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最初はあやふやな志しのまま始めた、マネージャーという仕事。
ところがすぐにその魅力に取り憑かれ、今ではこの仕事を生き甲斐とすら感じている。

今日でちょうど入社3年目。
今年から、こんな俺にも新入社員が研修で1ヶ月間帯同するようになった。

「村上さ〜ん?もうすぐ本番ですよ〜。早く起きてくださ〜い?」
「黒沢くぅん、そんな起こし方じゃテツは起きないよ?」
「え〜?・・・き、北山さんどうしましょう・・・もうすぐ本番なのに村上さんが起きないんですぅ〜・・・」
「あ、何だそんなこと?俺にまかせといて・・・『あっ、柚木ティナがいる!』」
「え、マジ?!どこどこ?!」
「いませんよ。村上くん、そろそろスタッフさんが呼びにきますから、その寝ぼけた顔を何とかしてください。
そんな顔では本番出れませんよ?」
「そんな顔って何だよ?!」
「黒沢くん、村上くんを起こす時はAV女優の名前出してください。わかりました?」
「はいっ!」

「ボビダリさ〜ん、準備が整いました!スタジオへお願いします!」
「は〜い!・・・黒沢くんもついてきてください。」
「はいっ!」

新入社員を連れて、ボビダリと一緒にスタジオへ向かう。
ボビダリはカメラの前に。
俺たちはカメラより後ろから彼らを見守る。

「5秒前!4・3・・・」

「こんばんわ〜!今週もやってまいりました、『ボビー&ダーリンの“パスワードはシークレット”』!
司会の『ボビー&ダーリン』安岡優と!」
「村上哲也で〜す!」

ボビダリは、あれから人気が急上昇し、今ではゴールデンで冠番組を持つほどの売れっ子になった。

ちなみに酒井さんは事務所の部長クラスに昇格して、現場に来ることは少なくなった。
だけどまだまだ現場でカラダを動かしたいらしく、「俺は椅子に座る仕事は向かん!」などとしょっちゅう愚痴をこぼしている。

「黒沢くん、ボビダリの次のスケジュール、頭に入ってる?」
「はいっ、次は夕方5時からCM撮影ですね!」
「そのとおり。ということは?」
「この収録終わりでゆっくりしてる時間はありませんね。ボビダリさんには急いでいただかないと・・・」
「そう、正解。彼ら、楽屋でのんびりするの好きだから、頑張って けしかけてね。」
「はいっ!わかりましたぁ!」
「うん、いいねその返事。」

俺はマネージャー。
一度やったらやめられない。
この仕事の最大の魅力は・・・“マネー”じゃないよ?

 

 

(完)

 


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