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酒井さんが、おもむろに部屋の隅から古びたギターを持ち出し、ジャカジャカとギター侍かテツトモのように弾き。
周りにいた男たちは、隣同志肩を組んで円陣を作ると、ギターのリズムに合わせてカラダを左右に揺らし、歌い始めたのだが・・・

「♪ラぁイ ラぁイ ラぁイ、ラぁイ ラ〜イ」

ボクは、その綺麗な高音に目を見張ったワケで。
なぜなら、声の主はリーダー格のあの男の声であり。

たしかここに辿り着いた時、大学の外で聞いたのはこの声だということに気づき。
しばし、この男の声に聞き入っていたワケで。

 

「機動隊が突入してきたぞ!」

歌の最中に、 見張りに出ていた学生が講義室に飛び込んできて。

突如として、外で大きな物音がし。
窓に駆け寄り門を見ると、バリケードが崩され、そこから大勢の機動隊がこっちに向かって走ってきており。

「みんな落ち着け!大丈夫だから!とりあえずここに集まれ!」
男は、おろおろと慌てふためくメンバーたちに指示を飛ばしており。

特に部外者のボクはどうしていいか全くわからず、 ただそこに立ち尽くしており。

「君も!こっちへ来るんだ!」

男に腕を引かれ、集団の中に押し込められ。

そうこうしているうちに、

バン!

大きな音を立て講義室の引き戸が倒され。
警棒を掲げた機動隊が雪崩れ込み、一気に押し寄せ。

それを男が両手を広げて食い止めようとしたが・・・
シルバーの盾で打ちのめされ・・・

それを見た他のメンバーが棒を手に機動隊に飛びかかっていき。

「やめろ!抵抗するなって言っただろ・・・っ!!」

リーダー格の男は、取り押さえられながらそんな風に叫んだが、この騒動の中、みんなの耳に届くとこもなく・・・

「黒沢さんっ!!」

酒井さんが男に向かって駆け寄っていったところを、別の機動隊員に捕まり。

ボクは・・・

その様子をただ呆然と見送っており。

何故かというと、酒井さんが呼んだ名前が・・・ボクの名字と同じだったからであり・・・
今の今まで全く気づかなかったからけど、黒沢と呼ばれた男はどことなく父さんにそっくりで・・・

気づけば、ボクも彼に向って走り出していたワケで。

「父さんっ・・・」

ガツッ・・・!

もう少しで手が届くというところで・・・機動隊員にガツンと側頭部を殴られ・・・そこでボクの意識は遠ざかっていったワケで・・・


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