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「じゃあ・・・店行きましょう、か。」

常に合コンで神憑り的な仕切りをする村上が、目の前の強敵に難儀しているのが見て取れる。
こんなことは初めてではないだろうか。

到着したのはいつもの居酒屋、ではなく、落ち着いた雰囲気のバー。
メニューを見ると全品いつもの店の倍ぐらいの値段で、幹事村上の並々ならぬ気合いの入れようを感じる。

「すいません、俺ら貧乏学生なんでこんな店しか知らなくて・・・」
「いいえ、私たちこそお店もあまり知らないですし、合コンというのも初めてで・・・。」

かたや男性陣、格上の敵と不慣れな闘いを前に緊張。
かたや女性陣、格下の敵と不慣れな戦場を前に緊張。

両者揃ってもじもじしちゃっていて、イマイチ場が盛り上がらない。
いつも今ぐらいの時間なら村上のシモ話が炸裂し、俺以外の全員が盛り上がってる頃だろうが、今日はそれも登場機会を失いつつある。

普通のバーでの飲み会なのに、すっかり気品高い会へとなってしまっている。

「じゃあそろそろ出ましょうか・・・」
「はい・・・」

店を出て、宛てもなく街を歩き始める。
男性陣は完敗ムードで肩をがっくり落とし、女性陣は待ち合わせた時の様子と変わらず、落ち着き払っている。

「この後〜・・・どうされ、ます?」
村上が女性陣に恐る恐る尋ねた。

「・・・あの〜・・・」
女性陣の中のひとりが顔を赤らめつつ口を開く。

「はい?」
「私、あれ、したことないんです・・・」

一同、彼女が差す指の方に首を向ける。
指の先が示すのは、大きな建物の上の屋上に聳え立つ、巨大なボウリングのピン。

「あ・・・じゃあ行ってみます?」
「はい・・・」


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