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「おいっ、相方は?」
「知らな〜い・・・まだ寝てんじゃないのぉ〜?昨日も明け方まで合コンだったみたいだし〜?」
「ったく、どうしょうもないなアイツはっ!そんなヒマがあったらネタでも作ればいいものをっ!」

酒井さんはこの部屋の一室のドアをドンドンと叩き始めた。
『相方』『ネタ』というキーワードを元に、さっきドアを開けた男と このドアの奥にいる人間は、お笑いグループでも組んでいるのだろう、と推測を立てる。
さっきの男の顔は見覚えない、ということは、売れる前で収入も少ないから一緒に住んでいるのだろう。

ドンドン!
「こらっ!キサマ早く起きろ!仕事だ!」

・・・中からの反応はない。

「え〜い、こうなったら〜っ・・・『あ、こんなところに吉沢明歩がいる〜!』」
ガチャッ
「えっ?!どこどこ?!」
「このドアホがっ!」

ドアが開いて出てきた長身の男に、酒井さんがすかさず脳天唐竹割りを見舞う。
懐かしい技だ・・・

「ぐぁっ!痛ぇっ!」
「早く仕事行く準備せぇっ、このクソガキ〜!」
「へぇへぇ・・・わかったよ〜だ。」

長身の男は、のんびりとした動きで服を着替え始めた。

「あの〜、酒井さん。」
「何だ?」
「吉沢明歩、って誰ですか?」
「AV女優だ。ああ言ってダマすとアイツはすぐ起きるから。覚えとくように。」
「はぁ・・・はい、わかりました・・・。」

そんな会話をしている間に、ふたりとも何とか準備完了し、4人で部屋を後にする。

 

走り出した車の中、酒井さんが運転をしながら彼らを紹介してくれた。

「彼らは『ボビー&ダーリン』っていうお笑いコンビをやっている。
おっきい方が村上、ちっさい方が安岡。今ウチの事務所イチオシの若手お笑い芸人だよ。」
「酒井さん!『ちっさい』ってヒドいな!」

ちっさい方の安岡くんが酒井さんを睨みつけ、その横でおっきい方の村上くんがグヒヒと変な笑い声を上げた。

「はじめまして、新入社員の北山です。よろしくお願いします。」
「あ〜い。」「よろしくね〜。」
「北山くん、君には彼らのマネージメントをしてもらう予定だから。もちろん1ヶ月間は俺も同行するから、何も心配はいらないぞ。」
「わかりました。頑張ります。」


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