帰り道。
女性陣の一部にまで負けてしまったボウリングのスコア表を手のひらでクシャクシャに丸め、街角のゴミ箱に投げ捨てた。
合コンで場に馴染めないってのは慣れっこだが、ボウリングが下手っていうのは“運動音痴丸出し”みたいで、これはかなりの屈辱である。
「何やってもダメ」キャラは死んでもゴメンだ!次回、絶対にリベンジしてやる!
俺はこの現状を打破するべく、翌日大学の講義を休んで最寄りのボウリング場へ向かった。
「いらっしゃいませ〜。」
受付カウンターの中にいる、髪をツンツンと逆立てた兄ちゃんが暢気に挨拶する。
昨日行ったボウリング場は繁華街の真っただ中にあったため、大勢の若者の姿があった。
しかしここはマイボール・マイシューズ持参の本気のジジババしかいない。
そもそも平日の昼間っから若者がボウリングなどやるワケないのだが。
「あのぅ・・・」
「はいはい、何でしょうか?」
「俺にっ・・・ぼ、ボウリング教えてくださいっ!!」
受付に突如訪れる静寂。
そして兄ちゃんは、パシッパシッと大きな瞬きを2回して、やっと口を開いた。
「あの〜、俺はここで働いてるだけなんで特段うまいワケじゃないんですよねぇ〜・・・」
「はぁ、そうですか・・・じゃあここにはボウリング教室みたいなのは・・・?」
「う〜ん、そういうのはやってないんだけど・・・あ、そうだ。」
「どうしました?」
「もうすぐ3時半だよねぇ〜・・・もうすぐボウリングのうまい高校生2人組が来るから、彼らに教えてもらったら?
年配のお客さんから教えてもらうより、年の近い人に教えてもらう方がいいでしょ?ね?」
時計やレーンなどにせわしなく視線を向けた兄ちゃんは、何かを見つけ「あ。」と声を上げた。
「あれ見て。あそこに女の子たちいるでしょ〜?」
たしかに、ロビーには10人程度の若い娘たちが、鏡を見たりセブンティーンアイス食ったり携帯いじったりしながら屯(たむろ)している。
「はぁ、いますねぇ。」
「あれね、その2人組のファンの娘たちだよ。」
「ふぁ、ファン?!ボウリングやってるヤツのファンとか・・・」
「あ〜、今ボウリングをバカにしたでしょ?ボウリングを嗤う者はボウリングに泣くよ?」
というか、すでに昨日ボウリングを軽んじて痛い目に遭った後なのだが。