挨拶や軽い会話を挟みながら進み、やっと控え室に到着。
普通に歩けば3分ほどの道のりだが、10分近くかかっていた。
控え室のドアの横に貼られた紙には、数組のコンビ名が書かれている。
若手芸人ということもあり、まだ独立した控え室はもらえず、大部屋を複数で使用するようだ。
「おはようございま〜す。」
控え室の中にはすでに2組ほど到着していて、ボビダリは挨拶を済ますとその輪の中へ入っていった。
若手同士、仲いいみたいだ。
続々と集合していく中、最後に俺もテレビで何度も見たことのある人気若手コンビが入ってきた。
「おはようございま〜す。」
「ちぃ〜っす・・・。」
ボビダリはちゃんと挨拶してるのに、あのふたりは・・・ちょっと感じ悪い。
テレビではさわやかなキャラなのにイメージ違うなぁ。
全員が揃ったところで、何度かテレビで見たことある有名なディレクターさんがやってきて、今日の段取りなんかを簡単に説明する。
深夜の30分枠の番組。
番組開始とともに発表されるお題を元に、1分間のネタを作る。
ネタを作る時間は10分。ネタの発表は早い者勝ち。
早く発表すれば、他のチームとネタがかぶることはないが、ネタを練る時間が必然的に少なくなる。
逆に、よく練ってから発表した場合、先に同じようなネタを使用される可能性が出てくる。
・・・単純ではあるが、なかなかスリリングな企画である。
収録開始予定時間から15分ほどオーバーした頃、ようやく控え室にADさんがみんなを呼びにきた。
「5秒前!4・3・・・」
ついに本番。
酒井さんと俺は客席の後ろ、スタッフが大勢いるゾーンから舞台上を見つめる。
司会者である大物コメディアンと若手の絡みが少しあり、ついにお題発表。
「今日のお題は・・・コチラ!『サッカー』です!
はい、お題発表した瞬間から、もうカウントダウンは始まってます!各チーム、早くBOXに入ってた方がいいですよ!」
司会者の煽りとともに、各自 与えられたBOXに入ってネタ作り開始。
BOXの中は外からも
よそのボックスからも見えないようになっている。
ネタを作っている最中の声も聞こえない。
しかし各BOXにはモニターが取りつけられており、ネタ発表は見れる仕組みだ。
ネタ作り中のBOX内の様子は、天井に取りつけられたCCDカメラが捉えていて、司会者がその様子を見ながら茶々を入れる。
この司会者のトークも、BOX内には届いていない。
各コンビ、真剣な表情でネタ作りに励んでいる。
帯同してまだ間がないが、やはりボビダリを応援してしまう。