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「あ。来た。」
「え?」

俺の背後で自動ドアが開く気配がして、振り返る。

ボウリングのユニフォームに身を包んだ若者2人が入って来た。
それと同時にファンの女の子たちから歓喜の声が上がる。

細身の少年と、少し小柄の少年はそのままカウンターへと近づいてくる。

「黒沢さんこんにちわ〜。」
「はい、いらっしゃい。えっと、今日は5番レーンね。」
「は〜い。」
「ありがとうございます。」
「あ。あのね、このお客さんにボウリング教えてあげてほしいんだけど。いいかな?」
「うん、いいよ。ね?」
「はい、いいですよ。」

黒沢という名札をつけたカウンターの兄ちゃんからの依頼を、彼らは快諾した。

「えっとね、彼が北山くん。で、彼が安岡くん。」
「北山です。」
「安岡で〜す。」
「あっ、ども、酒井って言います。よろしくお願いします・・・」
「こちらこそ、よろしく。」
「よろしくぅ!」

2人の後について5番レーンへ向かう。

前を歩く彼らの背中には、それぞれ「ダイワみなくるチェーン」と「エバラ」という社名が入っている。
高校生だがプロボウラーのようだ。

「えっと、ボウリングの経験は?」
「あ、え〜・・・今までやったことなくて、昨日初めてやって、」
「『撃沈した』、ってワケね?」

北山の質問に答えてる途中で、安岡にその先を言われて口ごもる。

「・・・ご名答。」
「やっぱり。」
「ヤス、そんなこと言わないの。・・・じゃあ一度投げてみてください。チェックしますんで。」

ボールを指に挿し込んで持ち上げ、構える。
一歩、また一歩、と歩を進め、ボールをエイヤッと投げる。

ボールは見る見るうちに溝へ・・・

「・・・・・・」
北山も安岡も、あまりのガーターっぷりに呆れているようだ。


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