※文末に選択肢あり
「!!」
突然の事に驚いたは、両手で自分の口を覆い、逃げるように後ずさった。
「………あれ、違た?」
「え………?」
市丸が呟いたセリフにも困惑する。一体何が違ったと言うのか…。
「君は、僕の恋人やないの?」
「!?」
顔を真っ赤にして目を見開いているに、市丸は困った顔で首を傾げてみせる。
「ホンマはな、記憶失うて初めて君に会うた時、知らん子やのに抱きしめとうなってん。そんでおかしいなぁと思っててんけど、今日やっと確信したんやけどなあ…。違たか」
(え…!えっ………!?)
あまりの展開に、は口を開く事ができなかった。言うべき言葉が見つからない。
「そか………、僕の片思いやってんな。ごめんな、君」
嫌やったやろ?と、寂しそうに微笑まれて、咄嗟には、市丸の腰にしがみ付いていた。
「いっ…嫌じゃ…、嫌なんかじゃありません!…僕、………僕、市丸隊長が好きですっ」
市丸の口元が一瞬弧を描くが、腰にしがみ付き、その胸元に顔を埋めているには、その顔は見えなかった。
「君…、僕の部屋…来るか?」
見上げた市丸の瞳の奥に、雄の色を感じ、一瞬ゾクリとするが、は黙って頷いた。
◇◆◇
「ん、ふ…っ」
灯りの落とされた室内に、荒い息づかいと衣擦れの音が響く。
市丸に組み敷かれた布団の上で、は激しい口付けを受けていた。
「口、開け…」
言われるまま、熱にうかされたように口を開けると、熱い舌に入り込まれ、驚きと快感で身体が小さく跳ねる。
ちゅう、と舌を吸われると、細く小さな悲鳴が漏れた。
「ひあ…っ」
口付けに夢中になっている間に、いつのまにか肌蹴られていた胸元を、市丸の固い指先がなぞる。
「はぁ…、はっ………」
そして、その指先がの胸の突起を掠めると、ピクリと身体が震えた。
「あぁっ…」
市丸の唇はの唇から離れ、あご、耳、首筋から鎖骨へと滑り、胸の突起を捕まえる。
「ンッ」
なめらかな舌で敏感な突起を撫でられ、今まで味わった事のない快感が身体を走る。何度も舐め上げられては舌先でつつかれ、唇に挟んで吸い上げられると、無意識に腰が揺れた。
「ああ……、はぁ…、…あ…っ、市丸…隊長っ」
「…、気持ちいい?」
乳首を舐めながら囁かれ、言葉の代わりに胸元にある市丸の頭を、ゆるく抱きしめると、クスリと笑われた。
「可愛いなぁ…。………でも、ちょっと残念やね」
「え…」
残念という言葉の響きに、が身体を強張らせると、市丸は「ああ、ちゃうちゃう」と、上体を上げて、視線を合わせた。
「ほら、よう記憶喪失から回復した後て、記憶を失くしてた間の事は憶えてへんって言うやん。やから、せっかくのこんな可愛い君の姿も、僕の記憶が戻った時には忘れてんのかなぁ、と思ったら、もったいないなぁ…、てな………」
(た…、確かにそうかも知れない)
なんて事だろう。言われるまで考えもしなかった事だが、言われてみればその通りだ。
いつか市丸の記憶が戻った時、失っていた10年間の記憶と引き換えに、記憶喪失になっていた間の出来事を全て忘れ、が「好きだ」と告白した事も、これからする行為も、何も憶えていない可能性はじゅうぶん考えられる。
(市丸隊長は、なにも覚えていなくて、僕だけが………)
「ま、言っててもしゃーないな」
不安そうな顔を見せるに、安心させるように笑いかけ、中断していた行為を続けようと胸元に顔を寄せてきた市丸を、は
A.→上体を起こして、突き飛ばした。
B.→おとなしく受け入れた。
|