
顔を鼻先まで詰め寄らせ、元親は目を据わらせる。
「?」
「いい加減その長曾我部殿長曾我部殿ってのも堅苦しいし、言葉遣いがこそばゆい。飲む打つ買うした仲じゃねぇか、もっと気楽に呼んで話してくれていいぜ。」
数日間滞在している間、確かに二人の晩酌に呼ばれた。そして二人のしょうもない賭け事にも巻き込まれ、これまたやんちゃ坊主二人の城下街漫遊にも付き合わされもしたが‥‥
「お心遣いありがとうございます。──しかし政宗様もそう呼んでいるというのに、この小十郎がやすやすとは」
「あーれは、お互いクセだからな。呼び方でいけば殆ど鬼だの竜だの、全く人外だ。気にする事はねぇよ。」
「では、咄嗟に呼んでしまった際はお許し願いたく。」
「ハッ。咄嗟でなくてもいいっていいって。てか、咄嗟って言うよりも地が出た際‥‥だろ?」
確信的な笑みに、小十郎は苦笑いで返す。全く誰かとよく似ている。
「ま、二人ン時ぐらいはあんまり堅苦しく考えないでくれ。この同盟がどのくらい保つかは判らねぇが、俺は独眼竜同様兄さんの事も気に入ってる。それに同盟組んでる間はまぁ‥‥家族みたいなものじゃねぇか」
直球でいて素直な言葉に、参ったとばかりに溜息が漏れてしまう。
「やれやれ…やんちゃが倍になって、この小十郎の身が持つのか‥‥」
「ハハッ、言ってらぁ」
そんな談笑の合間に入った家臣の合図を聞き逃さず、元親は表情を引き締める。
「どうやら荷は終わったようだ。兄さんよ、呆けた竜でも船に押し込めるか」
同意の笑みを向け、二人は飽きもせず海の彼方を眺める政宗の元へと向かう。
さくりさくりと浜辺独特の足音が、人の声にも、波の音にも消される事なく静かに響く。
政宗は、ゆっくり近づく二人の足音に気付いているだろうが微動だにせず、潮風に吹かれ、水平線を眺めていた。
ただそれだけの事に二人、その背に声がかけ辛く、彼が眺め見る海の彼方を一緒に眺め見る。
朝の、薄暗いながら蒼になりゆく空と海。
静かに小十郎が一歩を踏み出した。
「──政宗様。そろそろ出航でございます。」
「‥‥あ、ん、判った」
生返事‥‥まではいかないものの、視線は水平線から離れない。
「船に乗りゃぁ当分海だ。飽きるほど眺めてられっぜ」
「──そうだな」
元親の言葉に同意して、やっと、意を決したように政宗は振り返った。
「なぁ、」
「あ?」
「空は頭上にあるものとばかり思っていたが、そうじゃねぇな」
「?」
政宗は笑う。笑って、水平線の先を指す。
空は何処までも続き、海を包むように混じる。
頭上ではない空の端。
小十郎は微笑む。
「天下と、一緒ですな」
その言葉に、竜は満足げに微笑んだ。
嵐
元親の歩みを、“陸に上がった河童”だのと揶揄した政宗だが、さて海に出てしまえば“水を得た魚”。生き生きと船上で指示をし、船を走らせる。
小十郎の読み通り足の速い船だった。しかも大型船なので安定しており、思ったよりも船酔い等はなかったが、それでも伊達軍に脱落者が出てしまったのは仕方ない。
“これだから陸のモンは”と逆に揶揄される結果となったが、その揶揄を禁じたのは、頭目である元親だった。
──鬼だの海賊だのと荒くれた印象を持たせる割には、配慮という配慮が回りすぎる坊やだな。
それも意識してではなく、素でやってのけるところに性格が現れる。この時代にそれでは貧乏くじを引くぞといいたくなるが、勿論その美徳は嫌いではない。多分政宗も、そういったところが気に入っているのだろう。
日も高くなると、追ってくる海鳥はもうとうにいなく、日が暮れ始める今となってはかなりの沖合いに出たようだ。潮の流れ、風の読み、どちらを捉えるのも呆れるほど早い。
──素人には参考にもならん。
身に付いた経験・職人技といったところか。
何隻かに別れ伊達軍の者を乗せはしたが、戦のためだけにというものではなく、海の航行技術を学ばせるためでもあった。この先の戦で、海を展開した戦略がないとは限らない。付け焼刃で海上戦に挑もうとは思っていないが、人や物資を運ぶ選択としての幅や、突破口としての方法が増えるのは確かだった。
「兄さんは本当勉強熱心だなぁ」
辺りをくまなく散策している小十郎に、少し呆れた風な声がかかる。左目を隠す大きな眼帯を軽くかきながら、元親が近づいてきた。
「初っぱなからそんな飛ばし気味でいいのか? その調子で行くと、やることなんぞすぐになくなるぜ?」
「何を。覚える事が多すぎて時間が足りるやら‥‥」
“はぁ”と溜息を吐く小十郎の手には紙と矢立。確かに陸の彼らには手伝えること等は少ない。かといって暇をもてあます事も勿体ないと、手当たりしだい吸収できるものは吸収しようという貪欲さに目を見張る。
「兄さんがこれだと、独眼竜はどんな大食漢だか」
「ん?」
「いや、こっちの話だ。‥‥そういやぁこの前独眼竜とも話したが、航行技術や関係書物は又回すぜ?」
「書物で知ることには限度があります。百聞は一見に如かずとはいい言葉です、長曾我部殿」
「‥‥」
ちろりと、もの言いたげに元親は隻眼を向ける。何処ぞの隻眼も雄弁だと小十郎は内心笑う。
「失礼、元親殿」
「‥‥ま、いいとするか。で、本体は? 酔ったか?」
「いや、酔っちゃいないと思うが‥‥なにやら考え事をされている」
朝、船に乗り込む前に憑かれたように眺めていた海と海の彼方。その先に主は何を見たというのか。
視線が、自然と落ちてゆく。
「ふむ。ま、考え事をするには船上はかっこうだ。──ほらよ」
不意に投げ渡された竹筒は、受け取った瞬間ちゃぽんと鳴る。中身は液体のようだが。
「これは?」
「ゆず茶だ。さっぱりして考え込んだ時はこれに限る」
「──忝ない」
鬼は柔らかくなりゆく日の光を背景に、屈託なくニコリと笑った。
船の中はスペースが限られているため、人を運ぶ事に特化した船でない限り、狭い上、否応なく雑魚寝であることが殆どだが、元親の船は本当におもしろい作りになっていた。用途によって区画をセパレート出来るようになっており。政宗や伊達軍の者のために、いくつかの部屋も用意してくれた。
足の速さ・小回りの良さを物語る小早の数も並ではなかったが、基本的に彼の船は、日本固有の和船とはどこか違っていた。
──知識は並じゃねぇな‥‥
ここからどれだけの知恵が自分達のものとして吸収できるか。大仕事に目眩を覚える。
「失礼します。政宗様、いらっしゃいますか?」
場所が場所であるため、護衛のための太刀持ちや側小姓などはつけられない。それでも一緒に乗ってきた若衆達は政宗の身を案じ、見張りを名乗り出てきたが、彼らの仕事は兵というだけではなく、多様な情報と知識を吸収し持ち帰る事でもあったので、政宗と二人して活を入れて蹴散らした。
手始めがこの西海の鬼・長曾我部元親の海上技術。元親も、技術を伝承する事自体には抵抗なく、ビシビシ鍛えてやると笑っていた。
チャンスというものはそう易々とない。知識は、技術は、盗める時に盗まなければ後はないものなのだから。
「入れ」
声に促され木戸を開け入ると小さな文机を前に、政宗はなにやら筆を走らせている。
部屋とされているところは板の間であるが、歩くところから一段高く設定されており、狭い造りであるが部屋としては十分なものであった。
戸を閉めた後小十郎は勿論上がらず、一段下で膝を折る。
明かりにしている油はどうやら魚から作ったものらしく、独特の臭いが少し鼻をついた。
「‥‥薄暗い部屋での文字は目を悪くされますよ」
「とは言っても外で纏める訳にもな。‥‥で、どうした?」
「長曾我部殿からゆず茶をお預かりしました」
「ゆず茶?」
文机から顔を上げ向きを正し、小十郎に上がるよう目を配る。
一礼し、少し上がった所で小十郎は、竹筒と何も入っていない湯飲み代わりの木の椀を差し出した。
「茶といっても冷水で‥‥なんと言いましょうか、甘いながらさっぱりしたものです」
「ふむ」と相槌を打って受け取った竹筒の水筒を見るが、政宗はその栓を抜こうとせず黙ったままじっと眺める。小十郎もそれに何も言わず言葉を待つ。
沈黙の中で、海の‥‥波の音がいやによく聞こえた。
ゆらりゆらりと、身体は一定のリズムを刻む。そして、そのゆったりとした揺れに促されるように、政宗は言葉を紡ぎ始めた。
「──少し、落ち込んでいた」
「‥‥」
「和尚が口酸っぱく『大海を見よ』といってたのが‥‥今まで理解できているように思って理解できてなかったってことにな」
そっと、政宗は文机に水筒を置く。
「俺は本当に何も知らない。知ったつもりばかりで頭でっかちなまま空を飛ぼうとしていた‥‥いや飛べると思っていた臥竜だ」
「政宗様‥‥」
「元親の達観性はこの海で培われたんだろう。俺のように狭い世界でうじうじと考え、作られたものではなく‥‥。この、空と変わりないほど広い海で自然培われた──そんなことを考えて少し落ち込んだ。その上に、あいつもいい部下に恵まれながら、誰か一人におんぶに抱っこって訳じゃねぇと思うと‥‥な」
そう言い切って小十郎を見る目は、なんとも晴れ晴れとし、口元は笑みで結ばれている。
どうやら、良い方に頭を打って落ち込んでくれたようだ。
知恵を、教訓を、知識を頭で多く吸収しても、経験ほど自らの身につくものはない。
──まったく。機というものは意図せず来るものだな。
必要な物事は必要とした時に来る。人生の中で何度もそれを経験していても、この不思議にはいつも驚かされる。
この旅は伊達軍にとっても、主にとっても必要な旅なのだ。そしてこの機が、竜の飛翔の機であることを願わずにはいられない。
小十郎も応えて笑みで返す。
「それはそれは、気付かれて何より」
喜ばしくそう言うと、途端ムッとしたように口を曲げ、政宗はずいっと草で編まれた座布団ごと、小十郎の方へとにじり詰め寄った。
「お前は、主が落ち込んだと言ってるのに、慰めようとするとか、そう言った配慮はないのか? aha〜?」
「慰めが必要な子供でもありますまい」
「慰めが必要なのは子供だと決まっている訳じゃねぇだろう?」
隻眼が発する光の色が変わる。
悪い癖が顔を出したなと小十郎が顔をしかめると同時に、ツイッと政宗の手が伸びてくる。
瞬間、本能的に、小十郎は主である政宗の顔が近づかないよう、己と彼の顔の間に手を挙げ壁のように遮った。
「‥‥──こじゅぅろぅ〜」
「なんでしょうか?」
遮っている手で表情は解らないものの、どんな顔をしているか想像に易い。
「テメェはどうしてそう可愛げのねぇ」
「この小十郎にかわいげがあった方が困ります。大体、当分ないと──」
どたーんと、板の間に響く音。
最後まで言い切る前に壁にしていた手をわざわざ両手で押し退けられ、小十郎は押し倒された。
「政宗様っ!」
「大声出すな。誰かが来たら困るだろう」
しれっとそう言いながら、小十郎の肩を床に押さえつける。
六本刀を操る手に掛かれば、小十郎とて縫いつけられたも同じである。
「こちらが困ります!! 大体ここをどこと──」
「鬼の船の中。」
「政宗様!!」
怒りを拭くんで名を呼ぶと、ズイッと鼻先まで顔を近づけられる。
その目はどこか覚悟を含んでいた。
「鬼の‥‥、船の中で、嵐が起きちゃ困るだろ?」
「? いったいなに──」
言葉の意味を聞く前に唇を塞がれる。口吻は最初から手加減の無いものだった。
息が上がる。
小十郎からということは殆ど無いが、お互い欲する欲としては同レベルか、もしくは主より上回っていることを小十郎はぼんやりと自覚している。だからこそ、いきなり手を抜かれないで来られてしまえば、自重という言葉は脳の片隅に追いやられ、白旗をあげるしかない。
それでも意地を見せようとするが、それを見透かすように政宗は口付けをやめると、小十郎の瞳を覗き込んだ。
「──俺は、お前に遠慮するのをやめることにした。」
「‥‥貴方がいつこの小十郎に遠慮したのか聞きたいですね」
「ハン。いつも遠慮している。遠慮もするし、自信もねぇ」
「?」
言葉の意味がわからず戸惑う小十郎に、今度はニコリと微笑んでくる。ますます解らないと躊躇する小十郎の顔に足を向けて政宗は馬乗りとなる。
「俺がどんな嵐を飼ってるか、お前は知らないだろう?」
主がかけてくる言葉が、まるでなぞなぞのように小十郎の頭の中をぐるぐると廻る。
ただ解っているのは、これからどれぐらい己を抑えることが出来るかという、拷問のような愉悦が待っていることだけだった。
■□■
初日から大変な目にあった小十郎の気はこの上なく重い。
長年仕えているからといって、すべて把握できるかと言えばもちろん出来ないが、今回はまったくもって溜息しか出てこない。理由は一つ。何処で火が点いたのかは解らないが、あれは簡単に説明を付けてしまえば拗ねとヤキモチである。
(はぁぁぁぁあ。)
文机に向かい心を落ち着かせようと書類をまとめていても、気が付くと溜息が出てしまうほど集中できない。
一体何歳の子供か。しかも本当に子供ならいいが、大の大人である。姑息な知恵の付いた子供が、拗ねて甘えてくる。
誰が太刀打ちできるというのか。
また溜息が出てきた。するとどんどんと気が重くなる。
航海も三日目に入り、房総半島上総を過ぎて安房近くまで船は進み、いつも以上に悪童と化した小十郎の主は、久しぶりに陸地が見られるということでやっと自分から離れて部屋を飛び出してくれた。
平穏がこの身におりてくれた。二人っきりになると気が気でないといったのが正直なところだった。
ここを何処だとと何度説教にかけても、のれんに腕押しで埒があかなかった。今回は本当に酷い。聞く耳すら放棄しているのは希だ。しかし拗ねやヤキモチといってもその原因が見あたらないから一苦労で。
「──右目の兄さん、邪魔していいか」
滅入りそうな気分にまるで風が通りすぎるような、そんな雰囲気の声が戸口でかけられ、慌てて木戸を開けようと立ち上がる前に扉は開けられた。
「なんだなんだ、辛気くせぇな。ちょっとは独眼竜見習って外へ出たらどうだ」
了承の声を待たずしてずかずかと上がり込んできた元親は、机にしがみつくようにして書類をまとめる小十郎のために、手にちょっとした食べ物と水分を持参してやってきたのだ。本当に、何度「頭目だろう?」と言いたくなったかは解らない。しかしこれが彼の自然体でありいいところなのだから、あまり咎めることも出来ない。
「‥‥本当に。鬼という割には人がいい」
「何言ってる。鬼だからこそ人がいいんだよ。鬼は昔っから人好きだ。知らないか?」
ニコリと笑うその笑みは、らしさの出た屈託のない表情。
もし、政宗のヤキモチのような心理の点火は彼だったとしても、それも解らなかった。自分が元親に構い過ぎているのならともかく、まったく普通に接しているし、元親もまったく普通である。しかもヤキモチをやくのなら、城にいた時にやくだろう。それに元親になにやら絡んでいるかといえばそういう訳でもなく。
今回は本当に、何を原因とし、何に拘っているのか、小十郎には掴めなかった。
「──なぁ兄さんよ」
不意に、探りを入れる空気を流され「?」と小十郎は聞き返す。
「何か?」
「二人は‥‥なんなんだ?」
言葉を失う。一瞬ひやりとした。
‥‥これは又、答えにくい質問である。特に今は。
「なんだと思われる?」
答えにくい質問には逆に問い返す。常道だ。
すると小十郎へと持ってきたはずの摘みを口にして、元親は素直に首を捻った。
「不思議なんだよ」
「?」
「主従の信頼があるクセに、あの竜の自信のなさはどこから来てるのか」
「自信?」
思わぬ元親の質問に聞き返すが、元親自身は、自分の中に生まれた謎を解くのに夢中らしく、小さく“うーっ”と唸ってみせ、言葉を続ける。
「‥‥なぁ兄さん、俺は“片倉の兄さん”とは呼ぶが、“小十郎”とはつけないのかわかるか?」
「──いや」
「一度な、呼びかけて独眼竜にすげぇ目で睨まれた」
“ぷはは”とその時を思い出したのか、元親は吹き出しながら話す。
「あれは無意識だったんだろうが、それから兄さんのことを“小十郎”って呼ぶのは禁忌だってことがわかった。」
「? ウチの者は普通に呼んでいるが? まだよそ者意識があったからじゃないのか」
「違うな。」
「違う?」
「目の前うろうろされてうっとうしいじゃねぇか? 鬼は人をよく攫う。」
見合い、元親は口端で笑う。
穏やかに、小十郎は目を笑わせず笑みを作った。
無言のまま趨らせる威圧。ギラリとした、久しぶりに見る右目本来の姿に、どこか満足げに元親は言葉を続ける。
「竜の目に納まる人間なんてそうそう居ねぇ‥‥これは俺も勿論竜本人だって間違いなくわかってる。──だからこそ不思議っつーか」
元親の隻眼に見えるもの──間違いなく、疑問を持つのも馬鹿らしくなるほど片倉小十郎は“竜の右目”。なのに何故か政宗には時折自信がなく見えるらしい。不安が見えるらしい。この酷い矛盾がなぞなぞのように思える上に、人情家である元親にとって、近くにいる人間の悩みは放っておけない。
長考し始める元親を少し眺めてから、小十郎は長い息を吐いて表情を整えた。
「自信‥‥ね。この小十郎にはさっぱり‥‥」
続けかけて、政宗の台詞を思い出す。己に、自信がないと言ったあの時の事を。
まさか元親は、何かその辺りの心情を見抜いているのだろうか? しかし‥‥
「私には図りかねる‥‥が、鬼の左目にならないことは確かですな」
「ハッ、言ってくれる。まぁ兄さんが気にならない程度なら俺の思い過ごしかも知れないからいいが、好き嫌いじゃなくてなんて言うか‥‥」
言葉を続けかけて止める。異変に気付いたのは船に慣れている元親だった。それに遅れること少し、小十郎も表情を変える。
天井──甲板に響く足音がおかしい。
二人、顔を見合わせ頷くと、立ち上がって部屋を出た。
「あ、アニキー! ここにいらっしゃって…」
「お前らどうした? なにがあった」
部屋を出たなり、元親を探していたらしき部下が数名駆け寄ってくる。各々に何かを口走りかけたが、一番近くにいたものが深呼吸を一回して話し始めた。
「それが‥‥わからねぇモノが飛んできて、その‥‥」
「わからねぇモノ?」
「へぇ。一応打ち落とす用意はしてますが竜の兄さんが止めに入って‥‥」
思わず後ろにいた小十郎に、説明を求めるように元親は視線を送るが、勿論わかるはずもなくただ軽く首を振られた。
「おい、案内しろ」
「へい!」
狭い通路で引っかからないよう、身体を屈め、斜めにしながら急いで甲板に出る。
薄暗い中から外へ出てきたため、まぶしさに目を細めるが、「hey!」という政宗の声と供に望遠鏡を投げ渡され、元親はぼんやりする間なく慌てて受け取った。
「あぶねぇなぁ‥‥で? 状況は?」
「あれだ」
そう言って政宗は空高く船の上を目指し舞うものを指さす。
「──忍凧。」
「そうだ」
重臣の声に振り返って政宗は同意する。
「忍凧‥‥つってもあの大きさでいくと人が乗ってるのか? しかもあんな陸からこっちの船に向かってきたってぇのか!? どんな技術だ」
「アニキ! やっぱ撃ち落としますよね!?」
驚愕と好奇心の入り交じった声を上げ、望遠鏡を覗き続ける元親に、部下達は“号令を”と言わんばかりに鉄砲を用意して構えてゆく。
「Stopstop!! だからちょっと待てって言ってるだろテメェら」
元親の部下共に一睨みを利かして散らし、望遠鏡を覗き続ける鬼の肩を竜はポンと叩いた。
「もしあれが敵のモノだったとして、この隠れるところのない中、誰が蜂巣になると判ってこっちに来るか? それでなくてもあそこまでの技術を使える者はそうそういねぇ。俺の知る限りでも片手で数えられる‥‥しかも凧の端をよく見ろ」
そういわれ、凧の端に視野を絞る。
「──! 三つ鱗!!」
「北条かっ」
「北条であの技術を使える忍びなんぞヤツしかいねぇ」
ニタリ、政宗は唇を綺麗に伸ばす。
「風魔‥‥」
まるで呪詛のように小十郎の口から吐かれた言葉に、元親は「はぁ!?」と声を上げた。
「伝説の忍!?」
「へぇ〜。西海の鬼にも知られるたぁ、風魔もなかなかじゃねぇか。」
「なかなかも何も、死なねぇ忍って」
「正しくは代替わりするだけだ。一族の中から一番優れたものが“風魔”を名乗る。北条を護る傭兵戦忍」
「じゃぁ竜。質問するが何故撃ち落とすのを止めた。」
「一つは、無謀とも思える行動を取っていること。北条の家紋までつけて、それにはそれなりの理由があるはずだ。もう一つは北条と伊達は先代の間で同盟が結ばれていたこと。そして最後は、悪名も高い風魔だが、北条の爺っ様に関しては忠義心熱い」
「?」
「予想だが──北条が攻め込まれてるな」
さもありなんという表情の小十郎とは対照的に、元親は先刻から開いた口が塞がらない。
「まさか!? 一体何奴に」
「それはこれから直接聞けばいい‥‥って喋らないだろうが。」
「は?」
「こっちの話だ。とにかく受け入れ態勢を取ってくれ。他の船にも撃ち落とさないように連絡を」
ぽかんと口を開けて驚くだけ驚いた元親だったが、話を飲み込むと流石は早い。船の速度を落とし鉄砲隊を引かせ、飼っている鳥を伝書鳩として他の艦へと攻撃をしないよう伝達する。
全てのお膳立てが整うと、それを見越したかのように忍凧の高度が徐々に低くなっていった。
悠々と、風に舞う凧。
皆が太陽を背に降りてくる忍凧を眩しげに見上げる中、小十郎は無言で政宗の前に立ち、愛刀・黒龍の鞘を握り鍔を少し押し上げる。
瞬間、音もなく舞い散る黒い羽根と降り立つ影。
気配も何もなく、それはただ風のように。
「きたか。人を捨てた闇──風魔」
「‥‥。」
目深に被った甲。その甲からちろちろと出る赤い髪。無駄なく鍛え上げられた躯。一目見れば、降り立った忍がどれほどのモノか語る必要性はなかった。
突然のことに一瞬静寂という間があいてから、船員達は「ひぃぃぃ!」と声を上げ、現れた忍を中心としてまるで波紋のように綺麗に輪を描いて後ずさる。
微動だにしなかったのは鬼と竜とその右目。
「急ぎの用みたいじゃねぇか、風魔。」
「‥‥」
とても素直に“こくり”と忍は頷くと、肩を守る甲冑の下から一枚の書状を差し出してくる。
前に立ち警戒する右目の、鞘を握る手にそっと触れてから、政宗は前へと歩み寄る。ぐっと、喉まで出かかった咎めの言葉を小十郎は押し殺した。
「フン‥‥やっぱり俺か。」
さして驚くこともなく受け取り、書状を広げる政宗とは対照的に、場はピリピリとした静けさと緊張感が占領してゆく。
小十郎は鞘に手をかけたまま。元親は腕を組み現状を読んでいる。
「han〜‥‥おい鬼。武蔵・相模の地図に駒だ。なけりゃぁ紙と筆」
「おい、誰か」
「へ、へい!」
元親の掛け声を合図に、やっと音が生まれ始める。そしてそれをきっかけに、三人以外のその場に居た者は過ぎた緊張が奪っていた“動けること”を思い出し、仕事があるモノは気になりながらも、己の職務へと戻ってゆく。
書状を眺める政宗の元に、元親は近くにあった空の樽を持って様子を窺った。
「なんて書いてある?」
どんっと政宗の前に樽を置くと、それを確認して政宗はその書状を元親へと渡す。
「こりゃぁ‥‥」
「豊臣軍・竹中半兵衛来襲だと。」
元親の部下から地図と駒の入った袋を受け取った小十郎は、無言で元親の持ってきた樽の上へと地図を広げ重しを乗せると、袋を政宗に差し出した。
「おい風魔。ジイサンは協力は惜しまんといってる。戦況の駒を置け」
「‥‥。」
場所を風魔に譲り、政宗は食い入るように書状を見る元親の肩に寄りかかるようにして耳打ちした。
「timingがおかしいと思わねぇか?」
「たい‥‥?」
「時期だ時期。今安房を通り過ぎた辺りか? そんな、船がこの位置にきて来襲の連絡が来るなんぞ合いすぎる」
「じゃぁなにか? 北条の仕掛けた罠?」
「それはねぇな。風魔が表に出ている限り。竹中半兵衛ってヤツの狙いは多分俺だ」
「!?」
「よく考えろ。船でここを渡っていることを知っているなら、少しでも厄介なことを回避するために普通なら助太刀しそうな同盟が去った後にする。それをわざわざ‥‥」
「これから少しの間、国を離れるつもりの伊達政宗が、東国侵略を無視できる訳もねぇしな。」
「そういう事だ。で、だ。」
「で?」
「ジイサンから金搾り取ってやるから、参戦しねぇか?」
「あぁ!?」
「今から伊達本陣に呼びかけは無理がある。ジイサンから程々の兵なら使っていいと書かれているが、何処まで保つやら‥‥。俺の連れてきた奴らは精鋭ではあるが数がな」
「ふむ‥‥」
「戦だから危険はないなんていえねーが、奴らの目的は俺だ。変に目立ちさえしなきゃぁそっちは安全だと思うが」
「ハッ。波で一番ヤバイのは気を抜いた時だってしってるか? しかも用意のねぇ潮に海のモンは無闇にむかわねぇ‥‥でもまぁ、竹中半兵衛‥‥ねぇ」
書状に書かれているその綴りを見る。
中国の毛利元就は織田軍から絶え間なく揺さぶりをかけられている。明智と豊臣‥‥だがここに来て豊臣の揺さぶる姿勢が変わってきたと漏らしたことを思い出す。それは竹中半兵衛を多く起用した頃から。
元就の居る中国は、瀬戸内を挟んだ隣国。降りかかるかも知れない火の粉を見るには丁度いい。
「ま、大波は嫌いじゃねぇ」
お互い、ニィっと歯を見せて笑う。
どういった返答が返ってくるか解って聞いている政宗と、どういった返答が欲しいか解って言っている元親。
お互いまだまだやんちゃ盛りだ。
「OKOK〜。風魔、陣は配したか?」
無言で、またコクリと頷く。
異質な存在として思える割には素直な態度に調子が狂い、“風魔”と名乗れる忍を見ながら元親は頬を掻く。
「さてと‥‥」
そう言った政宗の声を合図に、四人は樽を囲むこととなった。
「‥‥なんだぁ? この陣。やる気あるのかぁ」
そうぼやくのも無理はない。戦力の殆どが一方方向に一塊としてしか置かれていないのだ。力押しの戦をしようとも、兵糧攻めをしようとも考えていない陣。それでいて試しにこの辺りで動く兵を寄せ集めているようにも‥‥
「今はない──が、北条には十分だろう。爺っ様は今、防衛専門だ」
「‥‥南東に相模の海。敵陣は南西‥‥。西‥‥いや北西か、北西の本体は夜半の到着か? 北は川があるがほぼ平地。」
攻略の難しい土地ばかり平定した元親にとって、この布陣はますます解らない。
「海に何も放たれてない‥‥逃げ道どころか反撃する道もある。なんだこれ? これで呼び止められたとなったら、旅なんぞやってられないぜ。竜よ」
「呼び止めたのは文にも書かれていたこれだろう。石垣山に作られたっていう城‥‥一夜城」
コツコツと政宗は、小田原城と目と鼻の先の山に置かれた駒を指さす。
確かに、自分の領地のお膝元に驚異のスピードで城を築かれたとなれば、警戒しても当然か。しかも絶好のタイミングで同盟国が横を通りすぎるとなれば。
「しかし、虎はどうした。虎は」
すると風魔は地図が途切れた辺りに、大きな駒を向かい合わせて二枚置く。
「他のヤツとやりあってんだろう」
「他?」
「織田軍‥‥と考えるのが無難でしょう。信長相手となれば信玄公もあまり他にかまっていられない。しかもこの位置に豊臣軍が城を造ったなら、小田原城攻めもいいですが、海から物資を運び、虎を後ろから突くにも、今川に目を配らせるにも丁度いい。」
「どう転んでもいいように‥‥か」
「そうですね。ただ、絞れてなさすぎる」
「? どういう事だ、兄さん」
「一が駄目な場合二をと、無駄がないように計画は練られているが、その数が多すぎる。木葉を隠すなら森の中」
「フンッ」
むっつりと政宗は唇を曲げる。その瞳は、将・伊達政宗となって地図を睨んだ。
「小十郎、木葉は?」
「言わずもがな、御身でしょうな。」
「挨拶なしでいきなり首を狙ってくるとは、時を急く軍師とはいえ気分の悪い野郎だ。それにしても‥‥旅は隠してなかったにせよ、船の早さを見事に割り出されているな」
瞬間、元親は顔を覆う。
この旅を知っていて自分達の行動を読み、船の動き等を的確に当てられるなど。
「アイツしかいねぇぇ〜」
その仕草で、竜も右目も確信が持てた。
「参戦はしていないでしょうが、交渉情報としては使われましたね」
「使ったな。絶対。」
元親の脳裏には柳眉を歪ませ、鬱陶しげに豊臣軍を語った表情のあまり出ない隣人が鮮明に思い浮かび、更に顔を覆う。
「嫌がらせにもほどがある‥‥」
「ま、後でゆっくり挨拶しに行けばいい。当面はこっちだ。──小十郎、もし小田原城を攻めるなら?」
「この陣で攻めろとは無体な話ですが、仕掛けたのが豊臣軍で武田軍と織田軍がやり合っているのなら、織田軍を協力しつつ合間抜けることが出来ますから北西‥‥ここにまだ揃っていない豊臣秀吉が北西から。ですが南西一夜城から竹中軍で押すのが妥当かと。」
「戦を早く終わらせる方法は?」
「頭の首を。」
「となれば北西の豊臣を討つしかねぇな。」
作戦と言うよりも確認作業のような竜と右目の会話に、少しモノ言いたげそうな顔をしてから、風魔は又、山の上の駒を差した。
「? なんだ」
山にじゃらじゃらと風魔は駒を置いてゆく。
「敵と仕掛けがたくさんあるといいたいのか?」
こくりと、又素直に伝説の忍は頷く。
「テメェがここを落としてないとなれば、腐るほどいるんだろうな‥‥。まぁ頭が攻められるとなればここから雪崩れてくるだろう。こういうモノは時間を使うのが一番よくない。──鬼よ」
「ん?」
「俺達で北西の猿回しだ」
「これまたきたなぁ。お前が狙われてるのに本陣攻めかよ」
「だからだろう。ごちゃごちゃと練られた策のpatternをあれやこれやと考えるより、戦本来の首取りでいい。」
「なら、大鳴りする猿の鈴はどうする」
「小十郎。」
「ハッ」
「鈴を壊せとは言わん。鳴らなくしろ。」
「承知。」
「風魔。北条の西と南西を守りながら半兵衛を押せ。小十郎は海から一夜城に入らせる」
当たり前のように指示をし、了解する小十郎と風魔とは対照的に、元親は引っかかったのか眉を顰めた。
「まて竜」
「? なんだ」
「向こうさんもその攻め方は考えた上での陣だろう。そうなると、一夜城の動員数も仕掛けも半端ないことになる。」
「解っている」
「兄さんにはどのくらい兵を持たせる?」
「持たせない」
「──は?」
「持たせないと言ったんだ」
信じられないものを見るように、元親は顔を上げて政宗を見る。その横顔は涼しげだ。
「待てよ。単騎‥‥だと?」
「単騎──まではいかないが、実質単騎だな。俺達はまず小田原城に入ってから策を伝令。精鋭引き連れて北西へ。ジイサンが兵を貸すといっても北条の者だ。守りと、風魔と一緒に一夜城の北東に力を加えてもらう。そうなれば小十郎に回す兵は多くない」
さらりと言ってのけられた言葉に一層元親の眉が寄る。
「待てこら独眼竜。ここの風魔も俺も、お前自身も解ってるだろう? ここは仕掛けも兵も半端ねぇだろうって。それを──」
「こっちの兵には限りがある。首を落とさなきゃ意味はない。鈴は壊せとは言っていない‥‥これ以上の選択が何処にある?」
さも当たり前のようにさらりと言ってのけるその姿と、強いる命令の重み。
ギャップに納得がいかない。いや、戦略としてあるのはもちろん理解しているが、これは、兵を駒のように扱う誰かと似ている気がする。しかもその兵を、駒として等到底扱えないヤツが駒として陣を組む。
──なんだこの違和感。
「と、言うことだ小十郎。俺の背中を攻め込ませないように、鈴の音を取れよ。」
「無論。この小十郎が守るのは貴方の背。死んでも守り抜きましょう。──長曾我部殿、殿をよろしくお願い致します。」
「ん? あぁ、‥‥あぁ」
何の迷いもなく笑みを作る小十郎から背を向け、政宗は「ジイサンに文を書く」といってその場を後にした。
“どこが”とは言えない歪さに、元親はただただ眉を顰めた。